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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
リザードマンとの再会
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竜になったイヌガミの高度が徐々に下がっていく。
リザードマンたちのいる湿地帯に近づいてきたためだ。
高所を怖がっていたセーレアも慣れてきたのか落ち着いてきていた。
次第に地面が近づいてくると、セーレアが呟いた。
「こうやって見ると……確かに稲作でもするしかないわ」
「だろ?」
俺も身を乗り出すようにして地面を見下ろす。
高いところからだと、葦の茂みなどが草地に見え、ちょっと大きめの水溜まりがあるだけのように見える。だが、実際は湿地帯だ。この辺りは、川も多く、乾いた大地を探す方が難しかった。
「シノビノサト村では、水田の水を確保するのが大変だったからな。普通の畑の方が作りやすいくらいだ」
俺の発言を受け、セーレアは納得したように頷いた。
「で、こっちは逆ってわけか。……これから私たちがしようとしているのは、商人の基本ってわけね」
「ん? 商人の基本ってなんだ?」
セーレアはあちこち旅をしていたせいか、いろいろなことに詳しかった。
「昔、行商人の荷馬車をヒッチハイクしてた時に聞いたのよ。『商売の基本はどっかで安く仕入れて、別の場所で高く売ることだ』って。まあ、この場合、行商人の基本かもしれないけど」
「うんうん」
「聞いた時は何を当たり前のことを、って思ったけど、いろいろと含蓄のある言葉かもと思ってさ」
セーレアは考えるような顔つきになった。
視線の先は湿地帯だ。
「なるほどなあ。安く仕入れられるってことは、そこがどういう土地で、売りつける先がどういう場所か知ってるってことかもな。例えば、リザードマンの暮らす湿地帯は、普通の畑に向かない。逆に、シノビノサト村は水田にはあまり向いてないとか」
「そうそう。あと、需要と供給もね。話じゃリザードマンたちは、米にはたぶん興味ないだろうし」
俺とセーレアが世間話をしていると、使節団の面々も次第に肝が座ってきたらしい。元々、シノビノサト村の住人はそういうところがあるし、移住してきた者たちだって修羅場をくぐってきた者が多い。土壇場になって、いっそ気持ちが落ち着いたのだろう。
最初は、竜の飛来に驚き、逃げ出そうと走り出すリザードマンたちだったが、俺がイヌガミの背中から手を振ると、すぐにこちらに気づき、大きく手を振り返してきた。
「フウマさん!」
鰐の皮で作ったベルトのような物を袈裟懸けにしたリザードマンが、着地しようとするイヌガミの足元まで真っ先に駆けつけた。
「リーダー!」
俺は笑顔で呼びかける。
なんだか彼の持つ黒曜石の槍が懐かしい。思えば、松明に黒曜石、筏作りといろいろな経験を共有した。たった半日程度の出会いだったとは思えないほど密度の濃い時間だった。
リザードマンたちのいる湿地帯に近づいてきたためだ。
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俺も身を乗り出すようにして地面を見下ろす。
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「うんうん」
「聞いた時は何を当たり前のことを、って思ったけど、いろいろと含蓄のある言葉かもと思ってさ」
セーレアは考えるような顔つきになった。
視線の先は湿地帯だ。
「なるほどなあ。安く仕入れられるってことは、そこがどういう土地で、売りつける先がどういう場所か知ってるってことかもな。例えば、リザードマンの暮らす湿地帯は、普通の畑に向かない。逆に、シノビノサト村は水田にはあまり向いてないとか」
「そうそう。あと、需要と供給もね。話じゃリザードマンたちは、米にはたぶん興味ないだろうし」
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「リーダー!」
俺は笑顔で呼びかける。
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