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6章~正義の制裁者~
贖罪
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ハルトは朝起きてからもやはり昨日の事が気になっていた。あの磔台の意味することに。ハルトはこれで復讐のピークになるのではないかと考えていた。それは数を示すのか質を示すのか、そこまでは分からなかったがここ一番の事件になることは間違いなかった。あの騒ぎの最中にハルトはミシュリと接触していた。ミシュリも同じように嫌な予感がしていたのだ。そして、少し言葉を交わした結果ミシュリが夜磔台を見張ることとなっていた。ハルトはその場ではかなり安心していたのだが、静かに響く雨音とあまりに静かな光景がハルトの不安を掻き立てた。
コンコン
ハルトの宿の窓にノックする音が聞こえた。それは雨に濡れたミシュリだった。
「どうした、中に入れよ」
「……ない」
ミシュリは震える声で何かを訴えた。ハルトは雨の中監視をしていたことを考え風邪でも引いてしまったのではとタオルをミシュリに渡した。
「すまない」
その時ハルトに聞こえた言葉は予想もしていなかった謝罪の言葉だった。
「ヤツを…ヤツを死なせてしまった!サラディン・ジョーンズを!」
ミシュリは涙ながらに答えた。ハルトは血相変え濡れたミシュリを残して磔台へと駆けていった。しかし磔台に近づくにつれて音は消え人の数だけが増えていった。
磔台の前には大勢の人々が集まっていた。しかし、そこに音というものが雨音以外存在しなかった。人々はただ無言でその磔台を見つめた。決して泣き崩れるわけでもなく、動揺するわけでもなく、ただその英雄の死を受け入れられずにそこに立っていた。その場にいた全ての人がその光景に言葉を失ったのだ。流れ出た血は雨に流され広がり辺りを赤く染めた。そしてその顔は原型が想像出来ないほどに破壊されていた。しばらくして英雄の遺体は磔台から下ろされた。そのときにようやく人々は実感することとなる。これまで自分たちを導いてきた男が死を迎えたのだと。人々は他殺の線でこの事件を捜査した。人々は英雄を殺した犯人をいち早く見つけ出し目にものを見せてやろうと必死になっていた。サラディンの昨日の目撃情報を互いにだしあい。サラディンの昨日の行動を全て明らかにした。そして、その中である一つの情報がハルトには気になった。昨日一度磔台を訪れていたらしい。ハルトはその情報を発した男を尋ねた。
「あんたが磔台の近くでサラディンを見つけたって言ってたやつか?」
「そうだ。それにあのとき俺はあの人と言葉も交わした。」
「何て言ってた?」
そこで男は少し間をおいた。
「一言一句あの人の言ったことは覚えてるんだが全くその意図が分からないんだ。」
ハルトはとりあえずその言葉を聞くことにした。
「君、あれはいつからあそこにあるかわかるかい?」
「サラディン様!?あ、あの磔台ですか?あれなら昨日の夜には無かったんで早朝か深夜頃だと思いますよ。」
「そうか。一つ質問に答えてくれるか?」
「もちろんですよ。あなたの満足のいく答えを出せるかは分かりませんがあなたの助けになるのなら何だって答えますよ。」
男は喜んで質問に応じた。
「今は幸せか?」
「それはもちろん、民主国家になってから税に苦しめられることはないし不当な罰で処刑されることも無くなりましたから。何より飢えに苦しまなくなったことが一番の幸せです。」
「君は昔の生活に戻りたいとは思うかい?」
「まさか、そんなことあるわけないじゃないですか。」
「それは良かった。時々ふと頭をよぎるんだ。私のしてきたことは正しかったのだろうかって君たちにとって正解なら良かったよ。ありがとう。じゃあ失礼するよ。」
「分かった。ありがとう。」
ハルトはその話を聞いてミシュリの場所へ向かった。
「まさかとは思うがサラディンは自殺したのか?」
ミシュリは、やつれた顔をあげハルトの顔を確認したあと静かに頷いた。
その頃、サラディンの葬式が行われていた。サラディン遺体は丁寧に棺桶に入れられた。その時にサラディンのポケットから一つの箱が落ちた。それは、耐水性に優れた箱で中のものは濡れないような仕組みのものだった。納棺作業をしている人が周りの人々の同意を得てその箱を開けると一枚の紙入れられていた。それを読み上げた。
「君たちにはとても申し訳ないと思う。私は自らこの命を捨てるからだ。昨日ある男にいろいろと質問をさせてもらった。その男によると今の生活を手に入れられたことは非常に喜ばしい事なのだそうだ。私はそれを聞いて嬉しかった。私のやってきたことは間違いではなかったのだと。だからこそ申し訳ないと思う。こんな私を英雄と慕ってくれる人々をおいて自分勝手に命を捨てるのだから。しかし私は、この磔台を見て気づいてしまったのだ。私のやってきたことは完全な正解などでは無かったのだと。私は償わなければならない罪を背負っているのだと。そして、その罪をいつまでたっても見ない振りをしてきた結果様々な人を犠牲にしてしまったと。だからこそ私は自分勝手ではあるがこの命をもってその罪を償わさせて頂きたい。これが私の命を捨てる理由だ。」
コンコン
ハルトの宿の窓にノックする音が聞こえた。それは雨に濡れたミシュリだった。
「どうした、中に入れよ」
「……ない」
ミシュリは震える声で何かを訴えた。ハルトは雨の中監視をしていたことを考え風邪でも引いてしまったのではとタオルをミシュリに渡した。
「すまない」
その時ハルトに聞こえた言葉は予想もしていなかった謝罪の言葉だった。
「ヤツを…ヤツを死なせてしまった!サラディン・ジョーンズを!」
ミシュリは涙ながらに答えた。ハルトは血相変え濡れたミシュリを残して磔台へと駆けていった。しかし磔台に近づくにつれて音は消え人の数だけが増えていった。
磔台の前には大勢の人々が集まっていた。しかし、そこに音というものが雨音以外存在しなかった。人々はただ無言でその磔台を見つめた。決して泣き崩れるわけでもなく、動揺するわけでもなく、ただその英雄の死を受け入れられずにそこに立っていた。その場にいた全ての人がその光景に言葉を失ったのだ。流れ出た血は雨に流され広がり辺りを赤く染めた。そしてその顔は原型が想像出来ないほどに破壊されていた。しばらくして英雄の遺体は磔台から下ろされた。そのときにようやく人々は実感することとなる。これまで自分たちを導いてきた男が死を迎えたのだと。人々は他殺の線でこの事件を捜査した。人々は英雄を殺した犯人をいち早く見つけ出し目にものを見せてやろうと必死になっていた。サラディンの昨日の目撃情報を互いにだしあい。サラディンの昨日の行動を全て明らかにした。そして、その中である一つの情報がハルトには気になった。昨日一度磔台を訪れていたらしい。ハルトはその情報を発した男を尋ねた。
「あんたが磔台の近くでサラディンを見つけたって言ってたやつか?」
「そうだ。それにあのとき俺はあの人と言葉も交わした。」
「何て言ってた?」
そこで男は少し間をおいた。
「一言一句あの人の言ったことは覚えてるんだが全くその意図が分からないんだ。」
ハルトはとりあえずその言葉を聞くことにした。
「君、あれはいつからあそこにあるかわかるかい?」
「サラディン様!?あ、あの磔台ですか?あれなら昨日の夜には無かったんで早朝か深夜頃だと思いますよ。」
「そうか。一つ質問に答えてくれるか?」
「もちろんですよ。あなたの満足のいく答えを出せるかは分かりませんがあなたの助けになるのなら何だって答えますよ。」
男は喜んで質問に応じた。
「今は幸せか?」
「それはもちろん、民主国家になってから税に苦しめられることはないし不当な罰で処刑されることも無くなりましたから。何より飢えに苦しまなくなったことが一番の幸せです。」
「君は昔の生活に戻りたいとは思うかい?」
「まさか、そんなことあるわけないじゃないですか。」
「それは良かった。時々ふと頭をよぎるんだ。私のしてきたことは正しかったのだろうかって君たちにとって正解なら良かったよ。ありがとう。じゃあ失礼するよ。」
「分かった。ありがとう。」
ハルトはその話を聞いてミシュリの場所へ向かった。
「まさかとは思うがサラディンは自殺したのか?」
ミシュリは、やつれた顔をあげハルトの顔を確認したあと静かに頷いた。
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