最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた

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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

みやげ

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「はい!」

 リノを連れて戻ると、なぜかセーレアが俺に向かって手の平を差し出してきた。
 しかも、いい笑顔だ。

 俺は意味がわからず、ちらっとオゥバァに目を向けると、彼女はどうやら炊き出しを配る当番らしく、村人に交じってスープをよそっていた。
 セーレアに目を戻す。

「だから――はいっ!」

 セーレアが、ずずいっと手の平を近づけてきた。
 俺はやっぱり意味がわからず、リノを見た。
 リノは不思議そうに首をかしげている。

 俺はふとイヌガミが目に入って、思いつくことがあった。イヌガミを後ろから抱き上げる。そしてセーレアに近づく。
 ぽんと、イヌガミがセーレアの手にお手をした。

「だあぁっ! 違うわよ! おみやげよ、おみやげ!」

 セーレアはイヌガミの手を避けて、また俺に向かって手を差し出した。
 残念ながらイヌガミの何かの琴線の触れてしまったらしく、またお手をされていた。
 セーレアはイヌガミの肉球を三回受けたところで諦めて手を下ろした。

「おみやげは? リノちゃんに挨拶するまで待ってあげたんだから、さっさと渡してよね!」

「え? おみやげ?」

 俺は当然そんなもの持っていない。
 そもそも魔族領にお土産屋さんなどなかったし、土産物を作るような余裕などなかったのだ。

「当然でしょ? 旅行に行ってきたんだから」

「旅行じゃなくて旅だよ旅。もしくは冒険」

「冒険って『危険を冒す』って意味よ? 危険あった? 旅って快適じゃないこともある旅行のことを言うのよ、快適じゃなかった?」

 俺は、自分の旅を振り返ってみた。
 イヌガミで一っ飛びで帰って来れた。
 温泉にも浸かった。
 あちこちで、なんかいろいろと作っては食べ、作っては食べした記憶が……。

「何か反論は?」

「ありません」

 それに危険もなかったといえる。あの砂嵐や溶岩くらいだろうか、多少危険があったのは。
 でも、帰りなどはわざとではないのかと思える勢いでイヌガミは砂嵐に巻き込まれていたからなあ……。

「――土産はあるよ」

「ほんと!? やったー!」

 セーレアが手を差し出してきた。

「土産話がな」とイヌガミを真似てドヤ顔を披露してみたら、セーレアが差し出した手でそのまま俺の胸を突いてきた。
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