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第16話 最終話
幼き頃の約束 2
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レミーは、ハルーの手をそっと掴む。幼き頃よりずっと大きな手。小さなレミーの手を引いて大好きな本の場所に連れて行ってくれた優しい手と温もりは昔から何も変わらない。そんなレミーの行動にハルーは、驚いて声も出ない。焦っているハルーの手は小さく震えていた。そんな震える手をレミーは離さない。より強くより優しくそして、より暖かさを与える様に離れてやらない。
何度か視線の端、レミーの手の先からあわあわと口を開いたり閉じたり忙しないハルーがうかがえた。
「れ…レミ、ロア」
「何?ハルー」
レミーはイタズラ気味でそう返す。言葉と共に返した笑みは少しだけいつもより少しだけ砕けた店の店員と常連客の雰囲気が漂っていた。
そんなレミーの手を取り払う様な仕草をハルーはするが、その手には力は全く入っていない。ーー互いに離れがたい。そう伝える様だった。
手放す事が出来ないと分かったハルーは、レミーに言葉を伝える。
「約束…なんてして居ない…」
「なんで?貴方はした筈」
「あれは!僕の親が君達にした行いのせいで君がレミロアが悲しんでると分かったから!」
「だから、貴方のせいだと?」
そう返すとハルーの手はもう掴む事すら動かす事すらやめたように力なく垂れ下がる。レミーはその手を掬い上げる様に持ち方を変えた。
「これは、僕とザティスと父様の件だった…なのに君達まで巻き込むつもりも無かったんだ…だって親の失敗は子が償わなきゃいけない。」
「貴方は、馬鹿ね。」
一瞬で塞ぎ込み震え小さくなっていくハルーがレミーの顔をちゃんと見た。そして瞳には訳が分からないとレミーに訴える力のある色が戻った。
それを見た時レミーは分かった。
「貴方は、何が幸せで何が悲しいか。勝手に決めただけ。それを誰かに聞いたり確かめたりしなかったから、今私がどう思って此処にいるのか分からない。違う?」
「君は、レミロアは父親の件も全て含めて僕をバーン家を憎んで此処にいる。」
「なぜ?さも当たり前の様に言うの?私が貴方に言った?」
「でもっ!そうじゃなきゃ!!いけないんだ!許されてはいけないんだ…」
ハルーは、そう怒鳴る様に言った。レミーは、怖さより愛おしさを感じた。
ハルーは、昔から怒ったりした姿をレミーは見た事が無い。勿論、泣いた姿も焦る姿もその表情も。
だが、今のハルーは昔見たパーティーでの彼とはまた違う。感情を全てレミーに向けてくれている。それが一番レミーには嬉しかった。
本当はこんなにも小さく震えてしまう人。誰よりも身近な人を大切にしたい、だからこそ身近な全ての人の助けになりたい。そういう真面目な人。
それでも何処か助けや安らぎを求めて止まないそんな寂しい人。
「ハルー、いえ、ハル。私は貴方が好き。」
「な!?な、何?!急に、うわっ」
レミーは、慌てるハルを抱きしめた。その衝撃でハルはソファーに座り込む。ハルの混乱した顔はレミーの肩口に徐々に埋もれていく。それはレミーが抱きしめたからでは無い。ハルが抱きしめ返したからでも無い。
ーーハルが泣いたからだ。
本で読んだ。
人は悲しい時に暖かさを感じると涙が出る。と、だからハルは決して顔を上げない。より深く顔を下げる。
「ハル、私は貴方達に初めは父にも憎しみを抱いていた。けれど、今は嬉しくてしょうがない!」
「…な、ぜ?」
「だって過去がなきゃ私は本屋で貴方はお客様として、こんな形で再会出来なかった。それに父とも和解出来なかった。だから、貴方のせいじゃ無い。…貴方のおかげよ、ハル」
ハルは、力一杯レミーの背に腕を回しキツく抱きしめた。そして、小さく何度も震える声で呟く。
ーーありがとう、ありがとう。…レミー
ハルは子供の様にわんわんと泣いた。レミーは泣き止むまでずっと側に居た。一人で全てを変えていく為に耐えて堪えて動いたハル。その苦しみと寂しさを埋める様にレミーはハルを抱きしめ続けた。
ーーそしてその間、ずっと「好き」と言い続けハルの顔を真っ赤に染めた。
そうして多くの時間をかけようやく泣き止んだハルはレミーにありったけの想いをその腕に言葉に込め言った。
「レミロア、いや、レミー。本当にありがとう。…僕も君が大好きだ」
レミーは熟れたトマトやリンゴの様に顔を真っ赤にした。
そして互いに肌身離さず持って居た本を手渡した。
「約束、分かったみたいね」
「あぁ、ようやく果たせた」
こうして、二冊の対になる本。
"奇跡の出会い" "幸運の拠り所"は無事に揃った。
翌日からレミーの婚約は白紙に戻り、ハルと婚約をした。
私達の事を知っていたディラストは、反対も何もしない。むしろごく当たり前の様な顔さえしたのを私は一生忘れてやんない!
ーー父親は、いつも勝手気儘なんだから。
そうして、婚約を結んだハルとレミーはあの日行ったカフェへ行ったり公園に行ったり沢山色々な場所に出掛けた。
そうして思い出を作っていった。勿論、二人共本が大好きな為に色々な本屋を巡り買い歩きカフェで読むという本屋デートなるものを一番よくした。
そして沢山のお出かけも沢山の大好きも、いつも二冊の本は決して離さない。
いつでも側にいる。それは二冊の本と初恋を抱いた者達にしか分からない。
ーーキスより愛おしい大切な愛情なのだから。
何度か視線の端、レミーの手の先からあわあわと口を開いたり閉じたり忙しないハルーがうかがえた。
「れ…レミ、ロア」
「何?ハルー」
レミーはイタズラ気味でそう返す。言葉と共に返した笑みは少しだけいつもより少しだけ砕けた店の店員と常連客の雰囲気が漂っていた。
そんなレミーの手を取り払う様な仕草をハルーはするが、その手には力は全く入っていない。ーー互いに離れがたい。そう伝える様だった。
手放す事が出来ないと分かったハルーは、レミーに言葉を伝える。
「約束…なんてして居ない…」
「なんで?貴方はした筈」
「あれは!僕の親が君達にした行いのせいで君がレミロアが悲しんでると分かったから!」
「だから、貴方のせいだと?」
そう返すとハルーの手はもう掴む事すら動かす事すらやめたように力なく垂れ下がる。レミーはその手を掬い上げる様に持ち方を変えた。
「これは、僕とザティスと父様の件だった…なのに君達まで巻き込むつもりも無かったんだ…だって親の失敗は子が償わなきゃいけない。」
「貴方は、馬鹿ね。」
一瞬で塞ぎ込み震え小さくなっていくハルーがレミーの顔をちゃんと見た。そして瞳には訳が分からないとレミーに訴える力のある色が戻った。
それを見た時レミーは分かった。
「貴方は、何が幸せで何が悲しいか。勝手に決めただけ。それを誰かに聞いたり確かめたりしなかったから、今私がどう思って此処にいるのか分からない。違う?」
「君は、レミロアは父親の件も全て含めて僕をバーン家を憎んで此処にいる。」
「なぜ?さも当たり前の様に言うの?私が貴方に言った?」
「でもっ!そうじゃなきゃ!!いけないんだ!許されてはいけないんだ…」
ハルーは、そう怒鳴る様に言った。レミーは、怖さより愛おしさを感じた。
ハルーは、昔から怒ったりした姿をレミーは見た事が無い。勿論、泣いた姿も焦る姿もその表情も。
だが、今のハルーは昔見たパーティーでの彼とはまた違う。感情を全てレミーに向けてくれている。それが一番レミーには嬉しかった。
本当はこんなにも小さく震えてしまう人。誰よりも身近な人を大切にしたい、だからこそ身近な全ての人の助けになりたい。そういう真面目な人。
それでも何処か助けや安らぎを求めて止まないそんな寂しい人。
「ハルー、いえ、ハル。私は貴方が好き。」
「な!?な、何?!急に、うわっ」
レミーは、慌てるハルを抱きしめた。その衝撃でハルはソファーに座り込む。ハルの混乱した顔はレミーの肩口に徐々に埋もれていく。それはレミーが抱きしめたからでは無い。ハルが抱きしめ返したからでも無い。
ーーハルが泣いたからだ。
本で読んだ。
人は悲しい時に暖かさを感じると涙が出る。と、だからハルは決して顔を上げない。より深く顔を下げる。
「ハル、私は貴方達に初めは父にも憎しみを抱いていた。けれど、今は嬉しくてしょうがない!」
「…な、ぜ?」
「だって過去がなきゃ私は本屋で貴方はお客様として、こんな形で再会出来なかった。それに父とも和解出来なかった。だから、貴方のせいじゃ無い。…貴方のおかげよ、ハル」
ハルは、力一杯レミーの背に腕を回しキツく抱きしめた。そして、小さく何度も震える声で呟く。
ーーありがとう、ありがとう。…レミー
ハルは子供の様にわんわんと泣いた。レミーは泣き止むまでずっと側に居た。一人で全てを変えていく為に耐えて堪えて動いたハル。その苦しみと寂しさを埋める様にレミーはハルを抱きしめ続けた。
ーーそしてその間、ずっと「好き」と言い続けハルの顔を真っ赤に染めた。
そうして多くの時間をかけようやく泣き止んだハルはレミーにありったけの想いをその腕に言葉に込め言った。
「レミロア、いや、レミー。本当にありがとう。…僕も君が大好きだ」
レミーは熟れたトマトやリンゴの様に顔を真っ赤にした。
そして互いに肌身離さず持って居た本を手渡した。
「約束、分かったみたいね」
「あぁ、ようやく果たせた」
こうして、二冊の対になる本。
"奇跡の出会い" "幸運の拠り所"は無事に揃った。
翌日からレミーの婚約は白紙に戻り、ハルと婚約をした。
私達の事を知っていたディラストは、反対も何もしない。むしろごく当たり前の様な顔さえしたのを私は一生忘れてやんない!
ーー父親は、いつも勝手気儘なんだから。
そうして、婚約を結んだハルとレミーはあの日行ったカフェへ行ったり公園に行ったり沢山色々な場所に出掛けた。
そうして思い出を作っていった。勿論、二人共本が大好きな為に色々な本屋を巡り買い歩きカフェで読むという本屋デートなるものを一番よくした。
そして沢山のお出かけも沢山の大好きも、いつも二冊の本は決して離さない。
いつでも側にいる。それは二冊の本と初恋を抱いた者達にしか分からない。
ーーキスより愛おしい大切な愛情なのだから。
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