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第5章  異世界編  森の国

"ヨウ"という人物 1

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「俺と彼女の事をユキに話すと、なんて言うか、なんだか嬉しい。変だよな…」

「…私は彼女を知らないから、勝手な思い出話に。つ、付き合ってあげるっ!」

 ユキは、薄っすら熱を持った顔を頬を隠す様によそ見しながら言った。
 雪乃はあの世界をヨウみたくそんなに思い出深い物も人も居ない。家族と日野 太陽。それだけだ。だけどヨウには、思い出深い人が居る。
 
(その人と離れ離れになっているのだから、寂しいだろうし辛く悲しいはず。少しでもヨウが気楽になれれば…)

「ありがとう、ユキ。ならもう少しだけ聞いて。俺が見た彼女を君にも知って貰えたらきっと彼女は一人にはならないから…」

「えぇ、聞くわ。」

 ユキ達は、すでに森の国の近くまで来ていた。だが、敢えて入口近くの岩陰で野宿をする事にした。
 ユキは、コーローが持たせてくれた食べ物の入った袋を手に取る。開けると二匹の魚と三枚の干し肉があった。そして、ユキは魔法を使い袋に入っていたコップに氷を入れた。
 しばらく溶けるまで待たなければならないが、ヨウの話しを聞いていればきっとあっという間だろうとユキは考えていた。
 すると、ヨウが不思議そうにコップの中を見つめていた。
 
「どうか…あっ、ヨウの分っ!ちょっと待って…!?」

 ヨウのコップを氷の魔法で形成しようかとしていたが、ヨウは側にあった木の株に魔法を打った。それは真っ赤に燃える火の魔法。みるみる内に株は小さくなる。そして、ヨウの手のひらサイズまで小さくなると火が急に消えた。そうして小さくなった木の塊の中心をまた火魔法でまるでくり抜く様に消していく。そうして、荒削りだが火の魔法で木のコップが完成した。

「ヨウ…いつの間に…それに火の魔法って」

「ユキを見てたら何となく使えた、でも火力が難しいね、これは中々。」

「ヨウ…貴方…」

「どうかした?」

「い、いや、大丈夫。ちょっと驚いて」

「ユキでも驚くんだ?ふん、まぁいいや。それよりユキのコップ貸して?それから俺のコップにも氷の魔法お願い出来る?」

「え?良いけど…」

「ありがとう、ユキ」

 そう言うとヨウはユキに自分のコップを渡してユキに氷を入れさせ、再度受け取った二人分のコップに入った氷を火の魔法で綺麗に溶かした。
 ユキは、ヨウの魔法に不安と恐怖を感じざる得なかった。なぜなら、氷の国を滅ぼした犯人はヨウ・ファイ・アベル。火の国の炎王であり火の魔法の最上"炎の魔法'の使い手なのだから…
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