異世界転生しました。〜優し過ぎる彼と冷た過ぎる私〜

黒狼 リュイ

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第5章  異世界編  森の国

ユキの心と雪乃の感情 2

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 この感情を一体どう説明すれば良いのだろうか?
 ある人が今までの人生で自分が幸せ者だと考える程幸せな事が続くとする。その人は幸福の真っ只中に居るわけだ。その人がもし突然目の前が真っ暗になるほどの絶望感に苛まれた時、「こういう時だってある」と軽く流せる。
 ーーだって私は幸福だから。と

 またある人は、今まで人生で不幸が続き過ぎるとする。自身が不幸の申し子の様に不幸が続く。そんな人が初めて幸福に直面すると幸福感では無く失意が勝ってしまう。「こんな事あり得ない」と。
 ーーだって私は不幸だから。と

 ユキ、いや雪乃は「不幸」しか体験した覚えは無い。もしかしたら「幸福」を体験していたかも知れない…だけど不幸が記憶に残っている。だから…

 ユキは今絶望感しかない。
 ヨウは太陽だ。彼は雪乃が亡くなったのは、自分のせいだと言う。
 だけどーー居ても変わらない。

 ユキの心は、ヨウに出会った時もしかしたら物語でよくある転生者かも知れない。そしてきっと彼は雪乃の知らない人で知らない場所から来たのだろう。そう思うと楽しかったし時間が暖かく感じていた。
 だが、冷たいユキ。絶望を知っている雪乃が暖かさなんか共有出来るわけも無い。
 
 だって目の前に居る人は、知っている人。
 唯一雪乃を幸福にさせた事があっただろう人だから。

「ユ…ユキっ!?どっ、どうし、たの!」

 ユキの氷の中自身の火の魔法を周囲に使いながら進むヨウ。そうして寒さを堪えながらユキの側に来るヨウを見ると余計にユキの氷魔法が暴走して行く。

「貴方が……なきゃ良かった…」

「ユキ‼︎…待って、何て言った…っ!?」

 ユキの魔法はユキ自身を飲み込み、ユキはヨウの前から姿を消した。
 ユキは独り森の中。
 リョクに逢いに行く。

 ヨウが太陽じゃなく、ヨウ・ファイ・アベル。どちらでも無く、その人だと疑わないくらい何も知らなきゃ一緒に居なきゃ良かった…

 そうして進み続けるユキの道は全てが真っ青で冷たく凍ったままだった。
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