叶わぬ願いと望まぬ結末

第19章 人間界と魔界

上空からの景色 1

　魔界へ人間が攻めてきたと、いち早く聞いたミーラはその姿を赤い竜に変えて魔界を隅々まで飛んだ。
　上空から見る地上は、真っ赤になっていた。一軒一軒、小さく明るい声が聞こえてきて居た家は全てが真っ赤に燃え盛り、一人一人が大切にして来た畑や作物は全てが黒い灰と化していた。
　ミーラはその全てを目に耳にした訳では無い。しかし、たった一部だけでもそう見えたし音にした光景はミーラの怒りを増幅させる。

『なんで…何もしていないのに…』

　上空でミーラは、苦しい程の消え入りそうな声を漏らす。上空で見えた残虐な光景に対して誰も抵抗すら出来ない。それはミーラも同じだった。
　地上の者達は、力ゆえに抵抗出来ないものが多い。しかし、ミーラ達のように力のある者達は気軽に力を使ってはいけない。
　それは、母ラルフが自ら子供達を救った時の話しをゼーラルから聞いた時に自身に問うたのだ。

(力を使っても誰かを傷付けるのなら、使う意味はないのではないのか？母様は、力を持って居ながら自分の為では無く、恨みを晴らす訳でも無く)

　母親の力は、種族を超えて。
　命を守る為に使われた。
　
　その時ミーラは思った。
　力を持って居ても使う時を選ばないといけないと。
　ミーラは、上空から見るだけで力を使わなかった。
　それは、地上の力無い者達がこれ以上力のある者達に痛い思いや辛い思いをさせられないようにする為だった。