上 下
24 / 41
小等部

修学旅行を邪魔するやつ〜3日目〜

しおりを挟む
 修学旅行3日目。
 もう修学旅行の折り返し日だよ。もう少しだけでもいいから、遊びたいよ。

「はぁー‥‥‥今日はどこだっけ?」
「ん?今日は牧場をまわる。昨日の班会議で決めただろ?‥‥お前が言い出したことなのに、忘れたのか?」
 悠真ゆうまの答えに、私は「そうだった」と納得する。
 スキーは昨日ので満足したので、今日は牧場をまわることになったのだ。
 美智瑠みちる先生も賛成してくれた。しゅん先生は‥‥うん。察してください。
 え?察せれないって?しょうがないな。教えてあげよう。
 瞬先生は、ただいまです。
 昨日の夜に、寝落ちするまで結局飲んで飲みまくって、朝起きたら二日酔いだったらしい。
 もう大人なんだから、酒のセーブちゃんとしろよ!っと、思ってしまいます。
 ま、そんなこんなで、今日は美智瑠先生と私。それに悠真と一緒に、牧場見学です。

「きゃー!牛だよ!牛さんだよ!?蘭夜らんやちゃん見てみて~!」
「はいはい。ちゃんと見てますよ。美智瑠先生」
 美智瑠先生は、小学生みたいにはしゃぎまくって、それに私を巻き込んでいく。
 本当に勘弁してほしい。昨日は瞬先生。今日は美智瑠先生ですか!?
 ほかの先生方!ちゃんと新人職員の躾をいてくださいよ!
 そんな不満を心の中でつぶやきながら、牧場をまわる。

「あれ?美智瑠先生、悠真君は?」
 ふと気づくと、悠真の姿が見当たらなかった。
「あら?そう言えばいないわね?」
 トイレにでも行ったのかと思ったが、どうも違うらしい。
 だって、いくら相手が女性だからといって、悠真は絶対にどこかに行く時は、先生に言ってから行く。
 ‥‥胸騒ぎがする。
「‥‥。悠真を探そう‥‥美智瑠はさっきいたチーズ工房見てきて」
 私は美智瑠先生に前世で呼んでいたように呼び捨てで、支持してしまった。
 でも、今の私は気づかないまま、美智瑠先生の返事を待った。
「分かったわ‥‥蘭夜ちゃんは?」
 幸いにして、美智瑠先生は気づかなかったのか、いつも通りで返事した。
「‥‥私は‥‥‥牧場と駐車場を見る‥‥また後で!」
 私は美智瑠先生を置いて走り出した。

「ハァ、ハァ‥‥どこいるのよ!悠真!!」
 私は牧場を見終わって、駐車場に移動していた。
 悠真の名前を叫ぶが、全く反応がない。
 ここにもいなかったら、迷子放送をかけてもらうしかない。それでも見つからなかったら‥‥そして、その原因は‥‥。
「ちくしょう!もう少ししっかり見てたらよかった!悠真ー!!」
 私は駐車場内を走り回る。
 大人にとっても広く感じるであろう駐車場は、小学生の私にとって、とてつもない広さに感じた。
 もう既に喉が痛い。足も疲れてきた。でもやめない。
 死亡フラグ持ち?だからなんだ!前世の記憶のおかげで、救えるかもしれない命があるんだ!絶対に救ってみせるんだ!!

「‥っ!‥‥たす‥!らんゃ‥‥!!」
「っ!ハァハァ、悠真ぁぁあ!」
 かすかだが声がした。
 私の名前が聞こえた。
 争う声がした。
 助けを求める声がした。
 私は走った。
 声の方に向かって走った。
 今出せる全速力で走った。
 喉が痛い。
 足が痛い。
 でも、走った。

「ハァ、ハァっ!悠真!!」
「!?蘭夜!!っ!離せこの野郎!!」
 私がついた時、悠真は知らない2人の男性達に腕を掴まれていた。
 どこをどう見ても、誘拐だ。
 悠真が誘拐されそうなのは、一目瞭然だった。
「っ!悠真を離せぇぇええええぇぇえ!!」
「グェ」
 私は思いっきり男に回し蹴りをした。
 前世で習った柔道や剣道。その時に鍛えるためにしたトレーニングを、今世でも続けていて、私の蹴りには、小さいなりには、それなりに威力がある。
 男の方は、まさか私みたいな子供が回し蹴りをするなんて思わなかったらしく、なんの防御もしなかったため、身体をくの字に曲げて、倒れ込んだ。
 もう1人の男は、その様子を見て怯んだので、その隙を見て同じように回し蹴りをした。
 ‥‥うん。アシイタイ。
 限界近くまで走ったのと、大の男を蹴ったので、足が悲鳴をあげている気がする。
「った~!‥‥悠真!逃げるよ!」
 私はまだ倒れている男達を確認して、悠真の手を取り走り出す。
 もう足が痛すぎる。今日1日で、私をどれぐらい走らせれば気が済むんだよ!
「お前‥‥どうしてここに‥‥」
 さっきのことで手を引かれて走るだけだった悠真が、自分で走り出して横に並んだので、手を離し走りながら説明する。
「悠真が急にいなくなったから、探したの!!てか、話してる暇あるんなら、足動かせ!ほら!あいつらが来た!」
 後からさっきの男が1人だけ、追いかけてきた。
 多分1人だけなのは、もう1人が回復してないからだろう。
 それなりに離れたが、私達は子供の走るスピードで走っている。大の大人が相手では、すぐに追いつかれてしまう。
 でも、足を止めることは絶対にない。少しでも希望は必ずあるはずだ。
 そう思っていると、前に美智瑠先生が見えた。何故か警察も一緒だ。
 美智瑠先生一体何したの!?私警察呼んでなんて頼んでないよ!?いや、結果的にはよかったんだけどさ!?
「美智瑠ぅううぅぅう!!助けてぇええぇええぇぇぇえ!!」
「蘭夜ちゃん!分かったわ!」
 私はまだ遠くにいる美智瑠先生たちの元へ向かって走る。
 けど、その努力も無駄だった。
「蘭夜ちゃん!後ろ!」
「え?っキャー!」
 私は誘拐犯に捕まってしまった。
 走り回ったせいで、もう体力が限界だった私は、だんだんスピードが落ちていたみたいで、悠真が前を走っていた。
「っ!蘭夜!」
「バカ野郎!走りなさい!悠真は走れバカ野郎!私より自分を心配しろ!!」
 悠真が私に気づき、止まりそうになったので、私は走るように言い放った。
 悠真は悔しそうな顔をしながらも、美智瑠先生の元へ走った。
「チッ!潮時か」
 私を捕まえた男がそう言い放ったと思ったら、元来た道を走り出した。
 おい待て!潮時なら、私を置いてけよ!お前らが狙ってんのは悠真だろ!?私をさらって何になるんだよ!

「お前には、人質になってもらうぞ‥‥大友   蘭夜おおとも   らんや
 誘拐犯の車の元まで連れてこられて、車に連れ込まえたと思うと、車が動き出したと同時にそう言われて、口にハンカチを押し当てられた。
「っ!」
 私はそれを思いっきり吸ってしまって、意識がだんだん朦朧としてきた。
「蘭夜ぁあぁー!」
 最後の記憶は。
 車の開いた窓から、悠真の私を呼ぶ声が聞こえたことだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。 沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。 だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。 モブなのに魔法チート。 転生者なのにモブのド素人。 ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。 異世界転生書いてみたくて書いてみました。 投稿はゆっくりになると思います。 本当のタイトルは 乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜 文字数オーバーで少しだけ変えています。 なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています

平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。 自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢は頑張らない 〜破滅フラグしかない悪役令嬢になりましたが、まぁなるようになるでしょう〜

弥生 真由
恋愛
 料理が好きでのんびり屋。何をするにもマイペース。そんな良くも悪くも揺らがない少女、 陽菜は親友と共に事故にあい、次に目覚めたら乙女ゲームの悪役令嬢になっていた。  この悪役令嬢、ふわふわの銀髪に瑠璃色の垂れ目で天使と見紛う美少女だが中身がまぁとんでも無い悪女で、どのキャラのシナリオでも大罪を犯してもれなくこの世からご退場となる典型的なやられ役であった。  そんな絶望的な未来を前に、陽菜はひと言。 「お腹が空きましたねぇ」  腹が減っては生きてはいけぬ。逆にお腹がいっぱいならば、まぁ大抵のことはなんとかなるさ。大丈夫。  生まれ変わろうがその転生先が悪役令嬢だろうが、陽菜のすることは変わらない。  シナリオ改変?婚約回避?そんなことには興味なし。転生悪役令嬢は、今日もご飯を作ります。

処理中です...