本より好きになれるなら

黒狼 リュイ

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第3話

握られる手

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「レミロア?」
「な、なんでハルーが居るのよ?!」
「え?僕は来ちゃダメなの?ごめんよっ」

 そう言い頭を下げるハルー。そんなハルーの頭を上げさせようと必死になるレミーと頑なに頭を下げ続けようとするハルー。この2人の攻防をようやく止めたのはレミーの祖母マリアだった。

「2人して何をしておる?レミー、ハルーはレミーの様子がおかしいような気がして来てくれたのだよ。なんで居るなんてひどい言い方じゃないかい?」
「あ、いや、それは…」
「アリアさんありがとうございます。レミロア、さっきもだけど、何かあったのかい?僕で良ければ是非協力させてもらえないだろうか?」
「協力なんて…ただ、私はさっきまで居た貴族の方への印象が変わったから安心しただけよ。」
「貴族ってバーン伯爵家のかい?」
「えぇ、おばあちゃん。案外悪い奴じゃないみたいよ。少し安心だわ。」

 私がザティス様の事を話すとハルーとおばあちゃんは互いに顔を見合わせて困った顔をしていた。
 そして、何故かおばあちゃんはハルーの肩に手を置き"負けるな"と聞こえるか聞こえないかの音量で耳打ちした。
 そしておばあちゃんにその他にも耳打ちされていたハルーは、意を決した様に私に向き直り近寄って来た。
 目と鼻の先のハルーは、少し力が入ってしまったような普段とはちょっと違う笑顔を私に向けて言った。

「レミロア、少し休憩がてらこの近くにある喫茶店に行かないかい?君に見せたい物もあるし、話したい大事な事があるんだ。今から行かないかい?」
「え?今から?今日は新しい本が入荷する日なんだけど!?」
「はぁ。レミー、本は逃げないから行きなさい。私が代りに店番もするからハルーと行きなさい!」
「は、はい…分かりました。」

 私はおばあちゃんに言われ渋々ハルーと喫茶店に行く事になった。ハルーは、私の右手を軽く握りおばあちゃんに軽く会釈しながら歩みを進めた。
 振り解こうと思えば出来るくらいの力でしか握られてはいなかったが。
 何故かハルーが私に敵意があるとも思わないからきっと話も渡される物も私にとって嫌な物じゃないのだろう。そう思うと私は振り解くのが少しだけ可哀想に思えてしまい、そっと入ってしまった力を抜く事にした。
 そしてレミーの右手は大切にされているかのようにハルーに喫茶店までの間握られていた。
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