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本編
19
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「さぁ。この中から好きな龍を選べ」
私が連れてこられたのは、王宮方面に生活場から少し離れた場所だった。
そこには龍やドラコンなどが多くいて、色も様々な色がいた。大きさはすべて少し大きい馬サイズだ。
現実で見ると大きいものだと思ってたけど、それほど大きくもなかったんだ。
そう思いつつ見ていると、サレスが龍たちに向けて指笛を吹いた。音がならなかったので、なにか特殊な吹き方をしたのだろう。
「‥‥何をしたんですか?」
「ん?ああ。急に選べなんて言われても困るだろ?だから俺の龍を見て、基準を覚えてもらおうと思ってな‥‥来たぞ」
そう言ってサレスが王宮の方を指さしたので、そちらに目を向けると、1匹の赤い龍がこちらに向かって来ていた。
遠目からでも分かる大きさなので、ここにいる龍よりも遥かに大きいのがわかる。
あきらかにこちらに向かってきていたので、私はサレスの後ろに隠れた。
そのすぐ後に、土煙とともに強烈な風が私達を襲ったが、私はサレスの後ろにいたから別に大丈夫だった。
「‥‥お前は相変わらずだな」
『しょうがなかろう。ワシの体だ。好きなようにして何が悪い』
重みがあるのに耳にすんなり入る不思議な声が、私の耳に届いた。
私は、そ~っとサレスの後ろから顔を出した。
『やぁ。かわいい‥‥‥‥子や』
‥‥‥オオキイデス。
瞳も体も赤く輝く龍。鬣は白く、それもまた体の赤を色鮮やかにしているように見えた。
一瞬驚いたように目を開いて、間を開けて『子や』と言ったことに、私は安堵した。
どうやら、この龍は私が女なことに気づいているらしい。そして、何故ここにいるかも察してくれたらしい。察しのいい龍で良かった。
『それで?今日はどうした』
「今日は、ここにいる奴に合う龍かドラゴンを探して欲しいんだ。別に本機では無いから、そこまで真剣じゃなくていい。頼む」
『‥‥承知した』
龍がそう言ったかと思うと、龍は放牧場の中に入ってそのまた奥の方に見える森の中へと入って行った。
ん?あれ?
「サレス団長。なんであの龍来た時みたいに飛んで行かないんですか?」
放牧場の中に入る時も入った後も、サレスの龍は柵の出入口から入っていた。決して飛んで入ってはいない。
先程見た飛ぶ速度で飛んで探した方が早いのに。と、私は思った。
「ん?ああ。それはこの放牧場の柵の内側は、龍が飛べないように魔法をかけているんだ。出入はここにある出入口を入れて4つの出入口からしか、出入口出来ない使用になっている」
「へぇー」
私は興味が湧いて柵に近づいてみた。
柵は特に頑丈そうな木を使ってみる様子ではなかった。それを見て、柵にも何かしらの強化魔法がついていることが伺えた。
数分してから、サレスの龍が戻ってきた。
『遅くなった。すまん』
「いや、大丈夫だ。それで?いいのはいたか?」
サレスの問に、龍は少し体をズラして、後ろにいた龍とドラゴンを見せてくれた。
「‥‥‥」
その二頭の龍とドラゴンを見た瞬間、サレスは固まってしまった。
私は意味がわからず首をかしげたが、早くあの二頭に近づいて間近で見たいという気持ちが急いだ。だが、許可なく近づくのはダメな気がしたので、許可がほしくってソワソワした。
『ほれ。もっと近くで見らんとどっちがいいか決めれんぞ?』
そんな中、サレスの龍から許しが出たので、私は急いで柵の中に入り、まずは龍の方から見始めた。
龍は私が近づくと、私が見やすいようになのか頭を下げてくれた。それにはどことなく気品が感じられた。
色は気持ち良い空のような青で、足元に近づくにつれ、綺麗な夕日のような色になっている。鬣は、綺麗な白だった。瞳もなんとも言えない不思議な色をしていて、見ていてホッと息をついた。
大きさはサレスよりデカいが、サレスの龍よりは低いかった。
頭についた二つの角は、周りにいる龍よりも長く太かった。だが、何となく掴んでみると、私の手に馴染んで、少し冷たくって気持ちよかった。
一通り見て、私は龍から離れドラゴンの方へと近づいた。
ドラゴンは私が近づくと、龍のように頭を下げず足を曲げて伏せの状態になってくれた。その状態で、どことなく胸を張っているような状態だった。
色は白と言うよりも銀と言った方がしっくりくる色をしており、翼の色は外側は白。内側は赤だった。瞳は赤くルビーの様に輝いていた。
大きさも先程の龍と同じぐらいだった。
こちらにも角が二つついたが、先程の龍とは違い、短く人一人が掴めるぐらいしかなかった。掴んでみようとするが、つま先立ちになっても私の身長では掴めなかった。それに気づいたドラゴンが、「しょうがないな」と言うような顔をして、頭を下げてくれたので、何とか掴めた。やはりこちらもしっかりと私の手に馴染んだ。
一通り見て私は二頭から離れ、見比べる。
別に私は龍やドラゴンの専門家ではないし、生まれて初めて本物の龍やドラゴンを見た。この二頭のどちらがいいかなんて分からない。
『どうだ?決まったか?』
「‥‥‥正直言って分かりません」
上から話しかけてきたサレスの龍に、私は正直に話した。
「俺は人生で初めて龍とドラゴンを見ました。そんな俺の意見でいいのであれば、聞いて貰えますか?」
私の問に、サレスの龍は頷いてくれた。
「俺のようなど素人にもわかるほど、この二頭はその辺にいる他の龍やドラゴンとは違い、とても立派でかっこよく感じます。それに、どことなく雰囲気も違うように感じます。
二頭とも素晴らしかったです。角に触った時も、手に馴染む。というより、手が角の一部になったように感じるぐらい、角が手に馴染見ました。
正直言って、二頭とも選びたくなりました。‥‥‥‥でも、俺は一頭を選ばなければなりません。それはどうも難しすぎる」
『ふむ。サレスよ』
「‥‥‥‥あ、な、なんだ」
サレスがやっと回復したようで、龍の問いかけに応えた。
『騎士の規則には、一人の騎士につき龍かドラゴン。どちらか一頭しか相棒に出来んのか?』
‥‥‥‥は?
「いや、そんな事は無い。そこら辺は特に決まっていないからな‥‥‥だが」
『ならば決定じゃ!おい!そこの子や♪』
「は、はい!」
急に話しかけられ、思わず私は気おつけをしてしまう。どことなく、サレスの龍の声が嬉しそうだ。
『どうやら騎士の規則では、相棒の数は決められていないらしい。そこでじゃ!二頭共お主の相棒にしてしまうのはどうじゃ?』
「「な!」」
見事に私とサレスの声は被った。
私からしたら願ってもない話だが、それでいいのだろうか。
「ま、待て!そんな前例聞いたことがない!それに昔お前は言っていただろ!龍とドラゴンは同じ相棒を選ぶことはない!と!」
『ああ。確かに言ったな。だが、それは前例がないのもあるが、我らに伝わるただの言い伝えじゃ』
「それでも、だ!前例がないのは人間側では大問題なんだぞ!?」
『そんなの今回が例となればよかろう。前例など、壊すためにあるのじゃよ。昔ワシのお爺さんのそのまたお爺さんのそれまたお爺さんの友達の知り合いのお爺さんの知り合いの‥‥‥偉い人が言ってったぞ?』
「それはただの他人だ!しかも人ではないから偉い龍だろ!というか、本機ではないと言っただろ!」
『そうじゃったかの~?この頃物忘れが酷くてのー』
「嘘をつけ!お前龍の中でも珍しい『二脳』だろ!龍生の3分の2生きてないと言っていたお前の脳が物忘れするはずがないだろ!」
『そー言われてものー』
目の前で龍とサレスのボケとツッコミが炸裂する。
‥‥‥え、結局何?私、この二頭貰っていいの?
私は混乱して、ボーッと突っ立っているだけになってしまった。
『はー。そんなに言うんなら、本龍達に聞いたらよかろう。ほら。そこの子らよ』
「え、あ、はい!」
この龍は急に話しかけてくるから驚く。
『お主らはどうじゃ?一緒にいたいか?』
言われずもがな、私はYESだ。だけど、この二頭には無理についてきて欲しいとも感じない。
「‥‥‥はい」
私は正直にそう返事をした。
『お主らは?』
龍とドラゴンは、その問いに首を傾げてしまった。
やはり、私にはついてきてくれないらしい。
『分かっておらぬのか。若いの~。まぁ、良い。手を貸してやるわい』
そう言うと、サレスの龍は二頭に向かい合えるようにか、だんだん体が小さくなり、しまいには連れてこられた二頭と同じ大きさになった。
『ふむ。この大きさになるのも久々じゃな‥‥‥それでは、お主ら。今から言うことを想像してみよ。いくぞ?
もし、お主らがこの人間について行かなかったとする』
そう言って、サレスの龍は私を今日に前足の爪で指さした。
『そうすると、この人間はお主ら以外の龍かドラゴンの背に乗り、この大空を自由に飛ぶんじゃ‥‥‥どうじゃ?』
サレスの龍がそう聞くが、二頭は全然分からないと言うように首を傾げただけだった。
『ふむ。この場合は実験しかないの~。しょうがない』
そう言ってサレスの龍は私の方へと近づいてきた。どんどん近づいてきて、その距離は二十あるかないかまでになった。
『少しすまんが、お主ワシの背中に乗る真似をしてくれんか?』
そうコソッと耳打ちをされ、何が何だか分からなかったが、私は小さく頷いた。
『お主らよく見ておれよ?ワシがここまで体を張るのじゃ‥‥‥やってくれ』
サレスの龍も何やら覚悟を決めた様子だったので、私も覚悟を持って、背中に手をかけた。
そのほんの一瞬だった。でも、充分な時間だった。
二頭から殺気に似たオーラが感じられ、二頭が一気に私とサレスの龍の間に入ってきたのだ。
そして、私を囲むようにして二頭は立ち、サレスの龍へと威嚇をした。
「は?え?何?」
何が何だかわからず、私はただその状況の中オロオロとしてしまった。
だが、それを見たサレスの龍は、満足そうに笑った。
『ホッホッホ!良かった良かった!どうじゃサレス!これで決定じゃ!』
「‥‥はー。完敗だ。負けたよ」
そのまま喜びの舞でも始めそうなサレスの龍と、呆れからなのか頭を抱えて悩み始めるサレス。
‥‥‥ねぇ、説明頂戴よ!
まだ私の両隣でサレスより龍を威嚇している二頭の間で、私はその光景を恨みがまじく見た。
私の視線に先に気づいたのはサレスだった。
「ああー‥‥なんだ。その‥な?」
「な?じゃ分かりません。説明を要求します。何故俺がサレス団長の龍に乗る真似をしたら、この二頭は威嚇を始めたんですか?」
私の要求に、サレスは頭をガシガシと掻きながらもちゃんと説明してくれた。
「龍やドラゴンはプライドが無駄に高い」
『無駄とはなんだ無駄とは!ワシらは誇りを持ってだな~』
「はいはい。わかってるから少し黙っていてくれ。話が進まない」
サレスは自分の龍の言葉を軽くあしらって話を進める。
龍が少しだけシュンとした。かわいい。
長くなりそうなので、私はその場に座って楽な体勢を作る。私に合わせて両隣にいる龍とドラゴンも座った。
それを見たサレスは「もう驚かないぞ」というような顔をして、自身も地面の上に座った。
「‥‥でだな?そのプライドのせいか、気に入った人間しか背中に乗らせないんだ。そして、その人間は世の中に一人だと決まっている」
「はい、サレス団長。質問してもいいですか」
私は気になったことがあったので、すかさず手を挙げて質問してもいいか聞く。
サレスは直ぐに許しをくれた。
「今、背中に乗せる人間は世の中に一人だと言いましたよね?なら、その世の中に一人の人間が死んじゃったらどうなるんですか?」
「その場合、龍やドラゴンはしばらく人間を乗せず気ままに生活するらしい。そして、数年たったらまた気に入った人間が現れるのを待つ」
「なるほど」
つまり、唯一無二の人間がいなくなったら、心の傷が癒えるまで自由に過ごしてから、次の唯一無二の人間を探すと。
「続けるぞ?龍やドラゴンは気に入った人間を相棒とし、生涯その人間しか背に乗せない。そして、龍やドラゴンは気に入った人間が自分以外の龍やドラゴンに乗る事を、とてつもなく嫌う」
「あ、だからなんですか」
だからこの二頭は威嚇をしたのか。なるほど。
「‥‥‥‥‥ん?つまり?」
「はぁー。お前はその二頭の相棒という事だ」
『おめでとうじゃな。龍やドラゴンの中には、生涯相棒が見つからずに朽ち果てる者もおる』
「‥‥‥ま、マジですか‥‥‥‥でも、そっか。お前達は、俺を選んでくれたのか」
私は自然の緩む口角を気にせず、両隣にいる二頭の頭を撫でる。
二頭とも鱗でなかなか硬かったが、ひんやりしていて気持ちよかった。
私が連れてこられたのは、王宮方面に生活場から少し離れた場所だった。
そこには龍やドラコンなどが多くいて、色も様々な色がいた。大きさはすべて少し大きい馬サイズだ。
現実で見ると大きいものだと思ってたけど、それほど大きくもなかったんだ。
そう思いつつ見ていると、サレスが龍たちに向けて指笛を吹いた。音がならなかったので、なにか特殊な吹き方をしたのだろう。
「‥‥何をしたんですか?」
「ん?ああ。急に選べなんて言われても困るだろ?だから俺の龍を見て、基準を覚えてもらおうと思ってな‥‥来たぞ」
そう言ってサレスが王宮の方を指さしたので、そちらに目を向けると、1匹の赤い龍がこちらに向かって来ていた。
遠目からでも分かる大きさなので、ここにいる龍よりも遥かに大きいのがわかる。
あきらかにこちらに向かってきていたので、私はサレスの後ろに隠れた。
そのすぐ後に、土煙とともに強烈な風が私達を襲ったが、私はサレスの後ろにいたから別に大丈夫だった。
「‥‥お前は相変わらずだな」
『しょうがなかろう。ワシの体だ。好きなようにして何が悪い』
重みがあるのに耳にすんなり入る不思議な声が、私の耳に届いた。
私は、そ~っとサレスの後ろから顔を出した。
『やぁ。かわいい‥‥‥‥子や』
‥‥‥オオキイデス。
瞳も体も赤く輝く龍。鬣は白く、それもまた体の赤を色鮮やかにしているように見えた。
一瞬驚いたように目を開いて、間を開けて『子や』と言ったことに、私は安堵した。
どうやら、この龍は私が女なことに気づいているらしい。そして、何故ここにいるかも察してくれたらしい。察しのいい龍で良かった。
『それで?今日はどうした』
「今日は、ここにいる奴に合う龍かドラゴンを探して欲しいんだ。別に本機では無いから、そこまで真剣じゃなくていい。頼む」
『‥‥承知した』
龍がそう言ったかと思うと、龍は放牧場の中に入ってそのまた奥の方に見える森の中へと入って行った。
ん?あれ?
「サレス団長。なんであの龍来た時みたいに飛んで行かないんですか?」
放牧場の中に入る時も入った後も、サレスの龍は柵の出入口から入っていた。決して飛んで入ってはいない。
先程見た飛ぶ速度で飛んで探した方が早いのに。と、私は思った。
「ん?ああ。それはこの放牧場の柵の内側は、龍が飛べないように魔法をかけているんだ。出入はここにある出入口を入れて4つの出入口からしか、出入口出来ない使用になっている」
「へぇー」
私は興味が湧いて柵に近づいてみた。
柵は特に頑丈そうな木を使ってみる様子ではなかった。それを見て、柵にも何かしらの強化魔法がついていることが伺えた。
数分してから、サレスの龍が戻ってきた。
『遅くなった。すまん』
「いや、大丈夫だ。それで?いいのはいたか?」
サレスの問に、龍は少し体をズラして、後ろにいた龍とドラゴンを見せてくれた。
「‥‥‥」
その二頭の龍とドラゴンを見た瞬間、サレスは固まってしまった。
私は意味がわからず首をかしげたが、早くあの二頭に近づいて間近で見たいという気持ちが急いだ。だが、許可なく近づくのはダメな気がしたので、許可がほしくってソワソワした。
『ほれ。もっと近くで見らんとどっちがいいか決めれんぞ?』
そんな中、サレスの龍から許しが出たので、私は急いで柵の中に入り、まずは龍の方から見始めた。
龍は私が近づくと、私が見やすいようになのか頭を下げてくれた。それにはどことなく気品が感じられた。
色は気持ち良い空のような青で、足元に近づくにつれ、綺麗な夕日のような色になっている。鬣は、綺麗な白だった。瞳もなんとも言えない不思議な色をしていて、見ていてホッと息をついた。
大きさはサレスよりデカいが、サレスの龍よりは低いかった。
頭についた二つの角は、周りにいる龍よりも長く太かった。だが、何となく掴んでみると、私の手に馴染んで、少し冷たくって気持ちよかった。
一通り見て、私は龍から離れドラゴンの方へと近づいた。
ドラゴンは私が近づくと、龍のように頭を下げず足を曲げて伏せの状態になってくれた。その状態で、どことなく胸を張っているような状態だった。
色は白と言うよりも銀と言った方がしっくりくる色をしており、翼の色は外側は白。内側は赤だった。瞳は赤くルビーの様に輝いていた。
大きさも先程の龍と同じぐらいだった。
こちらにも角が二つついたが、先程の龍とは違い、短く人一人が掴めるぐらいしかなかった。掴んでみようとするが、つま先立ちになっても私の身長では掴めなかった。それに気づいたドラゴンが、「しょうがないな」と言うような顔をして、頭を下げてくれたので、何とか掴めた。やはりこちらもしっかりと私の手に馴染んだ。
一通り見て私は二頭から離れ、見比べる。
別に私は龍やドラゴンの専門家ではないし、生まれて初めて本物の龍やドラゴンを見た。この二頭のどちらがいいかなんて分からない。
『どうだ?決まったか?』
「‥‥‥正直言って分かりません」
上から話しかけてきたサレスの龍に、私は正直に話した。
「俺は人生で初めて龍とドラゴンを見ました。そんな俺の意見でいいのであれば、聞いて貰えますか?」
私の問に、サレスの龍は頷いてくれた。
「俺のようなど素人にもわかるほど、この二頭はその辺にいる他の龍やドラゴンとは違い、とても立派でかっこよく感じます。それに、どことなく雰囲気も違うように感じます。
二頭とも素晴らしかったです。角に触った時も、手に馴染む。というより、手が角の一部になったように感じるぐらい、角が手に馴染見ました。
正直言って、二頭とも選びたくなりました。‥‥‥‥でも、俺は一頭を選ばなければなりません。それはどうも難しすぎる」
『ふむ。サレスよ』
「‥‥‥‥あ、な、なんだ」
サレスがやっと回復したようで、龍の問いかけに応えた。
『騎士の規則には、一人の騎士につき龍かドラゴン。どちらか一頭しか相棒に出来んのか?』
‥‥‥‥は?
「いや、そんな事は無い。そこら辺は特に決まっていないからな‥‥‥だが」
『ならば決定じゃ!おい!そこの子や♪』
「は、はい!」
急に話しかけられ、思わず私は気おつけをしてしまう。どことなく、サレスの龍の声が嬉しそうだ。
『どうやら騎士の規則では、相棒の数は決められていないらしい。そこでじゃ!二頭共お主の相棒にしてしまうのはどうじゃ?』
「「な!」」
見事に私とサレスの声は被った。
私からしたら願ってもない話だが、それでいいのだろうか。
「ま、待て!そんな前例聞いたことがない!それに昔お前は言っていただろ!龍とドラゴンは同じ相棒を選ぶことはない!と!」
『ああ。確かに言ったな。だが、それは前例がないのもあるが、我らに伝わるただの言い伝えじゃ』
「それでも、だ!前例がないのは人間側では大問題なんだぞ!?」
『そんなの今回が例となればよかろう。前例など、壊すためにあるのじゃよ。昔ワシのお爺さんのそのまたお爺さんのそれまたお爺さんの友達の知り合いのお爺さんの知り合いの‥‥‥偉い人が言ってったぞ?』
「それはただの他人だ!しかも人ではないから偉い龍だろ!というか、本機ではないと言っただろ!」
『そうじゃったかの~?この頃物忘れが酷くてのー』
「嘘をつけ!お前龍の中でも珍しい『二脳』だろ!龍生の3分の2生きてないと言っていたお前の脳が物忘れするはずがないだろ!」
『そー言われてものー』
目の前で龍とサレスのボケとツッコミが炸裂する。
‥‥‥え、結局何?私、この二頭貰っていいの?
私は混乱して、ボーッと突っ立っているだけになってしまった。
『はー。そんなに言うんなら、本龍達に聞いたらよかろう。ほら。そこの子らよ』
「え、あ、はい!」
この龍は急に話しかけてくるから驚く。
『お主らはどうじゃ?一緒にいたいか?』
言われずもがな、私はYESだ。だけど、この二頭には無理についてきて欲しいとも感じない。
「‥‥‥はい」
私は正直にそう返事をした。
『お主らは?』
龍とドラゴンは、その問いに首を傾げてしまった。
やはり、私にはついてきてくれないらしい。
『分かっておらぬのか。若いの~。まぁ、良い。手を貸してやるわい』
そう言うと、サレスの龍は二頭に向かい合えるようにか、だんだん体が小さくなり、しまいには連れてこられた二頭と同じ大きさになった。
『ふむ。この大きさになるのも久々じゃな‥‥‥それでは、お主ら。今から言うことを想像してみよ。いくぞ?
もし、お主らがこの人間について行かなかったとする』
そう言って、サレスの龍は私を今日に前足の爪で指さした。
『そうすると、この人間はお主ら以外の龍かドラゴンの背に乗り、この大空を自由に飛ぶんじゃ‥‥‥どうじゃ?』
サレスの龍がそう聞くが、二頭は全然分からないと言うように首を傾げただけだった。
『ふむ。この場合は実験しかないの~。しょうがない』
そう言ってサレスの龍は私の方へと近づいてきた。どんどん近づいてきて、その距離は二十あるかないかまでになった。
『少しすまんが、お主ワシの背中に乗る真似をしてくれんか?』
そうコソッと耳打ちをされ、何が何だか分からなかったが、私は小さく頷いた。
『お主らよく見ておれよ?ワシがここまで体を張るのじゃ‥‥‥やってくれ』
サレスの龍も何やら覚悟を決めた様子だったので、私も覚悟を持って、背中に手をかけた。
そのほんの一瞬だった。でも、充分な時間だった。
二頭から殺気に似たオーラが感じられ、二頭が一気に私とサレスの龍の間に入ってきたのだ。
そして、私を囲むようにして二頭は立ち、サレスの龍へと威嚇をした。
「は?え?何?」
何が何だかわからず、私はただその状況の中オロオロとしてしまった。
だが、それを見たサレスの龍は、満足そうに笑った。
『ホッホッホ!良かった良かった!どうじゃサレス!これで決定じゃ!』
「‥‥はー。完敗だ。負けたよ」
そのまま喜びの舞でも始めそうなサレスの龍と、呆れからなのか頭を抱えて悩み始めるサレス。
‥‥‥ねぇ、説明頂戴よ!
まだ私の両隣でサレスより龍を威嚇している二頭の間で、私はその光景を恨みがまじく見た。
私の視線に先に気づいたのはサレスだった。
「ああー‥‥なんだ。その‥な?」
「な?じゃ分かりません。説明を要求します。何故俺がサレス団長の龍に乗る真似をしたら、この二頭は威嚇を始めたんですか?」
私の要求に、サレスは頭をガシガシと掻きながらもちゃんと説明してくれた。
「龍やドラゴンはプライドが無駄に高い」
『無駄とはなんだ無駄とは!ワシらは誇りを持ってだな~』
「はいはい。わかってるから少し黙っていてくれ。話が進まない」
サレスは自分の龍の言葉を軽くあしらって話を進める。
龍が少しだけシュンとした。かわいい。
長くなりそうなので、私はその場に座って楽な体勢を作る。私に合わせて両隣にいる龍とドラゴンも座った。
それを見たサレスは「もう驚かないぞ」というような顔をして、自身も地面の上に座った。
「‥‥でだな?そのプライドのせいか、気に入った人間しか背中に乗らせないんだ。そして、その人間は世の中に一人だと決まっている」
「はい、サレス団長。質問してもいいですか」
私は気になったことがあったので、すかさず手を挙げて質問してもいいか聞く。
サレスは直ぐに許しをくれた。
「今、背中に乗せる人間は世の中に一人だと言いましたよね?なら、その世の中に一人の人間が死んじゃったらどうなるんですか?」
「その場合、龍やドラゴンはしばらく人間を乗せず気ままに生活するらしい。そして、数年たったらまた気に入った人間が現れるのを待つ」
「なるほど」
つまり、唯一無二の人間がいなくなったら、心の傷が癒えるまで自由に過ごしてから、次の唯一無二の人間を探すと。
「続けるぞ?龍やドラゴンは気に入った人間を相棒とし、生涯その人間しか背に乗せない。そして、龍やドラゴンは気に入った人間が自分以外の龍やドラゴンに乗る事を、とてつもなく嫌う」
「あ、だからなんですか」
だからこの二頭は威嚇をしたのか。なるほど。
「‥‥‥‥‥ん?つまり?」
「はぁー。お前はその二頭の相棒という事だ」
『おめでとうじゃな。龍やドラゴンの中には、生涯相棒が見つからずに朽ち果てる者もおる』
「‥‥‥ま、マジですか‥‥‥‥でも、そっか。お前達は、俺を選んでくれたのか」
私は自然の緩む口角を気にせず、両隣にいる二頭の頭を撫でる。
二頭とも鱗でなかなか硬かったが、ひんやりしていて気持ちよかった。
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