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救いの手の次は

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「何をやってるんですか?スィーニュ様」

 とても落ち着いた声で登場したのは、唯一この場をどうにか出来そうな人物。その名もルルン!
 スィーニュは守護獣だから、失礼な言葉は使えないと、ルルンはスィーニュに対して敬語で接している。

「ル、ルルン~!助けて~」

 私は掴まれている腕が疲れてきた頃で、今すぐ腕を下ろしたい。なのに、スィーニュとアミくんはガッチリと私の腕を掴んでいて下ろせない。
 私は涙目になってルルンに救いを求める。

「はぁー。スィーニュ様。今すぐにクラージョさんを離してください」
『あ、ああ』

 スィーニュもルルンにはさからえず、私の腕を離してくれた。ついでにルルンの威圧に負けたアミくんも、私の腕を離して数歩後に下がった。

「ルルン~!助かったよ!もう腕が限界まで達しそうだったからね~」
「そう。それはよかったわ」

 ルルンは無表情で答える。
 うむ。怒ってないみたいでよかった。

「あ、アミくん!この前頼んだブルーウルフを取りに来たんだ。もう受け取れる?」
「あ、はい!今取ってきます!」

 アミくんはすぐに作業場の方に引っ込んでいった。
 やっと本来の目的を伝えることが出来て、私ははほっとした。そして、次にスィーニュを真っ直ぐに見る。

「スィーニュ!なんで呼んでもないのに出てきたの!私すっごく驚いたんですけど?」

 少し声のトーンを下げて怖めで言うと、スィーニュはすぐにうろたえ始めた。

『いや、その‥‥お前の!その‥声‥‥がー‥‥いや違うぞ!?盗み聞きしてたんじゃなくってな!?』
「「‥‥‥‥‥‥‥ぷっ」」
『え?』

 スィーニュのあまりのうろたえ様に、いつも無表情でいるルルンすら笑いだした。

「あはははは!スィーニュもう最高!」
「ふふふふ。守護獣様は、面白いお方ですね」

 私はスィーニュのうろたえようと、ルルンの笑顔が久々に見れたことで、先程までの事は水に流すことにした。

「もういいよ、スィーニュ。助けようとしてくれてありがとうね」
『!!うむ!何かあれば俺を呼ぶんだぞ!』

 そう言い残してスィーニュは消えていった。
 多分守護界なる所に帰っていたのだろう。

「ハァ、ハァ‥っ、クラージョさーん!持ってきましたよ!」

 スィーニュが帰ったナイスタイミングで、アミくんが解体し終わっているブルーウルフを持ってきてくれた。
 私は早速解体の確認にかかる。

 解体された素材は、皮の場合解体場ではなく、武器屋の方が高く買い取ってくれるものがある。だから、解体された素材は、一旦全部冒険者に渡して、冒険者がどれを売りたいかなど考えてから、換金の方へ移る。
 今回の素材のブルーウルフは、牙は結構な値段になるが、毛皮わさほど強いというわけではない。だが、ブルーウルフ自体が魔法を使えるため、多少なりともエンチャントがしやすい傾向にある。なので、毛皮の強度は『強化』のエンチャントでカバーして、防具として使っている冒険者もいる。

 ま、私は今、別に何を売るかで悩んでるわけではないけどね。

「‥‥うん!ベアーさんと全く同じとまではいかないけど、結構な腕になってきたね!」
「え!本当ですか!やったー!」

 私が見ていたのは、アミくんが解体した素材がベアーさんと比べてどのような完成度だったかだ。
 今回は残念ながら、ベアーさんに届かずあともう一歩というところだったが、アミくんからするとこの言葉は、自分が成長出来たことを確かめられた、最高の言葉だったらしい。

「バカ野郎!そんなことで喜んでてどうする!」
「っ~!いってーよ親父!少しはいいだろ!?もう少し成長した息子を褒めても!」
「ふん!お前はで解体練習しろ!」

 そう言って、ベアーさんは奥へと引っ込んで行った。
 アミくんは呆然としていたが、すぐに嬉しさに溢れた顔をした。
 私は「おめでとう」と一言だけアミくんに言って、いつも通りを換金する。
 私は、解体されたブルーウルフの素材と別に、ブルーウルフから取れた魔核を出す。

「あ、ああ~。俺まだ魔核の事は親父から習ってないんだ。ごめんな?今親父呼ぶから」

 私が魔核を出した瞬間にしょんぼりと肩を落とすアミくん。
 ちょっと悪いことしたかな?
 アミくんがベアーさんを呼びに行っている間に、私はルルンに聞くことがあるのを思い出した。

「ルルン。クエストのほうどうだった?」

 ルルンが確認に行ったクエストの確認だ。
 私が話を切り出した瞬間、ルルンは一瞬だけ肩をビクつかせた。
 ‥‥‥これは何かあるな。
 案の定、ルルンは周りを警戒しだし、キョロキョロと周りを見て、私の耳に口を近ずけて小声で話してきた。

「それが、クエストの方は大丈夫だったのですが、ディーオ様宛に城の方からの方がきていました」ボソボソ
「え」

 指名クエスト。
 それは、冒険者ギルドに依頼する時に、中途半端な冒険者ではダメだ!という依頼人が、信用出来る冒険者を指名したクエストだ。
 冒険者は指名クエストを断ることは出来ない。
 もちろん、既にほかにクエストをしていたり、やむにやまれぬ事情があるならば断れる。
 だが、私は今しがたクエストを終えたところだし、何も断ること事情がない。
 さらにクエストだ。断ることはなお難しくなるだろう。

 私はまだまだ駆け出しなので、そんなに知り合いがいない。だから、指名クエストなんておかしい。
 私はルルンから離れて、真っ直ぐに見つめる。

「それ本当なの?」
「‥‥はい。残念ながら」

 ルルンの顔は相変わらず無表情だ。
 ‥‥まじなのか。

「‥‥‥‥面倒ごとは嫌だなー」

 私は小さく呟いた。

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