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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮
リリィ 5
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庭木の陰から、ひょっこりと剪定バサミを持った庭師の男が顔を覗かせた。
剪定の最中だったらしく、髪に枝切れや葉っぱがついている。
「これが何の花か知ってるか?」
小さな白い花を示した俺に、人好きのする笑顔を見せた庭師は頭をかいてすまなそうにした。
「おらぁ……覚えるの苦手なんだ……」
頭をかくたびにぽろぽろと葉っぱなどが落ちる。
「なんて花なんだ?」と言いながら近づいてきた庭師が、突如として襲いかかってきた。
剪定バサミの切っ先を、顔をそらして避けた俺は、庭師の腕をひねる。
この花は使い方次第では自白させる効果もある。
俺の様子から花の使い道を知っていると察した庭師は、「アイリーン様……!」と叫び、自害しようとした。
腕を折り、剪定バサミを足元に落とした。
(――アイリーンの崇拝者か)
庭師を傷つけた瞬間、自分で自分を痛めつけたような嫌な気分を味わった。
「彼をいじめるのは、そのくらいにしておいてもらえませんか」
俺が精神的な衝撃を受けているうちに、いつのまにか館の扉が開き、老齢の執事が姿を見せていた。
「彼は若いので、本当にほとんど情報を知りません」
館に招かれた俺は、老執事の案内で廊下を歩く。
「王国史情報室についてどのくらいご存知ですか?」
歩きながら問いかけてきた老執事に、俺は答えた。
「表も裏も知っている」
「王国史情報室は、表向き、内紛や暗殺のたびに散逸し、時には増殖する奇怪極まりない王国史というものをまとめる仕事を行っております」
「裏では、リリィのような少女を、人質を取って操っている諜報組織だ」
「はい。その通りでございます。どちらも日陰者の仕事でございました」
立派な扉の前で、老執事は足を止め、こちらを振り向いた。
「――この方が現れるまでは」
老執事は扉を開いた。
桃色がかった金髪を結い上げ、王冠をかぶった懐かしい少女の姿。
視界いっぱいに広がるそれを見上げた俺は、かつて愛した少女の名を呟いていた……。
剪定の最中だったらしく、髪に枝切れや葉っぱがついている。
「これが何の花か知ってるか?」
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この花は使い方次第では自白させる効果もある。
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腕を折り、剪定バサミを足元に落とした。
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「彼をいじめるのは、そのくらいにしておいてもらえませんか」
俺が精神的な衝撃を受けているうちに、いつのまにか館の扉が開き、老齢の執事が姿を見せていた。
「彼は若いので、本当にほとんど情報を知りません」
館に招かれた俺は、老執事の案内で廊下を歩く。
「王国史情報室についてどのくらいご存知ですか?」
歩きながら問いかけてきた老執事に、俺は答えた。
「表も裏も知っている」
「王国史情報室は、表向き、内紛や暗殺のたびに散逸し、時には増殖する奇怪極まりない王国史というものをまとめる仕事を行っております」
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「はい。その通りでございます。どちらも日陰者の仕事でございました」
立派な扉の前で、老執事は足を止め、こちらを振り向いた。
「――この方が現れるまでは」
老執事は扉を開いた。
桃色がかった金髪を結い上げ、王冠をかぶった懐かしい少女の姿。
視界いっぱいに広がるそれを見上げた俺は、かつて愛した少女の名を呟いていた……。
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