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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
ワカメとコンブとアサリをゲット
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二度目に訪れた海は、南部の海とはずいぶんと印象が違っていた。
たぶん水産都市エレフィンの海は、海といっても加工された海だったためだ。
北には港がないという意味だけではない。
こちらの海の海岸線は、どこか鋭角的な雰囲気を醸し出していた。
生物を拒絶するような荒々しさといえばよいのか。
心持ち波が激しく感じられるのもその理由かもしれない。
「海風は……暖かいといえば暖かいが……」
それでも南部に感じた陽気な気配はない。
むしろ冷たい大気と暖かい大気が混じり合って、冷たい風が際立つようですらあった。
「……最悪の場合〈雷切〉を使うか」
海の魚を獲る効果的な方法を知らないが、雷の効果で間違いなく、魚は浮いてくるだろう。
ただ、そうすると生態系を破壊してしまいかねない。それに、リザードマンたちでは再現できない漁の方法だ。
海岸沿いに歩いていた俺は、海藻を見つけた。
「やった……! これなら!」
俺が、まるでゴミのように散らばる海藻を見て感嘆の声を上げたので、リザードマンのリーダーは不思議そうに俺を見た。
「それは?」
「海藻です。……正直、コンブとかワカメとかは名前しか聞いたことがありませんが、なんとか調理することができると思います」
「なんと!」
リザードマンたちは驚きの声を上げた。
せっかくなので、新鮮な海藻を、海に潜って手に入れてもらう。
俺が潜ってもいいのだが、服を脱ぐのがちょっと恥ずかしかった。
海に潜るのも興味はあるが、それよりまずは彼らの食事の準備を始める方が先だ。お腹が膨れてから潜りたいだけ潜ればいい。
まず薪を拾う。幸いこの辺りは例の集中豪雨の範囲からは外れていたようだ。乾いた木切れがたくさん手に入った。
イヌガミは浜辺でクラゲにタッチしては、ぷるんとしたクラゲからダッシュして逃げるという謎の遊びを繰り返していたが、俺が働いているのを見ると戻ってきた。
そして木切れをくわえている。
たぶん遊んでいるつもりと、手伝っているつもりが半々くらいだろう。
俺は浜辺に戻ると、イヌガミの涎まみれになった木切れを「ありがとう」と受け取り、焚き火を始めた。
「なあ、イヌガミ。さっき浜辺で遊んでたけど、やっぱ魚はいなさそうなのか?」
「はっ! この辺りの海には一匹もいないようであります!」
ちょっと信じられないような話だが、イヌガミが言うのなら間違いないのだろう。イヌガミのずば抜けた能力と食い気を考えるなら。
「一見すると、食料はなさそうだが」
俺は浜辺に見えるブツブツに目を留めた。
湿った浜辺には、小さな穴がところどころ空いているのだ。
「なあ、イヌガミ。その小さな穴……わかるか?」
「わかるであります!」
「その穴のある辺りを掘ってみてくれ」
焚き火の周りに、大きな石を拾ってきて、鍋を置くのに適した竈を作っていく。
「何かいたか?」
「貝であります!」
イヌガミが口の先で、小さな貝をくわえている。
「でかした!」
褒められたのは珍しいので、イヌガミは喜び勇んで、小さな穴を見つけては掘っては貝を俺のもとに運ぶという作業に熱中し出した。
「コンブとワカメはあるし貝もある。……これは曾祖父が言ってたアサリであってるだろうか? まあ、いいか、貝は貝だ。……あとは、うちの村特産の味噌もある」
しばらくしたら、リザードマンたちが大量の海藻を片手に戻ってきた。
材料は十分だろう。
たぶん水産都市エレフィンの海は、海といっても加工された海だったためだ。
北には港がないという意味だけではない。
こちらの海の海岸線は、どこか鋭角的な雰囲気を醸し出していた。
生物を拒絶するような荒々しさといえばよいのか。
心持ち波が激しく感じられるのもその理由かもしれない。
「海風は……暖かいといえば暖かいが……」
それでも南部に感じた陽気な気配はない。
むしろ冷たい大気と暖かい大気が混じり合って、冷たい風が際立つようですらあった。
「……最悪の場合〈雷切〉を使うか」
海の魚を獲る効果的な方法を知らないが、雷の効果で間違いなく、魚は浮いてくるだろう。
ただ、そうすると生態系を破壊してしまいかねない。それに、リザードマンたちでは再現できない漁の方法だ。
海岸沿いに歩いていた俺は、海藻を見つけた。
「やった……! これなら!」
俺が、まるでゴミのように散らばる海藻を見て感嘆の声を上げたので、リザードマンのリーダーは不思議そうに俺を見た。
「それは?」
「海藻です。……正直、コンブとかワカメとかは名前しか聞いたことがありませんが、なんとか調理することができると思います」
「なんと!」
リザードマンたちは驚きの声を上げた。
せっかくなので、新鮮な海藻を、海に潜って手に入れてもらう。
俺が潜ってもいいのだが、服を脱ぐのがちょっと恥ずかしかった。
海に潜るのも興味はあるが、それよりまずは彼らの食事の準備を始める方が先だ。お腹が膨れてから潜りたいだけ潜ればいい。
まず薪を拾う。幸いこの辺りは例の集中豪雨の範囲からは外れていたようだ。乾いた木切れがたくさん手に入った。
イヌガミは浜辺でクラゲにタッチしては、ぷるんとしたクラゲからダッシュして逃げるという謎の遊びを繰り返していたが、俺が働いているのを見ると戻ってきた。
そして木切れをくわえている。
たぶん遊んでいるつもりと、手伝っているつもりが半々くらいだろう。
俺は浜辺に戻ると、イヌガミの涎まみれになった木切れを「ありがとう」と受け取り、焚き火を始めた。
「なあ、イヌガミ。さっき浜辺で遊んでたけど、やっぱ魚はいなさそうなのか?」
「はっ! この辺りの海には一匹もいないようであります!」
ちょっと信じられないような話だが、イヌガミが言うのなら間違いないのだろう。イヌガミのずば抜けた能力と食い気を考えるなら。
「一見すると、食料はなさそうだが」
俺は浜辺に見えるブツブツに目を留めた。
湿った浜辺には、小さな穴がところどころ空いているのだ。
「なあ、イヌガミ。その小さな穴……わかるか?」
「わかるであります!」
「その穴のある辺りを掘ってみてくれ」
焚き火の周りに、大きな石を拾ってきて、鍋を置くのに適した竈を作っていく。
「何かいたか?」
「貝であります!」
イヌガミが口の先で、小さな貝をくわえている。
「でかした!」
褒められたのは珍しいので、イヌガミは喜び勇んで、小さな穴を見つけては掘っては貝を俺のもとに運ぶという作業に熱中し出した。
「コンブとワカメはあるし貝もある。……これは曾祖父が言ってたアサリであってるだろうか? まあ、いいか、貝は貝だ。……あとは、うちの村特産の味噌もある」
しばらくしたら、リザードマンたちが大量の海藻を片手に戻ってきた。
材料は十分だろう。
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