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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
ドワーフの厨房にて
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(なんか最近、戦っているより料理を作っている方が多い気がするな……)
シノビなのに手裏剣よりも包丁を握っている回数の方が圧倒的に多いのはどうなんだろう? まあ、もともと手裏剣など使わないが。
「さて。どうするかなー……」
ドワーフのキッチンは、酒を置いた棚がやたら多いこと以外は割と普通だった。
ただ、室内というか、洞窟内なので、煙が出るような料理――焼き魚や焼き肉などはあまりしないでほしいそうだ。
俺はちょっと人差し指を舐めて、掲げてみる。
ひんやりとした指の先に、空気の流れがはっきりと感じ取れた。
(……そこと……あそこと……あと、こっちもか……)
換気用の穴があり、どうやら外気も入ってきている。ちょっとした煮炊きなら問題なさそうだ。とはいえ、あまり派手に魚などを焼くと、珍しくて美味しそうな臭いにつられて、換気用の穴がある地上部分にモンスターなどが寄ってくるかもしれない。
(たぶん換気用の穴は出入り口とは遠く離して作ってあるだろうから大丈夫だと思うけど……)
「うーむ」などと唸っているのは、半分現実逃避。
扉もない洞穴タイプの部屋なので、向こうの宴会の騒ぎが筒抜けだった。
セーレアを中心に、ドワーフ達やリザードマン達、魔族達や人間達で宴会を始めていた。
まだツマミは干物程度しかないだろうに、すでにかなり陽気な大声が聞こえてきていた。
「本当に、俺一人に任せるつもりなのか……リノくらいなら手伝いに来てくれるかと思ったんだが……いや、無理か。あっちにはイヌガミがいるし……『イヌガミと宴会』……まさにあっちはあっちで大変だろうなあ」
リノがいなければ、ストッパー役になれる者がおらず、大騒ぎになってしまうかもしれない。
ドラゴンへの〈変化〉はどの種族にも大変評判が良かった。調子に乗って何かやる可能性は十分ある。
「はぁ……仕方ない。ちょっと気が重いけど、一人で料理を作るか……」
幸い俺の動きは無駄に速いし、体力は無尽蔵かと思えるほどあるので、大勢の料理を一人で作ってもどうってことない。精神的な疲れ以外は……。
「――どうされたんです、そんなに溜息を吐かれて……?」
いきなり不思議そうな声が、洞穴風のキッチンの入り口から聞こえてきて、俺は驚いた。
「え? ……誰?」
思わずそう呟いたのも、無理はないだろう。
見たこともない、長い金髪をした美女が立っていたのだ。
もちろん、ドワーフでもリザードマンでも魔族でもない。当然、うちの村の連中の誰かでもなかった。
だが、俺の呟きを聞きとがめた女は、目を鋭くして唇をとがらせた。
「せっかく手伝って差し上げようかと思ったのに……そんな意地悪を言うんでしたら、手伝いませんよ?」
シノビなのに手裏剣よりも包丁を握っている回数の方が圧倒的に多いのはどうなんだろう? まあ、もともと手裏剣など使わないが。
「さて。どうするかなー……」
ドワーフのキッチンは、酒を置いた棚がやたら多いこと以外は割と普通だった。
ただ、室内というか、洞窟内なので、煙が出るような料理――焼き魚や焼き肉などはあまりしないでほしいそうだ。
俺はちょっと人差し指を舐めて、掲げてみる。
ひんやりとした指の先に、空気の流れがはっきりと感じ取れた。
(……そこと……あそこと……あと、こっちもか……)
換気用の穴があり、どうやら外気も入ってきている。ちょっとした煮炊きなら問題なさそうだ。とはいえ、あまり派手に魚などを焼くと、珍しくて美味しそうな臭いにつられて、換気用の穴がある地上部分にモンスターなどが寄ってくるかもしれない。
(たぶん換気用の穴は出入り口とは遠く離して作ってあるだろうから大丈夫だと思うけど……)
「うーむ」などと唸っているのは、半分現実逃避。
扉もない洞穴タイプの部屋なので、向こうの宴会の騒ぎが筒抜けだった。
セーレアを中心に、ドワーフ達やリザードマン達、魔族達や人間達で宴会を始めていた。
まだツマミは干物程度しかないだろうに、すでにかなり陽気な大声が聞こえてきていた。
「本当に、俺一人に任せるつもりなのか……リノくらいなら手伝いに来てくれるかと思ったんだが……いや、無理か。あっちにはイヌガミがいるし……『イヌガミと宴会』……まさにあっちはあっちで大変だろうなあ」
リノがいなければ、ストッパー役になれる者がおらず、大騒ぎになってしまうかもしれない。
ドラゴンへの〈変化〉はどの種族にも大変評判が良かった。調子に乗って何かやる可能性は十分ある。
「はぁ……仕方ない。ちょっと気が重いけど、一人で料理を作るか……」
幸い俺の動きは無駄に速いし、体力は無尽蔵かと思えるほどあるので、大勢の料理を一人で作ってもどうってことない。精神的な疲れ以外は……。
「――どうされたんです、そんなに溜息を吐かれて……?」
いきなり不思議そうな声が、洞穴風のキッチンの入り口から聞こえてきて、俺は驚いた。
「え? ……誰?」
思わずそう呟いたのも、無理はないだろう。
見たこともない、長い金髪をした美女が立っていたのだ。
もちろん、ドワーフでもリザードマンでも魔族でもない。当然、うちの村の連中の誰かでもなかった。
だが、俺の呟きを聞きとがめた女は、目を鋭くして唇をとがらせた。
「せっかく手伝って差し上げようかと思ったのに……そんな意地悪を言うんでしたら、手伝いませんよ?」
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