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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
自称美少女冒険者たち 3
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「はい、降参っ!」
オゥバァがいち早く武器を捨てた。
足元に彼女の細剣が転がる。
「なに勝手に降参してんのよ!」
セーレアが長杖を、正面の山賊たちに向けながら非難する。
完全に囲まれてしまっているため、どう狙いをつけてもすべての敵を牽制することはできない。
両手を上げたオゥバァは、したり顔でセーレアに答えた。
「だって仕方ないじゃない。逃げるだけならまだしも、そんな荷物ぎっしりの荷馬車なんか引き連れて逃げられるわけないじゃない。それに、良心的な山賊よね。命は取らないって本気みたいだし」
山賊たちが口々に言った。
「そりゃそうさ、お嬢さん方。もし殺してみろ、この山間の道を使ってくれる商人が少なくなるだろ? そうすると、俺ら山賊は食いっぱぐれるってわけだ」
「そうそう。山を下りても平野なんかにゃ、野盗がごろごろいる。縄張り争いで血を流すなんてまっぴらだ」
「お互いが楽しく生きていくためのギブアンドテイクってわけさ」
「だってさ」
オゥバァが山賊たちの言葉に続けた。
「どっちの味方なのよ!」
セーレアとオゥバァが喧嘩する中、馬車の陰に隠れるようにしていたリノも、仕方なく姿を現して提案した。
「テアールさん。オゥバァの言っていることは正しいです。いくらなんでも積み荷を積みすぎました。これでは逃げることはできません」
「欲張りすぎたってのは同感だけどね」
オゥバァとリノが降伏を認めたのを見て、セーレアはため息とともに長杖を下ろした。
武器を下ろした美少女冒険者パーティーの面々の中、唯一、テアールだけは剣を構えたままだった。
切っ先はかたかたと震えている。
「水産都市エレフィンでは、『天国』目当てに集まる難民たちが大勢いて、食料品の価格が高騰しているんです」
「聞いたわよ。きっと飛ぶように売れたわね。でも、命あっての物種でしょ? 欲張ると死ぬかもしれないわよ?」
「『天涯』の周囲には、人が溢れかえっていました。中には……ほんの幼い子どもを連れた母親なんかもいました。かなり食糧事情が悪いのがわかりました。――私は商人です! 商品を必要とする者のところに、必要な数だけ、適正な価格で売ることが生き様なんです!」
啖呵を切ったテアールを見て、セーレアは驚きに目を丸くした。
「あなた、金儲けのためじゃ……」
「はぁ……なるほどねー……急ぎだったのも、たくさん食料を積みすぎるくらい積んでたのも、そういう人たちにできる限り食料を運ぶためだったってわけか……」
オゥバァはぽりぽりと銀髪をかいた。
「いい話ですね!」と満面の笑みで、リノは両手を打ち合わせた。
そのパン! という小気味良い音が、引き金となった。
ほとんどアイコンタクトだけで、即席冒険者パーティーは意思疎通を終えた。
その気配を敏感に察したのは、テアールではなく山賊たちの方だった。
「ちっ。面倒な……」
無造作にリノに近づいた山賊の1人が、野太い腕をリノに伸ばした。
「今!」
リノの掛け声と同時に、走竜がいきなり後ろ足で山賊を蹴り上げた。
「ゴア!」
テアールが驚きの声を上げた時、すでにオゥバァとセーレアは動いていた。
オゥバァの爪先が、器用に細剣の柄を蹴り上げ、宙で3回転した細剣はその手に収まっていた。
「崖」
オゥバァはセーレアにそう言って、自分は山間の道に陣取る相手に、魔法の突風を叩きつけた。
山賊たちは不意を打たれて狭い道の両脇にぶつかる。
セーレアの方は、水を魔法で作り出し、斜面にいる相手の足元を泥に変えた。
ぬかるむ地面に気を取られた相手に、オゥバァの作り出した突風が襲い、滑り落ちてくる。
いきなり激しい戦いが始まった――。
オゥバァがいち早く武器を捨てた。
足元に彼女の細剣が転がる。
「なに勝手に降参してんのよ!」
セーレアが長杖を、正面の山賊たちに向けながら非難する。
完全に囲まれてしまっているため、どう狙いをつけてもすべての敵を牽制することはできない。
両手を上げたオゥバァは、したり顔でセーレアに答えた。
「だって仕方ないじゃない。逃げるだけならまだしも、そんな荷物ぎっしりの荷馬車なんか引き連れて逃げられるわけないじゃない。それに、良心的な山賊よね。命は取らないって本気みたいだし」
山賊たちが口々に言った。
「そりゃそうさ、お嬢さん方。もし殺してみろ、この山間の道を使ってくれる商人が少なくなるだろ? そうすると、俺ら山賊は食いっぱぐれるってわけだ」
「そうそう。山を下りても平野なんかにゃ、野盗がごろごろいる。縄張り争いで血を流すなんてまっぴらだ」
「お互いが楽しく生きていくためのギブアンドテイクってわけさ」
「だってさ」
オゥバァが山賊たちの言葉に続けた。
「どっちの味方なのよ!」
セーレアとオゥバァが喧嘩する中、馬車の陰に隠れるようにしていたリノも、仕方なく姿を現して提案した。
「テアールさん。オゥバァの言っていることは正しいです。いくらなんでも積み荷を積みすぎました。これでは逃げることはできません」
「欲張りすぎたってのは同感だけどね」
オゥバァとリノが降伏を認めたのを見て、セーレアはため息とともに長杖を下ろした。
武器を下ろした美少女冒険者パーティーの面々の中、唯一、テアールだけは剣を構えたままだった。
切っ先はかたかたと震えている。
「水産都市エレフィンでは、『天国』目当てに集まる難民たちが大勢いて、食料品の価格が高騰しているんです」
「聞いたわよ。きっと飛ぶように売れたわね。でも、命あっての物種でしょ? 欲張ると死ぬかもしれないわよ?」
「『天涯』の周囲には、人が溢れかえっていました。中には……ほんの幼い子どもを連れた母親なんかもいました。かなり食糧事情が悪いのがわかりました。――私は商人です! 商品を必要とする者のところに、必要な数だけ、適正な価格で売ることが生き様なんです!」
啖呵を切ったテアールを見て、セーレアは驚きに目を丸くした。
「あなた、金儲けのためじゃ……」
「はぁ……なるほどねー……急ぎだったのも、たくさん食料を積みすぎるくらい積んでたのも、そういう人たちにできる限り食料を運ぶためだったってわけか……」
オゥバァはぽりぽりと銀髪をかいた。
「いい話ですね!」と満面の笑みで、リノは両手を打ち合わせた。
そのパン! という小気味良い音が、引き金となった。
ほとんどアイコンタクトだけで、即席冒険者パーティーは意思疎通を終えた。
その気配を敏感に察したのは、テアールではなく山賊たちの方だった。
「ちっ。面倒な……」
無造作にリノに近づいた山賊の1人が、野太い腕をリノに伸ばした。
「今!」
リノの掛け声と同時に、走竜がいきなり後ろ足で山賊を蹴り上げた。
「ゴア!」
テアールが驚きの声を上げた時、すでにオゥバァとセーレアは動いていた。
オゥバァの爪先が、器用に細剣の柄を蹴り上げ、宙で3回転した細剣はその手に収まっていた。
「崖」
オゥバァはセーレアにそう言って、自分は山間の道に陣取る相手に、魔法の突風を叩きつけた。
山賊たちは不意を打たれて狭い道の両脇にぶつかる。
セーレアの方は、水を魔法で作り出し、斜面にいる相手の足元を泥に変えた。
ぬかるむ地面に気を取られた相手に、オゥバァの作り出した突風が襲い、滑り落ちてくる。
いきなり激しい戦いが始まった――。
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