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文化祭三日目。
今日は生徒及び学校関係者しかこの学校にいないので、店番もあまりしないでぶらぶら歩くことが出来る。
クラスメイトは担当している客が帰ったら、すぐに着替えてどこかへ遊びに行っている。かく言う俺も、今担当している客が帰ったら終わりだ。
「だから‥‥‥早く帰ってくれませんかねー白蓮さん」
「いーやーだ♡お、これ美味しーな!」
俺の目の前でハムスターのように頬をふくらませた白蓮は、頬を手で押えて主人公らしい可愛い表情を浮かべている。
白蓮はいつ聞いたのか神羅から俺の当番時間を聞いていたらしく、俺の当番時間は全て白蓮に費やされてしまった。時々誰かが俺を指名しそうな雰囲気になったりしたのだが、なぜかその客は顔を青くして違う人を指名していたので俺はずっと白蓮を見つめているだけの時間だった。
「ほら。またついてんぞ」
「え、マジ?どこどこ」
「はぁー‥‥‥ほら。取れたぞ」
鼻にクッキーの食べカスを取ってやると、白蓮はどこかマヌケな顔で笑っている。その表情はやはり主人公だなと思う。
というか、俺は今何をした?‥‥‥食べカスを取ってやる?
俺は今しがたの行動を思い返す。主人公の顔についた食べカスを取るなんて、まるでゲーム内のイベントではないか。
「どうした?大丈夫か?稜驊?」
「(まさか‥‥な)なんでもねーよ」
一瞬浮かんだ『白蓮が俺を攻略している説』は、俺が攻略対象では無いという理由で消えていった。
数分経つと白蓮も食べ終わり会計へと向かった。
「はぁーつっかれたー」
もう当番の時間も終わったので、俺は裏にまわって着替える。
メイド服を脱いで制服を着るとやはり動きやすく安心することが出来る。
「休憩行ってきまーす」
厨房に一言言ってから俺は教室を出た。
外に出ると白蓮が壁に寄りかかっていた。その周りには三人組の女子がいて何やら騒いでいる。
白蓮は笑っているが、その笑顔がどうも胡散臭く見えた俺はその場から去ることを選んだ。
「‥‥‥‥」
「あ!稜驊!遅いぞー!」
俺が白蓮がいる方向とは反対の方向に体を向けた瞬間、なんの超能力なのか白蓮に気づかれてしまった。近づいてきた白蓮の笑顔は先程見た笑顔とは違い、いつもの元気な明るい笑顔だった。その事に少しほっとしたのは言うまでもない。
「稜驊の事待ってたんだぜ?なかなか出てこないから迎えに行こうかとも思ってたところなんだよ」
「俺はお前と一緒に回る約束なんてしてないんだが?」
「おう!だから待ってた!」
意味がわからん。なにが「だから待ってた」だ。
俺は従兄弟のよくわからないか行動にため息をつきながらも、先程まで一緒にいた女子の方を見た。
「え、何あの人‥‥ものすごくタイプなんですけど」
「さっきまでと雰囲気違くない?え、ギャップ萌え!」
「あの二人の関係って何?めっちゃ気になる!」
「え、逆ナン成功じゃん!しかも美形の友達つき!」
どうやら俺の事も標的にした女豹達は、コソコソと話しながら計画を立て始めている。
「おい白蓮。あの人達はいいのか?」
「ん?あぁ。なんか迷子だから送って欲しいとか言われたんだった‥‥‥まあ、大丈夫そうだしいいんじゃね?」
何やら地図を広げて相談している女豹達を見ながら言ったので、白蓮はおそらく問題ないと思ったのだろう。
実際は問題大ありなんだけどな。
俺は一瞬女豹達を見てから、女豹達が相談しあっている合間にその場から離れるため歩き始めた。
「‥‥‥俺はお前と回る気なんてないぞ?」
「え!?」
当たり前のように後ろをついてくる白蓮に一緒に回る気がないことを伝えると、白蓮は目を見開き何故だとも言いたそうにこちらを見る。
「当たり前だろ?俺はお前と約束なんてしてないんだから」
「な、なら今する!ほら!小指出して!指切りげんまん指切った!ほら!約束した!一緒に回ろうぜ!」
「いや、それ無理やりだし嫌だから」
慌てて指切りげんまんをする白蓮は、見てて面白いが、どこかちょっと怖かったりする。
「回りたいなら一人で回れよ」
「そ、そんな~」
「お前なら一緒に回ってくれる友達ぐらいいるだろ」
「‥‥‥稜驊がいいんだよ」
項垂れる姿はまるで犬のよ‥‥‥コホン。いかんいかん。流されるところだった。
「拗ねてもダメだ!」
「なら怒る!稜驊!約束しただろ!なんで約束破るんだよ!」
「怒ってもダメだ!てか、約束はさっき無理やりしたやつだろ!?あれは約束とは言わない!」
「なら泣く!稜驊~!お願いだよ~!」
「泣いてもダメだ!てか涙出てない!それは泣いてない!どっちらかと言うと『鳴く』だ!」
「じゃあどうすればいいんだよ!」
「普通に誘えばいいだろ!?そしたら一緒にいくらでも回ってやるよ!‥‥‥あ」
「‥‥言ったな?」
ニヤッと笑った白蓮に俺はしまったと天を仰いだ。
俺の腰あたりに抱きついて喚き始めた白蓮がうざくて思わず言った言葉だったが、今更取り消すことも出来ない。
「稜驊!一緒に回ろーぜ!」
「‥‥‥‥はあー‥‥了解」
「やったー!」
俺は白蓮から差し出された手を取った。これは、俺が俺の発言に責任を持っただけであって、決して白蓮の笑顔に負けた訳では無い。
「‥‥‥で?どこ行くんだ?」
もう抵抗する意味もなく、誘ってきた方は白蓮だからと行きたい所を聞いてみると、それまで喜んでいた白蓮の動きが止まった。
おい。まさか‥‥‥‥。
「か、考えてなかった‥‥てへぺろ?」
「お~ま~え~な~!」
「い、痛い痛い!ギブ!ギブ~!」
全く可愛くないテヘペロを見た後、俺はすぐに白蓮のこめかみに中指でゴリゴリとしてやる。
涙目になって止めてと言ってくる白蓮を無視し、気が済むまでゴリゴリとした後は、俺は白蓮をつれてその後の文化祭を回った。
今日は生徒及び学校関係者しかこの学校にいないので、店番もあまりしないでぶらぶら歩くことが出来る。
クラスメイトは担当している客が帰ったら、すぐに着替えてどこかへ遊びに行っている。かく言う俺も、今担当している客が帰ったら終わりだ。
「だから‥‥‥早く帰ってくれませんかねー白蓮さん」
「いーやーだ♡お、これ美味しーな!」
俺の目の前でハムスターのように頬をふくらませた白蓮は、頬を手で押えて主人公らしい可愛い表情を浮かべている。
白蓮はいつ聞いたのか神羅から俺の当番時間を聞いていたらしく、俺の当番時間は全て白蓮に費やされてしまった。時々誰かが俺を指名しそうな雰囲気になったりしたのだが、なぜかその客は顔を青くして違う人を指名していたので俺はずっと白蓮を見つめているだけの時間だった。
「ほら。またついてんぞ」
「え、マジ?どこどこ」
「はぁー‥‥‥ほら。取れたぞ」
鼻にクッキーの食べカスを取ってやると、白蓮はどこかマヌケな顔で笑っている。その表情はやはり主人公だなと思う。
というか、俺は今何をした?‥‥‥食べカスを取ってやる?
俺は今しがたの行動を思い返す。主人公の顔についた食べカスを取るなんて、まるでゲーム内のイベントではないか。
「どうした?大丈夫か?稜驊?」
「(まさか‥‥な)なんでもねーよ」
一瞬浮かんだ『白蓮が俺を攻略している説』は、俺が攻略対象では無いという理由で消えていった。
数分経つと白蓮も食べ終わり会計へと向かった。
「はぁーつっかれたー」
もう当番の時間も終わったので、俺は裏にまわって着替える。
メイド服を脱いで制服を着るとやはり動きやすく安心することが出来る。
「休憩行ってきまーす」
厨房に一言言ってから俺は教室を出た。
外に出ると白蓮が壁に寄りかかっていた。その周りには三人組の女子がいて何やら騒いでいる。
白蓮は笑っているが、その笑顔がどうも胡散臭く見えた俺はその場から去ることを選んだ。
「‥‥‥‥」
「あ!稜驊!遅いぞー!」
俺が白蓮がいる方向とは反対の方向に体を向けた瞬間、なんの超能力なのか白蓮に気づかれてしまった。近づいてきた白蓮の笑顔は先程見た笑顔とは違い、いつもの元気な明るい笑顔だった。その事に少しほっとしたのは言うまでもない。
「稜驊の事待ってたんだぜ?なかなか出てこないから迎えに行こうかとも思ってたところなんだよ」
「俺はお前と一緒に回る約束なんてしてないんだが?」
「おう!だから待ってた!」
意味がわからん。なにが「だから待ってた」だ。
俺は従兄弟のよくわからないか行動にため息をつきながらも、先程まで一緒にいた女子の方を見た。
「え、何あの人‥‥ものすごくタイプなんですけど」
「さっきまでと雰囲気違くない?え、ギャップ萌え!」
「あの二人の関係って何?めっちゃ気になる!」
「え、逆ナン成功じゃん!しかも美形の友達つき!」
どうやら俺の事も標的にした女豹達は、コソコソと話しながら計画を立て始めている。
「おい白蓮。あの人達はいいのか?」
「ん?あぁ。なんか迷子だから送って欲しいとか言われたんだった‥‥‥まあ、大丈夫そうだしいいんじゃね?」
何やら地図を広げて相談している女豹達を見ながら言ったので、白蓮はおそらく問題ないと思ったのだろう。
実際は問題大ありなんだけどな。
俺は一瞬女豹達を見てから、女豹達が相談しあっている合間にその場から離れるため歩き始めた。
「‥‥‥俺はお前と回る気なんてないぞ?」
「え!?」
当たり前のように後ろをついてくる白蓮に一緒に回る気がないことを伝えると、白蓮は目を見開き何故だとも言いたそうにこちらを見る。
「当たり前だろ?俺はお前と約束なんてしてないんだから」
「な、なら今する!ほら!小指出して!指切りげんまん指切った!ほら!約束した!一緒に回ろうぜ!」
「いや、それ無理やりだし嫌だから」
慌てて指切りげんまんをする白蓮は、見てて面白いが、どこかちょっと怖かったりする。
「回りたいなら一人で回れよ」
「そ、そんな~」
「お前なら一緒に回ってくれる友達ぐらいいるだろ」
「‥‥‥稜驊がいいんだよ」
項垂れる姿はまるで犬のよ‥‥‥コホン。いかんいかん。流されるところだった。
「拗ねてもダメだ!」
「なら怒る!稜驊!約束しただろ!なんで約束破るんだよ!」
「怒ってもダメだ!てか、約束はさっき無理やりしたやつだろ!?あれは約束とは言わない!」
「なら泣く!稜驊~!お願いだよ~!」
「泣いてもダメだ!てか涙出てない!それは泣いてない!どっちらかと言うと『鳴く』だ!」
「じゃあどうすればいいんだよ!」
「普通に誘えばいいだろ!?そしたら一緒にいくらでも回ってやるよ!‥‥‥あ」
「‥‥言ったな?」
ニヤッと笑った白蓮に俺はしまったと天を仰いだ。
俺の腰あたりに抱きついて喚き始めた白蓮がうざくて思わず言った言葉だったが、今更取り消すことも出来ない。
「稜驊!一緒に回ろーぜ!」
「‥‥‥‥はあー‥‥了解」
「やったー!」
俺は白蓮から差し出された手を取った。これは、俺が俺の発言に責任を持っただけであって、決して白蓮の笑顔に負けた訳では無い。
「‥‥‥で?どこ行くんだ?」
もう抵抗する意味もなく、誘ってきた方は白蓮だからと行きたい所を聞いてみると、それまで喜んでいた白蓮の動きが止まった。
おい。まさか‥‥‥‥。
「か、考えてなかった‥‥てへぺろ?」
「お~ま~え~な~!」
「い、痛い痛い!ギブ!ギブ~!」
全く可愛くないテヘペロを見た後、俺はすぐに白蓮のこめかみに中指でゴリゴリとしてやる。
涙目になって止めてと言ってくる白蓮を無視し、気が済むまでゴリゴリとした後は、俺は白蓮をつれてその後の文化祭を回った。
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