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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

旅の終わりに向けて

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 ドワーフたちの住み処への帰り道。湯気を上げたドワーフたちは、ほっこりとして和やかなムードだった。

「交易の話は大船に乗った気でおれよ!」

「うむ! 道具類の製作なら儂らの得意分野じゃからな!」

 ドワーフたちは口々に自信ありげに話しかけてきた。
 確かに、深い洞窟を掘るほどの彼らの技術力があれば、水田に改良するのも順調に進むだろう。

(人材は魔族やリザードマンたちもいるしな)

 リザードマンは湿地でも素早く動ける体をしていた。ぬかるみでもバランスを取れる尻尾に、泥水を弾く鱗。彼らは日常的に湿地帯を移動しているようだったので、田植えなども苦ではないだろう。
 そんなことを考えているうちにドワーフの住み処に着いた。

「それじゃあ、俺たちはもう行きますね」

 俺はドワーフたちに声をかけた。
 別れの挨拶は短い。またすぐに会いに来る予定なのだ。
 下を向いて、イヌガミに告げた。

「イヌガミ。行こうか」

「はっ! かしこまりました、若様!」

 麓に向けて駆け出した俺とイヌガミは、あっという間に温泉を通り過ぎ、炭酸水の湧き水も通過した。

「ここまで来ればいいか」

 周囲には亜人の気配はない。

「イヌガミ、〈変化〉を使おう。時間短縮だ」

「はっ!」

 イヌガミは、上位竜へと変化した。
 山の麓に突如、新たな小山ができたようにすら見える巨大な影。
 俺はその背に飛び乗り、イヌガミは飛翔した。

 高度を上げると、はっきりと北部にある砂嵐が見えた。

「あれは……」

 山よりも高いほどの高度と、シノビとしての視力があって初めて捉えることができる光景だろう。
 黄土色に霞む光景は、まるで一足先に夕暮れにでもなったかのようだ。

(凄いな)

 砂嵐は移動していない。さながら壁のようだ。

「確定か」

 俺もイヌガミも、しばらく砂嵐を見つめて無言だった。

(他者を遠ざけたり、すべてを覆い隠したりするということは、何か後ろ暗いことでもあるのか……?)

 早合点しすぎかもしれないと頭を振る。それを確かめるために俺たちは行くのだ。

「イヌガミ――」

 竜になったイヌガミが頷き、「はっ!」と畏まった声が聞こえた。

「――行こう」

 この魔族領の旅が、ようやく終わりに向かい始めていると感じた。
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