叶わぬ願いと望まぬ結末

第25章 勇者の心

勇者の暴走 2

　ミーラは、目の前の光景に目を閉じてしまいたかった…
　それは、ミーラがかつておかしてしまった惨状とは全く異なる光景。
　人も魔族もましてや建物さえも破壊し、血の海に変え瓦礫の下にはいくつかの日常であった物や者が埋まっていた。
　ミーラは、なんとか助けられはしないだろうか？助けられそうな人や魔族は？と周囲を見るが姿はない。
　耳を澄ますが声もしない…

「これを…ラルトが…そんなはず…」

　せめてと声を上げるが、返す声もない。全てが気持ちの悪い静けさに感じた。
　１秒たりとも此処には居たくない。そう本能が頭を締めつける。
　すると、唯一聞こえる微かな息遣いがミーラに届いた。

　それは、人間だった。

　幼い出立で槍を持つ人間。身の丈に合わない程の大楯を持つ人間。そして微かな魔力を感じる人間。
　三人ともかなりの衰弱だったが、一命はとりめている。そんな彼らにミーラは声を掛ける。ミーラには、人間だろうが今は関係ない。ただ、ラルトがしてしまったのか？真実を教えて欲しかった。

「君達！大丈夫か！？何が起きたんだ！」

　槍を持つ人間が言った。

「逃げた、方が、いい…」と

　盾を持つ人間が言った。

「嵌められた…」と

　魔力を感じる人間が言った。

「彼は…正気を、失った」と

　そして、さっきまで存在すら感じて居なかった筈の者がミーラの背に対し弓を向け矢を構え言った。
　　　　　　　　　　・・・
「もう遅いのですよ、ミーラお嬢様」と