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「お待たせ致しました。ご注文の【メイドパフェ】でございます」
「おぉ!すっごーい!本格的なパフェだー!」

 俺はのパフェをテーブルに運んだ。
 テーブルには、運ばれてきたパフェの写真を撮り出す七夏弥。

「うっ‥‥これまた甘そうなパフェですね」

 甘いのが苦手なら注文しなければいいのに、注文したパフェを前にしかめっ面をする虎國。

「‥‥‥美味そうだ」

 パフェを前に、キラキラと目を輝かせているように見える鷹雅。
 この三人がいた。

「それでは、【メイドパフェ】の説明をさせていただきます」
「は~い!」

 説明とは、パフェになぜ【】がつくのかと関係している。
 メニューには、【執事パフェ】【メイドケーキ】【執事ケーキ】など、様々なものがあるが、そのどれもが、オプションをつけることが出来る。
 オプション内容は、写真だったり、食べさせてくれたり、好きなセリフを言ってくれるなどのものだが、これが結構キツかったりする。

「はい。あ~ん」
「あ~ん」
「はは。お嬢様?お口にクリームが」
「キャア////」

 ‥‥‥一部の奴は楽しんでいるが、主に女性だけだと言っておこうか。
 今回三人はそれぞれ違うオプションを注文した。

「では、どなたからオプションを始めますか?」
「はいは~い!僕!僕が一番最初~!」
「‥‥では、失礼します」

 七夏弥は世にゆう「あーん」のオプションだ。

「猫鳴様。どうぞ」
「え~?『あーん』って言ってくれないの~?それに声が短調~。あと、僕の呼び方は『七夏弥様』ね?」
「‥‥‥」

 ふざけんな。望んでやってる事じゃないのに、なんでぶりっ子しなきゃいけないんだ。
 七夏弥にパフェのアイスを乗せたスプーンを差し出すが、七夏弥は頑として食べようとはしない。その顔はニコニコと笑っている。
 こいつ‥‥‥遊んでやがるな?
 だんだんイライラしてくるのを感じながら、俺はため息をついた。

「はぁー‥‥‥七夏弥様‥‥あーん」
「あ~ん!」

 なんとか食べてもらえたので、俺の七夏弥へのミッションは終了した。

「それでは、残りはご自分で」
「え~?」
「最初にご説明したとおり、オプションは一回だけです」
「ブー」

 ふくれっ面になる七夏弥は放っておいて、俺は残りの二人を見た。

「次は俺だ」

 次のオプションは鷹雅だった。

「それでは、失礼します」

 俺は、パフェに刺さっているポッキーを鷹雅の口にくわえさせる。
 鷹雅が注文したオプションは、ポッキーゲームだった。
 マジ誰だよ。こんなオプションメニューに書いた奴!

「ムフフ~」

 犯人はすぐにわかった。
 先程まで女性の相手をしていた神羅だ。こちらを楽しそうな顔して見ている。

「‥‥それでは、いきます」

 一瞬だが神羅を睨んでから、俺はゆっくりだかポッキーを口にした。

「「‥‥‥」」

 無言で近づいてくる顔はとても綺麗で、鼻血を吹き出したら終わりだななんて考える。
 というか、なぜ鷹雅はポッキーを折らないんだ?
 他の客は、近づいてくる顔に我慢出来ず途中で折ってしまうのだが、鷹雅は全く折る気配がない。というか、逆に自分から食べ始めたんだが!?

「ちょ、鷹雅せぅ!?」
「‥‥‥」

 我慢できなくなり、俺から顔を背けようとすると、鷹雅に頭をがったりと固定されてしまった。
 クラスの中から黄色い悲鳴が上がった気がしたが、俺はそれどころでは無い。
 男とキスなんかしたくないんだが!?本当に鷹雅どうしたんだよ!お前の相手は白蓮のはずだろ!?

「そこまでです」
「あ」
「‥‥‥虎國」

 どうやって避けようかと混乱する頭で考えていると、俺と鷹雅の間に手刀が入った。
 手刀を入れたのは、額に青筋を浮かべた虎國だった。

「鷹雅。やりすぎです。ここをどこだと思っているんですか」
「‥‥そうだな。すまなかった」
「はぁー。さぁ、稜驊君。次は私ですよ?」
「あ、はい」

 背後に黒いものが見える虎國に手を引かれ、俺達は大きなピンクハートがある場所へと移動する。

「それでは写真。撮りましょうか」
「はい」

 虎國が注文したオプションは写真だ。だからこの写真ブースに来たのだが‥‥‥‥周りの目線が痛い。

「‥‥では、ポーズはどうしますか?」
「そうですね‥‥‥これはどうですか?」
「?うわぁ!」

 俺の足は一瞬のうちに地面から離れた。
 落ちないようにと慌てて虎國の首に腕を回すと、先程の鷹雅と同じぐらいの距離まで顔が近づいた。

「っ」
「あ、すみません!」
「い、いえ。大丈夫です」

 慌てて顔を離すが、虎國にはそっぽを向かれてしまった。どうやら怒らせてしまったようだ。

「これで写真撮るんですか?」
「はい‥‥嫌ですか?」
「あ、いえ‥‥‥大丈夫デス」

 俺を見た虎國の顔はとてもいい笑顔で、それが怖くて「違うポーズにしてくれ」なんてとても言えなかった。
 近くにいた店員生徒に写真を撮ってもらい、満足そうに虎國は俺を降ろしてくれた。

「それでは、俺はここで」
「はい。頑張ってくださいね?」
「応援してるよん♪」
「‥‥頑張れよ」

 三人それぞれから応援の言葉を貰い、俺は裏へと移動した。

「ねぇ!あの三人って生徒会だよね!知り合いだったの!?」
「あ、うん。そんな感じ」
「いつ!?どこで知り合ったの!?そういえば、保健室の鳥林先生と数学教師の巳蛇野先生とも親しそうだったよね!」
「え!何それ!稜驊君!どういうこと!?」
「何々?どうしたの?」
「「稜驊君の恋愛事情よ!それも男!」」
「「「「「え!聞きたい!」」」」」
「何!?いつの間に増えた!?仕事はどうした仕事は!」

 いつの間にか増えた女子生徒に、俺は頭を抱えつつどう説明するか考えた。
 家に送って貰ったこと‥‥これは話せない。かと言って、虐められた日に会ったとも言い難い。

「‥‥‥‥なりゆきで?」
「「「「「「もっと詳しく!」」」」」
「あーもう!この話はやめだやめ!さっさと仕事に戻れ!」

 渋る女子を散らすことが出来たのは、その数十分後だった。
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