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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

相談することは大切

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 かつて――。
 勇者パーティーを追放されてすぐの頃、何度も自問自答したことがある。

 ――どうしたら良かったのか? と。

 勇者パーティーを抜け、アレクサンダーたちに判断を委ねなくなったからだろう。
 良くも悪くも、勇者パーティーの一員――そのメンバーの一人でしかなかった頃の自分は、判断に迷うことは少なかったように思う。

 いろいろあって、最終的にどうすれば失敗を回避できたかと考えた末、辿り着いた結論は、「誰かに相談する方がマシだったのではないか?」というものだ。

 誰に、いつ、どのように相談するかというのも重要だが、たぶん最初の一歩、まず相談してみることが大切だったのだ。

 俺は、おもむろにシャフィールを見た。

「悪い……。じつは俺、そこまで料理は得意じゃなくて」

「そうなんですか……じつは……私もあまり料理が得意じゃなくて――」

 シャフィールの自己評価には少し突っ込みたかったが、それより今は、この野菜の山をどうするかが問題なのだ。

「さすがにこの量の野菜を上手く料理する自信がない」

「では、どうされるんですか?」

 俺は宴会場の方を振り向いた。

「誰か連れてきて相談してみよう」

 ぽんと手を打ち合わせたシャフィールは、嬉しそうに歯を見せた。

「良いアイデアですね!」

 ――一人目というか、一匹目の相談者は、イヌガミだった。

「イヌガミ、実は相談があるんだが……」

 俺はイヌガミを呼んだ。だが、野菜の山を前にしたイヌガミは、奴らしくもなく無言で厨房から走り去った。

 きっと野菜の山の処分に困っていて、「無理やり食べさせられる」とでも思ったのだろう。
 野菜をどうするか迷っているという部分は正しいが、別に無理やり食べさせるつもりはなかったのに。

 イヌガミが厨房を急いで飛び出していったので、不審がった様子のセーレアが顔を出した。

「どうしたの? なんかさっきイヌガミが逃げるように走っていったけど」

「ちょうどよかったセーレア! この野菜の山なんだが……」

「なるほど、それを食べさせられると思って逃げたのね。……意外な弱点だわ」

「イヌガミのことはいいから、この野菜の山をどう料理したらいいかアイデアはないか?」

「えー、自業自得でしょ?」

 何が自業自得なのか、セーレアは白い目を向けて、去って行ってしまった。

(……『えー』はこっちのセリフだ! なにが自業自得なのか……!)

 かつての自分を思い返し、人に相談することが大事だと思ったのだが、相談した相手に次々と匙を投げられてしまった。

「ええっと……」

 予想外の展開に、俺は、シャフィールと顔を見合わせた。
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