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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
治癒神とハイエルフ
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「……そういうものかもしれません」
ハイエルフは目を伏せて、一つ息をついた。
細い肩から力が抜けて、彼女が一回り小さくなったように見えた。
彼女の両脇に控えるハイエルフ二人も、安心した様子だった。
(……そうか、彼女らはほっとしたのか……)
よくよく考えてみれば、上位竜に化ける犬を引き連れた、見ず知らずの男が訪ねてきたのだ。しかも、怒りも露に。怯えるなという方が無理だろう。毅然とした態度を一切崩さなかったが、きっと内心は必死だったに違いない。
「どうやら……役目がまっとうできたようでよかったです」ハイエルフの女はじっと俺を見つめた。「ところで」
「はい?」
「一つ質問してもよろしいですか? その……今更なのですが」
「え、ええ……」
いったいなんのことだろう?
ちょっと改まった感じもするし、ハイエルフの女の顔が少し赤い。
「お名前は?」
「え?」
「その……私はハイエルフの導き手と呼ばれる地位に就いているシャフィールと申します。あなた方にわかりやすく伝えると、指導者や女王、もしくは王女などが近いでしょうか」
「え……あ、そっか……」
思わずどもる俺。
そういえば自己紹介もまだだった。いきなり詰め寄るようにして話し合いを始めてしまったのだ。
聞いてくれれば答えたのに、とも思ったが、「お名前なんですか?」などと聞けるような空気でもなかった。
「俺はフウマ。シノビノサト村という場所の族長をしています。……えっと、ハイエルフでは導き手と呼ばれるんですか? たぶんそういう立ち場です」
ハイエルフの導き手シャフィールは頷いた。
「ところで、導き手ってどこか癒し手という単語に似てますね」
何気なく発した言葉が、
「それはそうです。導き手と名付けたのは治癒神なのですから」
意外な事実を引き出した。
「――え?」
一般的には至高の善神として信じられている治癒神だが、俺は悪神の類だと知っていた。それがこのハイエルフたちとどう関係があるのかわからなかった。
ハイエルフは目を伏せて、一つ息をついた。
細い肩から力が抜けて、彼女が一回り小さくなったように見えた。
彼女の両脇に控えるハイエルフ二人も、安心した様子だった。
(……そうか、彼女らはほっとしたのか……)
よくよく考えてみれば、上位竜に化ける犬を引き連れた、見ず知らずの男が訪ねてきたのだ。しかも、怒りも露に。怯えるなという方が無理だろう。毅然とした態度を一切崩さなかったが、きっと内心は必死だったに違いない。
「どうやら……役目がまっとうできたようでよかったです」ハイエルフの女はじっと俺を見つめた。「ところで」
「はい?」
「一つ質問してもよろしいですか? その……今更なのですが」
「え、ええ……」
いったいなんのことだろう?
ちょっと改まった感じもするし、ハイエルフの女の顔が少し赤い。
「お名前は?」
「え?」
「その……私はハイエルフの導き手と呼ばれる地位に就いているシャフィールと申します。あなた方にわかりやすく伝えると、指導者や女王、もしくは王女などが近いでしょうか」
「え……あ、そっか……」
思わずどもる俺。
そういえば自己紹介もまだだった。いきなり詰め寄るようにして話し合いを始めてしまったのだ。
聞いてくれれば答えたのに、とも思ったが、「お名前なんですか?」などと聞けるような空気でもなかった。
「俺はフウマ。シノビノサト村という場所の族長をしています。……えっと、ハイエルフでは導き手と呼ばれるんですか? たぶんそういう立ち場です」
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「ところで、導き手ってどこか癒し手という単語に似てますね」
何気なく発した言葉が、
「それはそうです。導き手と名付けたのは治癒神なのですから」
意外な事実を引き出した。
「――え?」
一般的には至高の善神として信じられている治癒神だが、俺は悪神の類だと知っていた。それがこのハイエルフたちとどう関係があるのかわからなかった。
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