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 皆様がた。召喚や転生など、ファンタジー小説にあるようなこと。信じますか?いや、信じなくても、「あったら面白いのにな~」ぐらい思ったことないですか?私はあります。

 だって人生辛いことが多すぎるんだもん。

 私は、幼い頃親に捨てられ孤児院育ち。高校では彼氏が出来たけど、結局友達に寝取られてしまい、私はフラれてしまった。
 大人になってからも、何度か付き合ったけど結婚までは発達せず、ことごとく後輩に寝取られたり、我が友達に惚れた彼氏に別れを告げられたり…………最悪だったのは、妻子がいるのに私と付き合ってたやつだ。あいつのせいで、私は多額の賠償金と頬に紅葉を作る羽目になったのだから。
 合コンも何回かしたし、婚活パーティーにも行った。見合いもした。でも、結局ダメだった。
 もうここまで来ると、人って開き直るよ。ここまで行っても頑張る人は、めちゃくちゃ神経図太い人だと思うし、勇者だと私は思う。私は諦めるけど。
 私は仕事に力を入れた。いわゆる『仕事が恋人』ってやつだ。それに、私は現実で恋愛できない分、乙女ゲームをプレーしまくった。

 え?寂しい女だなって?いいんだよ。それで。
 私は捨てられ続ける運命なんだと思う。
 親に捨てられ男に捨てられ‥‥
 人生めんどくさくなっちゃったんだもん。

「はぁ。やっと全ルートコンプリート~」

 私が今プレーしているのは、最近ハマったファンタジー乙女ゲーム。『LOVEtheHERO~アイトの光~』。
 なかなか適当な名前だと思う。ファンタジーだから、もちろん『剣と魔法の世界』だ。
 アイトは、『誓い』という意味らしい。だから、ゲーム屋で見た時に少し気になった。
 パッケージの絵もなかなか綺麗だったし、それに主人公がなかなか可愛かった。
 普通の乙女ゲーム主人公は、顔がスチルでなかなか見えない。それは、ゲームをプレーしている人が、主人公になりきった視点にしたいからだと私は考えている。

 でも、このゲームは違った。
 スチルでは主人公の姿が出てきて、まるでアニメを見ている感覚に近く作られている。アニメ好きの私にとってはとても嬉しい作りだった。
 まぁ、そのせいもあってこのゲームは、好き嫌いが極端に別かれた。
 ゲーム内容は、主人公は平民なのに希少な魔法。”他者強化”の持ち主で、世界一の学校に入学することになる。そして、そこで出会う、5人の男の誰かと恋に落ちるという内容だ。
 結構どこにでもありそうなゲームだ。だから、ゲーム内容で好き嫌いはあまり別れなかった。
 では、どこで別れたかというと、ゲームスチルで別れたのだ。
 先程も言った通り、このゲームのスチルは主人公の顔がハッキリ出てくる。そのせいで、主人公になりきりたい人とそのままでも十分な人で別れたのだ。
 私はそのゲームを今しがた、完全コンプリートした。バットエンドもすべてだ。
 なかなかの時間を有したが、主人公の顔がハッキリ出てくる物は少ないので、なかなか楽しめたから良しとする。

「‥‥明日ゲーム屋によって、新しいゲーム探すか」

 私は同時進行できるほど器用じゃない。
 だから、一つづつ買って、一個クリアしたら次という感じにクリアしていく。
 時計を見ると、もう夜の1時を回っていた。明日も仕事がある。私はゲーム機を机に置き、シャワーを浴びに風呂へ向かう。

「あ、明日のご飯の材料買ってないじゃん‥‥コンビニでいいか」

 私は、シャワーを浴びて寝ようとしたところで思い出した。
 今から行くのはめんどくさいが、明日‥‥というか今日の朝、早起きして買いに行くのはもっと面倒だ。

「行くしかないか‥‥……うゎ、さっむ」

 私は寝間着の上からコートを着て、まだまだ寒い外に出た。1月だから、夜は冷えるのは当たり前なのだが、今日は風も強かったこともあり、寒さ倍増だ。

 近くのコンビニにつくと同時に、風が止んだので、心の中でもっと早く止めよと悪態をつくが、天候を変更する力など持っているわけないので、ただの愚痴だ。
 いつもなら不良の1人2人はいるはずなのだが、何故か今日はいなかった。

「珍し……‥‥平和な日もあるんだな~」

 そんなことを言いながら、コンビニ弁当を持ってレジへと向かう。

「‥‥あの。いつもこのコンビニ利用されてますよね?家が近くなんですか?」

 声をかけてきたのは、レジにいた店員さんだった。多分大学生ぐらいの歳だと思う。髪がド金髪だ。
 はっきり言って、こういうド派手な髪型の人は苦手なのだが、声をかけられたからには反応しない訳にはいかない。

「‥‥‥まぁ、そうですよ」

 適当に返事を返し、弁当のお金を出す。
 青年は、直ぐにそのお金をレジに入れ、何やら出てきたレシートの裏に、文字をペンで書き始めた。

「あの!これ!俺の電話番号です!よかったら‥‥‥連絡ください!」
「‥‥‥」

 私は絶句した。
 髪がド金髪だから不良だと思っていたが、顔を赤くしてそう言ってくる姿は、とてもウブな青年だった。
 それを見た瞬間、私は孤児院にいた時に恋をした、初恋の男の子を思い出した。
 あの子は黒髪黒目で、目の前の青年とは全く似ても似つかないのだが、真っ赤に顔を染めてレシートを渡してくる青年を見てなぜ思い出したのかは分からない。

「‥‥大人をあんまりからかわない方がいいよ?ま、気が向いたら電話するよ。ありがとう」

 私はそう言って、電話番号の書いた紙を受け取り、暖かいコンビニの中から出た。
 後ろから「待ってます!」という声が聞こえて、私の口角が自然と上がるのがわかった。

 人生初の告白だった。

 自慢ではないが、いつも告白は私からだったからだ。私は自分から告白して付き合ったことしかない。だから、浮かれていた。
 不良ぽくっても、告白紛いのことをされて浮かれていた。

「‥‥明日は赤飯かな?」

 足が軽く、このままスキップでもしだしそうな私の体だが、そんなことをすると、三十路おばさんがスキップという、気持ち悪い絵図になるのは理解していたので、私はスキップにならない程度に、軽い足取りで家に帰る。


  キッキーーーー!!!
 

「え?」

 急に車のタイヤが滑る音がしたと思うと、大きめのトラックが私に向かって突っ込んできた。
 トラックのライトが眩しくて、私は目を隠すことしかできず、その場から動けなかった。

 あ、これ死んだな。

 直感で私はそう思った。でも、衝撃がなかなか来ないままドーンという音がして、目を開けたら、トラックは私からそれて電柱に突っ込んでいた。

「た、助かった?」

 私はその場に腰を抜かしてしまった。
 その瞬間だった。

「キャ!」

 また私の目に眩しい光が入ってきた。今度は前じゃなくて下。つまりは地面からだった。
 光が強すぎて、私は目を開けられなくて周りが見えなかった。
 だけど、かすかに聞こえた気がした。コンビニで、私に電話番号を渡してきた店員の声が‥‥聞こえた気がした。

 あ、そう言えば自己紹介してなかったね?
 私の名前は『神星  神奈かみぼし  かんな』。
 神が2回もつく名前なのに、神に見放されているらしい女です。
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