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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

ガチンコ漁 三

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(何匹くらい浮くかな? たくさん浮きすぎると持っていくのは難しいから、村で少しは食べようかな。初めてのガチンコ漁で獲った魚だし、少し自分でまず食べたいかな。……そういや漁ってのも初めてかもなー……そういう技術的なものってほとんど必要なかったから…………ん? てかいつまで待てばいいのかな? まだ一匹も浮いてこないんだけど……)

 俺が川面を見つめていると、オゥバァがまるで俺の思考を読んだかのように尋ねてきた。

「ねえ、これっていつまで待つの? 時間差があるものなの? イメージ的には放り込んですぐって思ってたんだけど、違うの?」

「…………」

「浮いてこないであります!」

 イヌガミが川縁で前足を突っ込んで、ちゃぷちゃぷと川面を弾いている。

「………………あれ?」

 もう完全に波立った水面が元通りになり、辺りに鳥の鳴き声だけが響く痛いほどの静寂が戻ってきてから、俺はガチンコ漁に失敗したということを渋々認めた。

「でも、言われた通りに」

 俺の言い訳めいた言葉に、オゥバァは「やれやれね」と肩をすくめて見せた。

「でも、フウマにしては成長かもね」

 そんな寸評を無視して、俺は頭を回転させていた。

(どうして? なんでだ? ていうか、いつでもできるし、やれば成功すると子供の頃から信じて疑わなかったのに……なんで失敗した? 意味がわからないんだが……)

「若様のカタキを討つであります!」

 別に俺は死んでないけどな。

 イヌガミが石垣のてっぺんに乗ると、「ていっ」という掛け声と共に一番上の岩を蹴飛ばした。岩がごろごろと石垣の上を転がり、地面に落ち、そのままボチャンと川に落ちた。
 その様子を眺めていた俺とオゥバァは、顔を見合わせた。

「ねぇ……こんなのでどうやって魚が浮くのよ? 浮くわけないわよ」

「うーむ……確かに」

 イヌガミが「てぃてぃ」言いながら岩を蹴り転がしては川に放り込んでいるが、魚が一向に浮く様子はない。

「やってみて失敗するということも重要なことだ」と嘯いたものの、正直失敗はちょっとだけ応えた。
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