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新しい仲間

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 愛理とアミルは茂みを掻き分け、人影の後を追った。
 「ちっ・・・城内に逃げ込まれたか」
 愛理は名古屋城の天守の入り口に到達した。
 開け放たれた屋内は電気が切れているのだろう。真っ暗である。
 「アミル・・・ライトを用意して」
 愛理は左手にライトを持ち、9ミリ自動拳銃を持つ右手首の下に左手首を置くように構える。アミルは頭にライトを装着した。
 「あんたはすぐにライトが消せないから、襲われたらすぐに私の後ろに逃げなさい」
 愛理はそう言うと、屋内へと歩み出した。
 名古屋城の天守は戦中に焼け落ち、戦後にコンクリート造りで再建された。その為、屋内は展示施設となっており、名古屋城に関する資料などが置かれている。
 「思ったよりも荒れてないわね。まぁ、生活するにも盗むにしても価値は無いからか」
 愛理は冷静に屋内をライトで照らしながら、進む。隠れる場所は少ないので、警戒を怠らなければ、いきなり襲われる事は無さそうだった。
 上の階に上がるにはエレベーターが存在するが、さすがに電気は通っていない。彼女達は非常階段を上がり始める。
 幾つかに分かれている展示室を確認しながら、7階の展望室に上がると、愛理はいきなり発砲した。同時に矢が飛ぶ。それは愛理の場所とはまったく違う場所に飛んでいた。
 「止めろ!お前と話をしに来た!こっちはお前より力がある。これ以上やるなら、殺すぞ」
 愛理は脅しを掛ける。その為の発砲でもあったのだろう。
 僅かな間のあと、声が聞こえた。
 「お前達は何者だ?ここに何をしに来た?」
 「言っただろ?話をしに来た。私は愛理。こっちはお前と同じエルフのアミルだ」
 「エルフだと?」
 声の方にライトを照らしているとそこに人影が現れた。
 「あんたがダークエルフ?」
 「あぁ・・・そうだ。名前はペルティナ」
 「ペルティナね。ちゃんと会話が出来るじゃない」
 「私を何だと思ってるんだ・・・」
 「いや、ダークエルフはそこら辺の魔獣みたいに知能が無いとか聞いたから」
 「失礼な。確かにそんな噂はエルフ族にはあるがね」
 「噂だったんだ」
 「みたいだな。私もダークエルフになって、初めて知ったよ」
 ペルティナは軽く笑って、構えていた弓を降ろした。それを見て、愛理達も銃を降ろす。
 「まともに話が出来るダークエルフで助かった。あんたに聞きたい事があるの」
 「聞きたい事?こんな闇落ちしたエルフにか?」
 「なんで闇落ちしたのかは気になるけど、私が知りたいのはドラゴンについてよ」
 「ドラゴンか・・・そんなのそこら辺を探して回れば、いくらでも居るだろ?」
 ペルティナはつまらなそうに答える。
 「いや、そこら辺に居る奴じゃない。世界樹に関わって、この世界をこんな風にした原因のドラゴンの事」
 「あぁ・・・西の方に居た時に噂は聞いたな。神になろうとしたとかどーとか」
 「神?ドラゴンが?」
 愛理が呆れたように聞き返すと、ペルティナも苦笑いをしながら答える。
 「ドラゴンは魔獣ではあるけど、最も神に近い存在だと言われているのよ」
 「魔獣のくせに?」
 「魔獣は人が悪魔の手先だと考えたから、そう名付けただけ。魔獣は人より神に近い存在よ」
 「それだと、神は悪魔みたいな感じになるけど?」
 「そもそも悪魔が存在しないのよ。単純に魔獣の餌とされた人が勝手に敵意を以って、作り上げた妄想ね」
 「なるほど・・・ちょっと哲学的ね」
 愛理は考え込む。因みにアミルは話についていけてない。
 「話はわかったわ。それで・・・神になりたいドラゴンってのは西・・・大阪に居るんだな?」
 「噂よ。噂。世界樹と同化しようとしたドラゴンが居たって話。興味は無いわ」
 ペルティナはつまらなそうに言い放つ。
 「あんたは興味が無くても、私はこの世界を戻す為にそいつを殺さないといけないってなっててね」
 「使命感強いわね。あんた早死にするわよ?」
 ペルティナに言われて、愛理は彼女を睨み付ける。
 「怖いわね。噂では大阪って言うより、京都?って所に所に世界樹が生えてるらしいわ。多分、そこね」
 愛理は少し考え込む。その間にアミルが興味津々でペルティナに尋ねる。
 「なんで、闇落ちしたの?」
 それを聞かれて、ペルティナは気まずそうな表情になる。
 「闇落ちか・・・エルフ族ではよく言われる奴だな。あんなのは単なる迷信さ。黒い肌になったのは魔獣を狩る際に魔獣の血を浴びるせいさ。魔獣の血には高濃度の魔力があってね。それが肌に影響を与えるみたい。私は魔力焼けって呼んでいるよ」
 それを聞いてアミルが納得したように頷く。
 「まぁ・・・良いわ。それより、あんた、これからどうするの?」
 愛理に尋ねられて、ペルティナは笑う。
 「ダークエルフになっちまったからね。まともにエルフ族の村には戻れないから、こうして、魔獣を狩りながら、人間達と付き合って生活してゆくしかないさ。まぁ、元の世界なら、とっくの昔に野垂れ死んでたかもね」
 「そう・・・じゃあ、一緒に来てくれない?」
 「はぁ?」
 「あんた、なかなか経験値が高そうだし、こっちのエルフより使えそうだから」
 愛理はアミルを指差しながら言う。アミルはショックを受けたようで呆然とした顔で愛理を見る。
 「なるほどね。まぁ、そっちの嬢ちゃんは確かに・・・普通のエルフって感じだからね」
 「ふ、普通のエルフって何ですか!」
 アミルは怒ってそう叫ぶが、ペルティナは笑う。
 「普通のエルフってのは知能ばかり高くて、身体能力が低い連中さ。あんた、まともに弓も剣も振れないだろ?人間の武器を持ってるけど、それだって、反動が強くて、まともに撃てやしない」
 そう言われて、アミルは涙目になる。愛理はペルティナに尋ねる。
 「あんたはなんで、身体能力が高いの?」
 「生まれつきと言えば簡単だけど、元々、他のエルフよりも身体能力は高くてね。そこから日々、鍛えたから、しっかりと筋力が付いて、弓でも剣でも震えるようになっただけ。人間の男と格闘したら負けちゃうだろうけどね」
 「なるほど。個体差って事か。このエルフも鍛えて欲しい」
 「ははは。並のエルフじゃ、いくら鍛えても何にもならないじゃない?」
 「や、やれば出来ますっ!」
 アミルは涙目でそう力むが、やはり二人は笑った。
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