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第1章 巻き込まれた社会人
駆け巡る情報と矛盾の行動
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俺は必死に走ってなんとか遅刻時間で文句を言われない様にともがいた。しかし、酒を飲んだ次の日。絶対に起こる現象は普段飲まない俺だから確実に襲って来た。
「っ…あっ…たま痛てぇ…うぅ…」
そんな俺が走れば胃も頭もムカムカ、ズキズキ来るもんで…
右にふらり、左にふらりを時々しながらもとりあえず前に進んでいた。
そんな俺の右横を誰かが通った。
普通の事だと一瞬で思い無視をしようとした。しかし、頭には通った"誰か"が物凄く気になる様で…気づくと足は反対に向いていた。
"誰か"の姿はちらっとしか覚えていないのに、何故か頭から離れない。
そして探し歩く為に経つ時間は、見知らぬ筈の"誰か"をより鮮明に思い起こさせる。
金髪で俯き目を伏せる小さな男の子。
いつも敬語で喋る癖がある。おまけに、彼には上司と呼ぶ者が多数居る。
だが、彼を名で呼ぶ者は誰一人居ない。
そんな言葉が頭を駆け巡る。初めは気持ち悪くなる感覚だった、頭を多くの情報が駆け巡る中、身体は走って止まらない。矛盾した行動に対して頭は自然と情報を受け入れて行く。
頭と身体がまるで別の人みたいな動きに俺は混乱状態だった。今だからこそ、納得出来る気がする。
これが"彼"との始まりだったのだろう。
俺は次から次へと送られる情報を抱えながら少年を探した。
どれくらい探しただろうか?
気付くと彼が目の前に居た。
何も話さない彼は、疲れて両膝を支えるしか出来ず歩くことすら出来ない俺の方を見ながら立っている。
「き、君…を…がして…はぁっはぁ…」
俺は、か細くなった声で彼に向けて言った。本当は、沢山声を掛けたかった。
この時の俺は、それほどまでに"彼"を他人には思えなかった。彼を追いかけて居る内に、沢山の頭に駆け巡る情報の数々が言いようの無い感情を抱いていた。
ーーそんな彼は何も言わない。
「…」
言わないまま彼は、俺の前から歩き出す。
(もう…歩けない…無理だ…)
俺は、彼は自分を馬鹿にしているに決まっている。そう思っている。だって俺もそう思うから…なんて馬鹿な事を…仕事行こう。
俺は、足を止めて引き返そうとした。が、目を離した時、悲鳴が聞こえた。
「キャャャーー!」
「誰かぁぁぁあ!」
「に、逃げろ…っ」
振り返ると目の前は真っ赤な炎に包まれていた。火災だ、それも大規模な火災。
俺も逃げなきゃと慌てたが、ふと思った。
(火災…彼が行った、方向だ‼︎)
また俺は、勝手に脚が動いた。
彼を追いかけて火の中に飛び込んだのだ。
そして、真っ赤に燃える中ようやく彼を見つけた。
彼は何もないかの様にそこに居た。
そしてこう言った。
「待ってました。」と…
「っ…あっ…たま痛てぇ…うぅ…」
そんな俺が走れば胃も頭もムカムカ、ズキズキ来るもんで…
右にふらり、左にふらりを時々しながらもとりあえず前に進んでいた。
そんな俺の右横を誰かが通った。
普通の事だと一瞬で思い無視をしようとした。しかし、頭には通った"誰か"が物凄く気になる様で…気づくと足は反対に向いていた。
"誰か"の姿はちらっとしか覚えていないのに、何故か頭から離れない。
そして探し歩く為に経つ時間は、見知らぬ筈の"誰か"をより鮮明に思い起こさせる。
金髪で俯き目を伏せる小さな男の子。
いつも敬語で喋る癖がある。おまけに、彼には上司と呼ぶ者が多数居る。
だが、彼を名で呼ぶ者は誰一人居ない。
そんな言葉が頭を駆け巡る。初めは気持ち悪くなる感覚だった、頭を多くの情報が駆け巡る中、身体は走って止まらない。矛盾した行動に対して頭は自然と情報を受け入れて行く。
頭と身体がまるで別の人みたいな動きに俺は混乱状態だった。今だからこそ、納得出来る気がする。
これが"彼"との始まりだったのだろう。
俺は次から次へと送られる情報を抱えながら少年を探した。
どれくらい探しただろうか?
気付くと彼が目の前に居た。
何も話さない彼は、疲れて両膝を支えるしか出来ず歩くことすら出来ない俺の方を見ながら立っている。
「き、君…を…がして…はぁっはぁ…」
俺は、か細くなった声で彼に向けて言った。本当は、沢山声を掛けたかった。
この時の俺は、それほどまでに"彼"を他人には思えなかった。彼を追いかけて居る内に、沢山の頭に駆け巡る情報の数々が言いようの無い感情を抱いていた。
ーーそんな彼は何も言わない。
「…」
言わないまま彼は、俺の前から歩き出す。
(もう…歩けない…無理だ…)
俺は、彼は自分を馬鹿にしているに決まっている。そう思っている。だって俺もそう思うから…なんて馬鹿な事を…仕事行こう。
俺は、足を止めて引き返そうとした。が、目を離した時、悲鳴が聞こえた。
「キャャャーー!」
「誰かぁぁぁあ!」
「に、逃げろ…っ」
振り返ると目の前は真っ赤な炎に包まれていた。火災だ、それも大規模な火災。
俺も逃げなきゃと慌てたが、ふと思った。
(火災…彼が行った、方向だ‼︎)
また俺は、勝手に脚が動いた。
彼を追いかけて火の中に飛び込んだのだ。
そして、真っ赤に燃える中ようやく彼を見つけた。
彼は何もないかの様にそこに居た。
そしてこう言った。
「待ってました。」と…
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