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第1章 巻き込まれた社会人
見ず知らずの"助けて"
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その瞬間から俺を囲む様に火が光を放ち呑み込んだ。少年と共に俺は姿を消した。
ーー誰も事実を見ては居ない。
この後俺は、元居た世界と新たに来た世界とは切り離された様だ。
ただ、初めて会社に遅刻しただけで見ず知らずの少年を少し、ほんの少しだよ?
追いかけただけで炎の中に身を投げて人生を終わらせてしまった…情けないし、自分馬鹿だろ!と怒っても、全てもう遅い。
俺は、真っ暗な中、自身を振り返るしか出来ない。炎の中に居た俺はきっと死んだのだろう。だからこそ今目の前も周りも全てが真っ暗。
(死んだ後は、真っ暗とか虚しいだろ…はぁ…)
だが、一つだけ思い残した事がある。
少年の言った最後の一言。
「待ってました」
誰を?とはもう言わない。俺しか彼を追いかけて居なかったのだ。ただ、何故待っていたのか?火の中にまで逃げずに俺が来るのを待っていたのなら何故なのか?
少年に問いたかったけれど、それも叶わない…
まさか、こんな形で死を迎えるとは…
人生とは謎だらけだ。
そんな俺の深い失意を光で塗り潰そうとしんばかりの煌々とした明かりが俺を照らした。
今更眩しくて鬱陶しいと俺は、頑なに目を開けようとしてやらなかった。それなのに光はより強く明るく俺を照らした。
そして、次第に光だけでなく何かが聞こえた。初めは小さなその声は徐々に大きくハッキリと聞こえた。
「誰…?」
「待ってましたよ。貴方が来るのを」
その声に既視感を抱いた俺は、そっと目を開ける。すると暗闇に光る彼が居た。
「君は…」
「ようやく貴方が私を見つけて下さいました。」
「見つけたって…ってか!君のせいで俺は!!」
「貴方が私を見つけて下さったおかげで救われます。私の世界が」
「は?意味が、って俺も君も死んでっ!」
目の前の彼は、全く俺の言葉に返答などせずに勝手に話を進めて行く。何故彼は俺を知っているのか?俺は彼はどうなっているのか?肝心な事は一切言わない。
ただ、救われると何度も繰り返すだけ。
そんな彼に俺は言葉を掛けても無駄にしか感じない。
そうして彼は、黙る俺の身体に体当たりして泡の様に消えてしまった。まるで俺の中に吸い込まれた様に消えた彼に対しこれまた何故か驚きもしない。
ただ…俺の身体に響く声が
【"助けて…"】そう繰り返し響く。
だから俺はこう言った。
「助けてあげるよ。」と消えた彼に届く様に。
そうして俺は、"上野 未来"は"見ず知らずの少年"と共にこの世から消えた。
ーー誰も事実を見ては居ない。
この後俺は、元居た世界と新たに来た世界とは切り離された様だ。
ただ、初めて会社に遅刻しただけで見ず知らずの少年を少し、ほんの少しだよ?
追いかけただけで炎の中に身を投げて人生を終わらせてしまった…情けないし、自分馬鹿だろ!と怒っても、全てもう遅い。
俺は、真っ暗な中、自身を振り返るしか出来ない。炎の中に居た俺はきっと死んだのだろう。だからこそ今目の前も周りも全てが真っ暗。
(死んだ後は、真っ暗とか虚しいだろ…はぁ…)
だが、一つだけ思い残した事がある。
少年の言った最後の一言。
「待ってました」
誰を?とはもう言わない。俺しか彼を追いかけて居なかったのだ。ただ、何故待っていたのか?火の中にまで逃げずに俺が来るのを待っていたのなら何故なのか?
少年に問いたかったけれど、それも叶わない…
まさか、こんな形で死を迎えるとは…
人生とは謎だらけだ。
そんな俺の深い失意を光で塗り潰そうとしんばかりの煌々とした明かりが俺を照らした。
今更眩しくて鬱陶しいと俺は、頑なに目を開けようとしてやらなかった。それなのに光はより強く明るく俺を照らした。
そして、次第に光だけでなく何かが聞こえた。初めは小さなその声は徐々に大きくハッキリと聞こえた。
「誰…?」
「待ってましたよ。貴方が来るのを」
その声に既視感を抱いた俺は、そっと目を開ける。すると暗闇に光る彼が居た。
「君は…」
「ようやく貴方が私を見つけて下さいました。」
「見つけたって…ってか!君のせいで俺は!!」
「貴方が私を見つけて下さったおかげで救われます。私の世界が」
「は?意味が、って俺も君も死んでっ!」
目の前の彼は、全く俺の言葉に返答などせずに勝手に話を進めて行く。何故彼は俺を知っているのか?俺は彼はどうなっているのか?肝心な事は一切言わない。
ただ、救われると何度も繰り返すだけ。
そんな彼に俺は言葉を掛けても無駄にしか感じない。
そうして彼は、黙る俺の身体に体当たりして泡の様に消えてしまった。まるで俺の中に吸い込まれた様に消えた彼に対しこれまた何故か驚きもしない。
ただ…俺の身体に響く声が
【"助けて…"】そう繰り返し響く。
だから俺はこう言った。
「助けてあげるよ。」と消えた彼に届く様に。
そうして俺は、"上野 未来"は"見ず知らずの少年"と共にこの世から消えた。
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