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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
王国史情報室の介入 3
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(ここまで強気の態度の理由は……アイリーン経由で、俺の情報……性格や心理的な弱点なんかが漏れてるんだろうなあ……)
だが。
古い。
古すぎるぞ、その情報。
俺はこんなところで時間をかけるつもりはなかった。
俺の目的の本命は『天涯』の攻略と財宝『天国』の正体なのだから。
フクロウだかなんだか知らないが、勝手に暗部という「闇」を飛び交っていればいいのだ。
俺は〈影走り〉で奴らの影に転移した。
そして奴らを掴み、そいつらごと転移する。もちろん、フクロウもご一緒に。
リリィは後だ。一応事情くらい聞いておきたい。
「――『〈影走り〉奈落』」
足元の小石を二つ強く蹴り上げる。
小石二つは遥か上空へ。
蹴り上げた石の一方の影が、もう一方の石に落ちた。
その影に向かって俺は〈影走り〉を使用した。
この使い方を『〈影走り〉奈落』と呼んでいた。通常、影のない場所に転移できない〈影走り〉。だが、こうして人工的に影を作れば、空にだって転移できた。
「……へぇー……月が綺麗だな……」
地上から見るよりも、上空から見る月の方が綺麗な気がした。
月が大きく見えるのは目の錯覚なんだろうが、こっちのが大きい気がした。
そんなふうに満月を楽しんでいたが、俺の両手にそれぞれ掴まれた男たちはそうではなかったらしい。
「――かはっ! ひっひぃぃ……」
妙な呼吸音を上げ、フクロウは悲鳴を上げた。
フクロウ以外の王国史情報室の連中も似たような状態だ。
「これだけ高い所は初めてか?」
「……ひ……ひぃぃ……」
あれほど饒舌だったフクロウも、やる気満々だった男たちも、完全にすくみあがっていた。というか会話にならない。
聞いているのかどうかわからないが、とりあえず話を続ける。
「この技は、本来はこの後、地面に叩きつけるという流れになる……」
おっ。どうやら話をちゃんと全員聞いているようだ。手足をばたつかせ、もがいている。
俺が叩きつけようが、このまま自由落下しようが、死ぬのは確実だろうに。
「もし、金輪際俺につきまとったり、おかしな真似をしたりしないというのなら、今回だけは見逃そう。大目に見て……その川に落とすので許してやる」
正直この高さから落ちたら、死ぬか生きるか五分五分くらいではないだろうか? 一般人なら百パーセント死ぬ。
まあ、暗部で活躍しているらしき彼らなので大丈夫かもしれない。
「…………」
「…………」
「…………」
「……わ、わかった」
思ったより返事が早かった。
見る見る近づいてくる地面が、どうやらどんな拷問よりも効果的だったようだ。
「もっとも効果的な拷問は、未知の拷問である」と王宮の地下で拷問官がフェルノ相手に滔々と語っていたところに以前出くわしたことがあるが、どうやら本当らしい。
俺は一足先に、地面に〈影走り〉で転移。
突如自分の影に現れた俺を見て、リリィは悲鳴を上げた。
失礼な。
そしてしばらくして……。
ずばっしゃぁぁんずぼどぼぼぼ!
と、形容しがたい連続音を響かせて男たちが川に落ちた。
凄い水柱だな。
水飛沫というより、もう完全に水柱だ。
川の底にでも激突してるかもしれない。
しばらくして、男たちは半死半生という感じで川から這い上がってきた。
一人だけちょっと川下に流されていたが……たぶん途中まで気絶してたんだろうなあ。
だが。
古い。
古すぎるぞ、その情報。
俺はこんなところで時間をかけるつもりはなかった。
俺の目的の本命は『天涯』の攻略と財宝『天国』の正体なのだから。
フクロウだかなんだか知らないが、勝手に暗部という「闇」を飛び交っていればいいのだ。
俺は〈影走り〉で奴らの影に転移した。
そして奴らを掴み、そいつらごと転移する。もちろん、フクロウもご一緒に。
リリィは後だ。一応事情くらい聞いておきたい。
「――『〈影走り〉奈落』」
足元の小石を二つ強く蹴り上げる。
小石二つは遥か上空へ。
蹴り上げた石の一方の影が、もう一方の石に落ちた。
その影に向かって俺は〈影走り〉を使用した。
この使い方を『〈影走り〉奈落』と呼んでいた。通常、影のない場所に転移できない〈影走り〉。だが、こうして人工的に影を作れば、空にだって転移できた。
「……へぇー……月が綺麗だな……」
地上から見るよりも、上空から見る月の方が綺麗な気がした。
月が大きく見えるのは目の錯覚なんだろうが、こっちのが大きい気がした。
そんなふうに満月を楽しんでいたが、俺の両手にそれぞれ掴まれた男たちはそうではなかったらしい。
「――かはっ! ひっひぃぃ……」
妙な呼吸音を上げ、フクロウは悲鳴を上げた。
フクロウ以外の王国史情報室の連中も似たような状態だ。
「これだけ高い所は初めてか?」
「……ひ……ひぃぃ……」
あれほど饒舌だったフクロウも、やる気満々だった男たちも、完全にすくみあがっていた。というか会話にならない。
聞いているのかどうかわからないが、とりあえず話を続ける。
「この技は、本来はこの後、地面に叩きつけるという流れになる……」
おっ。どうやら話をちゃんと全員聞いているようだ。手足をばたつかせ、もがいている。
俺が叩きつけようが、このまま自由落下しようが、死ぬのは確実だろうに。
「もし、金輪際俺につきまとったり、おかしな真似をしたりしないというのなら、今回だけは見逃そう。大目に見て……その川に落とすので許してやる」
正直この高さから落ちたら、死ぬか生きるか五分五分くらいではないだろうか? 一般人なら百パーセント死ぬ。
まあ、暗部で活躍しているらしき彼らなので大丈夫かもしれない。
「…………」
「…………」
「…………」
「……わ、わかった」
思ったより返事が早かった。
見る見る近づいてくる地面が、どうやらどんな拷問よりも効果的だったようだ。
「もっとも効果的な拷問は、未知の拷問である」と王宮の地下で拷問官がフェルノ相手に滔々と語っていたところに以前出くわしたことがあるが、どうやら本当らしい。
俺は一足先に、地面に〈影走り〉で転移。
突如自分の影に現れた俺を見て、リリィは悲鳴を上げた。
失礼な。
そしてしばらくして……。
ずばっしゃぁぁんずぼどぼぼぼ!
と、形容しがたい連続音を響かせて男たちが川に落ちた。
凄い水柱だな。
水飛沫というより、もう完全に水柱だ。
川の底にでも激突してるかもしれない。
しばらくして、男たちは半死半生という感じで川から這い上がってきた。
一人だけちょっと川下に流されていたが……たぶん途中まで気絶してたんだろうなあ。
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