最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた

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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

リーダーの同行の申し出

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 満腹になったらしく、リザードマンたちは「なんでも言ってください!」と唱和してきた。
 どうやら魚のお礼を今すぐしたいらしい。
 そういえば、そういう奴らだったと思い出す。

 アサリとワカメの味噌汁の時も、すぐに筏という返礼を返してきた。

 一期一会。いつまた出会えなくなるかわからない魔族領だからこそだろう。こっちでは、人間領では当たり前のようにある月払いの仕事や借金などは成立しないだろう。明日をも知れない厳しい世界なのだ。

「では、予定通り、水田作りを始めようと思います。もうドワーフには話がついてますから、技術協力もしてくれるでしょうし、日本酒は気に入った様子だったので、売ることも可能です」

「あの……魚は、米の収獲ができてから交換……ということに……やはりなってしまうでしょうか?」

 意気揚々としていたリザードマンたちだったが、リーダーのその発言を受けて、しおれた花のように尻尾が落ちた。

「いえ。もちろん、収獲までにかかる期間も支援します」

「よろしいんですか?」

「ええ……」

 俺はリーダーに頷いた後、稲作りの達人であるシノビノサト村の老人を振り返った。
 彼は大きく頷いている。

 これだけ広い湿地帯なら、大量の米を量産できる。しかも、シノビノサト村のように斜面ではないので、水田開発がしやすい。
 リザードマンに支援しても、すぐに元が取れるだろう。

「とりあえず、次はドワーフのところに行こうと思うんですが――」

 俺がそこまで言いかけると、リーダーが声を上げた。

「私も連れて行ってください! 今回の水田開発に関して、我らリザードマンは力を貸してもらう立ち場です。フウマさんたちだけに行かせるわけには参りません」

「そうですね……」

 俺はどっちにするか考えたが、リザードマンの意思を尊重する意味でも、今後のリザードマンとドワーフの協力体制を作る意味でも、その方がいいだろう。

「では、一緒に行きましょう! ――それと後で知り合いの魔族を探すのにも協力してくださいませんか?」

「もちろん協力させてください!」

 とりあえず俺は確実にいる場所のわかる者たちのところを回り、人手を確保し、話を通して段取りだけでも済ませておくことにした。
 これでいいかどうか悩むより、こうして動いて話す方が大事だと実感できた。
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