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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
森の中での食べ物の見つけ方
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もちろんイヌガミを毒見役に使うわけじゃない。
ちょうど雨も上がってきたので、即席の屋根の外に出た。
「この屋根……シンプルなのに、便利ですね」
感想を漏らす魔族の男に、俺は伝えた。
「もし、今回みたいな雨が降るようでしたら、あらかじめ作っておいた方がいいかもしれませんね。一時凌ぎにしかなりませんが、それでもあるのとないのとでは全然違いますし」
俺はジャングルを見回した。
「じゃあ、とりあえず食べ物を探しましょう。まずあの鳥が食べている木の実」
鮮やかな鳥が、突っついている木の実を指差す。
「鳥が食べている木の実は、毒がない可能性が高いです。モンスターなんかの中には毒を好んで食べるものや毒耐性を持つものもいますが、あれは普通の鳥なので」
「なるほど。普通の動物っていうのはそういうことですか」
「あとは、ワイルドボア辺りでもいてくれればいいんですが」
冒険者ギルドの依頼では、畑の野菜などを荒らすワイルドボアは、モンスター扱いされることもある。
だが、あれはただの動物だ。ただし、巨大なイノシシなので、村人だと大怪我することも十分あり得る。
気配感知を使い、ワイルドボアをなんとか探し出す。
ワイルドボアが、なにやら地面を掘っている場面に出くわした。
「あれはなにを……?」
不思議そうな魔族の男に、俺は「しっ」と唇に指を当てるジェスチャーをして静かにしてもらう。魔族の女も姉妹もちゃんと静かにしていた。
ワイルドボアがもぐもぐ口を動かしながらどっか行った後、俺はそこを掘り返した。
それほど深くない土中に、あっさりと球状のものが見つかった。
「これは食べられるんでしょうか?」
俺の隣で、魔族の男も土を掘り起こしていく。魔族の女や姉妹も手伝った。
「うちの村では栽培して、よく食べています。もちろん毒はありませんよ」
俺の知っている食べ物だった。
「動物は案内役に使えるそうなんです。といっても、聞いていただけで実践したのは今回が初めてなんですが」
そんなふうに説明していたのだが、お腹が減っていたのかイヌガミが真っ先にそれにかぶりつき、魔族の一家もその勢いに押されるように生のまま齧りついた。
次の瞬間、イヌガミがぺっぺっと吐き出し、「これは毒であります、若様!」と大声で叫んだ。
魔族の家族も四人とも吐き出しこそしなかったものの、なんとも言えない表情をしていた。
「タマネギはそのままだと苦いよ。火を通すと甘くなるんだ。皮も泥もちゃんと取る方がいいよ」
イヌガミに毒見させてなくてよかった。
こいつは美味しいかまずいかでしか判断していないのだ。もし毒が入っていても、甘かったら「毒じゃない! 美味しいであります!」とか言いそうだ。
魔族の一家は薪を拾って火を起こす準備を始めた。小雨になっていた雨もやんだし、ちょうどよかった。
「若様! 先ほどのワイルドボアを狩った方がよかったのでは?」
たぶんイヌガミは、俺がシノビスキルを使用してモンスターを狩らないのを不思議に思ったんだろう。
確かに、ワイルドボアの肉を鍋にすると美味しい。
俺もお腹が減ってきているので、口の中にあの甘くて野趣あふれる味わいが広がるのを想像した。
早速火を起こし始めた魔族の家族を見ながら、俺はイヌガミにだけ聞こえる声でそっと伝えた。
「俺たちには目的がある。……ずっとこの家族の面倒を見るんじゃないなら、俺やお前なしじゃ成立しない狩りをするのは、間違ってる気がするんだ」
以前の俺なら、こんな回りくどいやり方をしなかっただろう。
けど、こうすべきだと思ったのだ。
ちょうど雨も上がってきたので、即席の屋根の外に出た。
「この屋根……シンプルなのに、便利ですね」
感想を漏らす魔族の男に、俺は伝えた。
「もし、今回みたいな雨が降るようでしたら、あらかじめ作っておいた方がいいかもしれませんね。一時凌ぎにしかなりませんが、それでもあるのとないのとでは全然違いますし」
俺はジャングルを見回した。
「じゃあ、とりあえず食べ物を探しましょう。まずあの鳥が食べている木の実」
鮮やかな鳥が、突っついている木の実を指差す。
「鳥が食べている木の実は、毒がない可能性が高いです。モンスターなんかの中には毒を好んで食べるものや毒耐性を持つものもいますが、あれは普通の鳥なので」
「なるほど。普通の動物っていうのはそういうことですか」
「あとは、ワイルドボア辺りでもいてくれればいいんですが」
冒険者ギルドの依頼では、畑の野菜などを荒らすワイルドボアは、モンスター扱いされることもある。
だが、あれはただの動物だ。ただし、巨大なイノシシなので、村人だと大怪我することも十分あり得る。
気配感知を使い、ワイルドボアをなんとか探し出す。
ワイルドボアが、なにやら地面を掘っている場面に出くわした。
「あれはなにを……?」
不思議そうな魔族の男に、俺は「しっ」と唇に指を当てるジェスチャーをして静かにしてもらう。魔族の女も姉妹もちゃんと静かにしていた。
ワイルドボアがもぐもぐ口を動かしながらどっか行った後、俺はそこを掘り返した。
それほど深くない土中に、あっさりと球状のものが見つかった。
「これは食べられるんでしょうか?」
俺の隣で、魔族の男も土を掘り起こしていく。魔族の女や姉妹も手伝った。
「うちの村では栽培して、よく食べています。もちろん毒はありませんよ」
俺の知っている食べ物だった。
「動物は案内役に使えるそうなんです。といっても、聞いていただけで実践したのは今回が初めてなんですが」
そんなふうに説明していたのだが、お腹が減っていたのかイヌガミが真っ先にそれにかぶりつき、魔族の一家もその勢いに押されるように生のまま齧りついた。
次の瞬間、イヌガミがぺっぺっと吐き出し、「これは毒であります、若様!」と大声で叫んだ。
魔族の家族も四人とも吐き出しこそしなかったものの、なんとも言えない表情をしていた。
「タマネギはそのままだと苦いよ。火を通すと甘くなるんだ。皮も泥もちゃんと取る方がいいよ」
イヌガミに毒見させてなくてよかった。
こいつは美味しいかまずいかでしか判断していないのだ。もし毒が入っていても、甘かったら「毒じゃない! 美味しいであります!」とか言いそうだ。
魔族の一家は薪を拾って火を起こす準備を始めた。小雨になっていた雨もやんだし、ちょうどよかった。
「若様! 先ほどのワイルドボアを狩った方がよかったのでは?」
たぶんイヌガミは、俺がシノビスキルを使用してモンスターを狩らないのを不思議に思ったんだろう。
確かに、ワイルドボアの肉を鍋にすると美味しい。
俺もお腹が減ってきているので、口の中にあの甘くて野趣あふれる味わいが広がるのを想像した。
早速火を起こし始めた魔族の家族を見ながら、俺はイヌガミにだけ聞こえる声でそっと伝えた。
「俺たちには目的がある。……ずっとこの家族の面倒を見るんじゃないなら、俺やお前なしじゃ成立しない狩りをするのは、間違ってる気がするんだ」
以前の俺なら、こんな回りくどいやり方をしなかっただろう。
けど、こうすべきだと思ったのだ。
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