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第4章 人間と魔族と見習い
命令とロボット 4
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「リ、リリサ!?」
彼は沢山の人達の間を潜り抜けて近くまで声を、せめて顔を見ればと群がる人々の間を時には殴られ、蹴られ、邪魔だと罵倒されながらも必死に近寄った。
なんとか辿り着いた目の前には、大きな御者の乗った馬車があった。その窓から見える少女は間違いなかった。間違えるわけもない。
「リリサ!リリサ!一緒に帰ろう!!手を伸ばして!さぁ」
彼はリリサに手を伸ばす、左手を足りないなら右手を、爪先立ちだって捻挫したって構わない。リリサが手を掴んでくれるまで伸ばし続ける。
ーーしかし、掴む事はなかった。
「リリサ!!ねぇ、お願いだから!つかんっ…くっ」
「…」
リリサの目にはあの頃の様な輝きも明るい笑顔も何も無かった。キラキラした声も柔らかかった手も、彼には届かず消えてしまっていた。
そのまま、リリサは彼の前からまた去っていった。彼は泣き叫んだ。
ーーまた失った…私が…リリサを…
彼は憎んだ、天から落とされたあの瞬間を
リリサを対象者にする理由を知らずに作ってしまった自分を
リリサをあんな風にした神を天を
『全てを恨んだ私は、禁術を使いました。それは、この世界をリリサを元に戻す為に、私では出来なかった事を成し遂げて貰うために…私は魂を材料に転生術を使った。』
彼は沢山の人達の間を潜り抜けて近くまで声を、せめて顔を見ればと群がる人々の間を時には殴られ、蹴られ、邪魔だと罵倒されながらも必死に近寄った。
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「リリサ!リリサ!一緒に帰ろう!!手を伸ばして!さぁ」
彼はリリサに手を伸ばす、左手を足りないなら右手を、爪先立ちだって捻挫したって構わない。リリサが手を掴んでくれるまで伸ばし続ける。
ーーしかし、掴む事はなかった。
「リリサ!!ねぇ、お願いだから!つかんっ…くっ」
「…」
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そのまま、リリサは彼の前からまた去っていった。彼は泣き叫んだ。
ーーまた失った…私が…リリサを…
彼は憎んだ、天から落とされたあの瞬間を
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『全てを恨んだ私は、禁術を使いました。それは、この世界をリリサを元に戻す為に、私では出来なかった事を成し遂げて貰うために…私は魂を材料に転生術を使った。』
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