170 / 263
第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
ドワーフに勧められた蒸したタロイモと五種のキノコの料理
しおりを挟む
ドワーフの村は、噂通り洞窟の中にあった。
そこで俺とイヌガミは、ドワーフの長老たちにお目通りを願った。
最初は「部外者お断り」という雰囲気だったし、俺をここに連れてきてくれたドワーフの猟師が糾弾されそうな流れだったし、悪いこと尽くしだったが、シノビノサト村の地酒ニホーシュを差し出すと状況が一変した。
「おお! いい香りじゃ!」
「独特の口当たり!」
「美味い! 美味いぞおー!」
なぜか長老会議の場が、宴席に早変わりしてしまったが、警戒心だらけで話もろくにしてもらえないより良かっただろう。
干して乾かした米、ほしいいを水で戻してもらって、そっちもツマミとして提供したのだが、そっちの反応は全然だった。
「ドワーフって穀物とか野菜とか食べないんですか?」
俺も一緒に宴会に加わりながら尋ねた。
もっとすべき話があるが、まずは仲良くなることを優先すべきだろう。難しい話は後だ。
「野菜も食べるぞ。ほれ、来た来た」
ドワーフの長老の一人が言うと、タロイモを蒸したような料理をドワーフが運んできた。様々なキノコがイモの上に載っている。
なかなか美味しそうだ。
イヌガミが料理の皿に顔を突っ込む前に、ドワーフの長老に断って、皿に取り分けてやる。かなりの量があるので、これで当分は静かになるだろう。
俺も、イモにフォークを突き刺し、いろいろなキノコが載るようにして口に運んだ。
口に入れた瞬間、ホクホクとしたイモの天然の甘さを感じた。
単一になりがちなイモの味に、アクセントを加えるキノコが美味しい。
キノコは熱しすぎず、食感が残るようにしているらしい。
結果、やや薄味のイモ料理が、キノコのおかげで数段上の美味しい料理に化けていた。
(しいて言えば、塩が欲しいかな?)
俺は、持っていた塩を取り出して、振りかけてみた。
「おっ!」
食べた瞬間、俺は思わず声を上げてしまった。
ドワーフたちの視線が集まる。
(美味い! むちゃくちゃ美味いぞ!)
イモの甘みが、塩をちょっと振りかけただけでぐっと引き立った。
五種類のキノコたちも、イモと一緒に味が引き上げられていた。より味わって食べるようになったからかもしれない。
さっきまでは似たような味と触感に思えていたキノコも、一つ一つ違うと実感できた。
ときおりちょっとクセの強い味のキノコに当たるが、それさえもいいアクセントになる。
「むっちゃくちゃ美味しそうに食べるのう。……儂らにもそれを分けてくれんか? それは塩かね?」
「はい」
「おお! 塩か!」
塩自体は知っていても、塩はあまり持っていない様子だった。
「この辺りでは岩塩とか取れないんですか?」
「ほとんどないな。塩は貴重なものだ」
ドワーフたちが「美味い美味い」と舌鼓を打つ中、ドワーフの長老の一人はおもむろに話しだした。
「フウマさんは、たぶんこう思っておるんじゃろ……だったら海水で塩を作ればいいと」
「はい」
この山脈から海までは往復できないほどの距離ではない。
確かに疑問だった。
そこで俺とイヌガミは、ドワーフの長老たちにお目通りを願った。
最初は「部外者お断り」という雰囲気だったし、俺をここに連れてきてくれたドワーフの猟師が糾弾されそうな流れだったし、悪いこと尽くしだったが、シノビノサト村の地酒ニホーシュを差し出すと状況が一変した。
「おお! いい香りじゃ!」
「独特の口当たり!」
「美味い! 美味いぞおー!」
なぜか長老会議の場が、宴席に早変わりしてしまったが、警戒心だらけで話もろくにしてもらえないより良かっただろう。
干して乾かした米、ほしいいを水で戻してもらって、そっちもツマミとして提供したのだが、そっちの反応は全然だった。
「ドワーフって穀物とか野菜とか食べないんですか?」
俺も一緒に宴会に加わりながら尋ねた。
もっとすべき話があるが、まずは仲良くなることを優先すべきだろう。難しい話は後だ。
「野菜も食べるぞ。ほれ、来た来た」
ドワーフの長老の一人が言うと、タロイモを蒸したような料理をドワーフが運んできた。様々なキノコがイモの上に載っている。
なかなか美味しそうだ。
イヌガミが料理の皿に顔を突っ込む前に、ドワーフの長老に断って、皿に取り分けてやる。かなりの量があるので、これで当分は静かになるだろう。
俺も、イモにフォークを突き刺し、いろいろなキノコが載るようにして口に運んだ。
口に入れた瞬間、ホクホクとしたイモの天然の甘さを感じた。
単一になりがちなイモの味に、アクセントを加えるキノコが美味しい。
キノコは熱しすぎず、食感が残るようにしているらしい。
結果、やや薄味のイモ料理が、キノコのおかげで数段上の美味しい料理に化けていた。
(しいて言えば、塩が欲しいかな?)
俺は、持っていた塩を取り出して、振りかけてみた。
「おっ!」
食べた瞬間、俺は思わず声を上げてしまった。
ドワーフたちの視線が集まる。
(美味い! むちゃくちゃ美味いぞ!)
イモの甘みが、塩をちょっと振りかけただけでぐっと引き立った。
五種類のキノコたちも、イモと一緒に味が引き上げられていた。より味わって食べるようになったからかもしれない。
さっきまでは似たような味と触感に思えていたキノコも、一つ一つ違うと実感できた。
ときおりちょっとクセの強い味のキノコに当たるが、それさえもいいアクセントになる。
「むっちゃくちゃ美味しそうに食べるのう。……儂らにもそれを分けてくれんか? それは塩かね?」
「はい」
「おお! 塩か!」
塩自体は知っていても、塩はあまり持っていない様子だった。
「この辺りでは岩塩とか取れないんですか?」
「ほとんどないな。塩は貴重なものだ」
ドワーフたちが「美味い美味い」と舌鼓を打つ中、ドワーフの長老の一人はおもむろに話しだした。
「フウマさんは、たぶんこう思っておるんじゃろ……だったら海水で塩を作ればいいと」
「はい」
この山脈から海までは往復できないほどの距離ではない。
確かに疑問だった。
0
お気に入りに追加
4,200
あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。