最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた

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第Ⅳ章 天国へ至る迷宮

最新の最難関ダンジョン

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「それで、勇者パーティーに参加とはどういうことなんですか?」

俺は組合長に尋ねた。

「簡単に言えば、偽勇者パーティーに参加して欲しいということになる」

「勇者を騙る者ですか……」

有名人を騙るならず者というのは少なからずいる。

辺境に住む村人では、1度も勇者などの有名人の顔を見たことのない者も多い。
だからそうした犯罪者が現れるのも珍しくはない。

それを捕縛、もしくは討伐することはよくある任務だった。

(そうなると気になることもあるな)

いくら冒険者ギルドが忙しいからといって、組合長がわざわざ俺を指名する理由がわからない。

「偽勇者パーティーに潜り込んで、そいつらを一網打尽にするだけなら、俺じゃなくてもいいんじゃ……」

俺は困惑した。

「あぁ、その通りだ。偽勇者パーティーの件だけであれば、虎の子のS級冒険者を派遣していたかもしれない」

組合長が居住まいを正した。
どうやらもう1つ本題があるようだ。 

「ところで、新たに最難関ダンジョンが誕生したことは知っているかね?」

冒険者組合によって、世界中に散らばるダンジョンは、S級からK級までの12段階に分類されている。
ちなみにK級はゴブリンの巣穴などだ。
最難関ダンジョンとはS級ダンジョンのことだ。

難易度による分類は、主に階層の深さやモンスターの強さ、未帰還率などによって決められている。他にも難所やトラップの数なども影響する。

「『天涯てんがい』……というダンジョンを聞いたことがあるかね?」

「『天涯』……」

「そう。『天涯』だ。その様子だと、聞いたことがないようだね。……まあ、仕方ないかもしれないね。場所は大陸の端、水産都市エレフィンの近くにある滝の裏にある洞窟だ。ここからはだいぶ離れている。しかも――」

組合長はもったいつけるように間を空けた。

「――あの宗教都市ロウの大暴動以前は、数あるC級ダンジョンの1つでしかなかったダンジョンだ」

「……ということは、新しい階層が発見され、強力なモンスターがいたということなのでしょうか?」

「いや、違う。最難関ダンジョン『天涯』が、瞬く間にS級に認定された最大の理由は、異様なまでの未帰還率の高さだ」

わざわざ自分から断崖から飛び降りる者がいないように、危険だとわかるダンジョンに乗り込む者は少ない。

まして冒険者なら情報を収集して、ある程度は装備を整える。危険を感じれば早めに引き上げる。

未帰還率の高さを理由に、C級からS級に数ヶ月の間にランクが上がるようなダンジョンがあるのは異常なことだった。

「それってかなり変なんじゃ……」

ずっと黙っていたリノが、俺の困惑した声が何度も上がるのを聞いて、不思議そうに首を傾げていた。





◇◇◇あとがき◇◇◇

近況ボードで「書籍版のウリ その1」を投稿しようと思ったのですが、思ったより書くのに時間がかかったので、明日投稿します。
本編の投稿より文字数が多くなるとは予想外でした。
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