叶わぬ願いと望まぬ結末

黒狼 リュイ

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第11章 明かされる歴史  ラルトside

愛情の在り方 2

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 ゼーラルがどれほど強いのかはっきりとは分からないが魔王の右腕だったのならそれなりに強いはず。それ以上という事はバルンハルトとはどんな魔族なのだろう。それに魔王ガルフがその魔族を束ねていたのだ。…勝てるだろうか。ラルトはどんどん暗くて深い不安の渦に巻き込まれていく。
 そんなラルトとしっかりと眼を合わせ、ゼーラルは呟いた。

「…大丈夫ですよ。貴方なら出来ます。…終わらせる事が」

「ゼーラル?何?今なんて??何を?」

 ゼーラルにラルトが迫るがゼーラルは「いえ」と返すだけで何も言わない。二人何も言わずに時は過ぎてしまう。目の前に映しだされた映像はいつの間にか消えてしまう。ラルトは何故か心が暴れ出してしまいそうになる。

(映像が終わったから?それとも知らないミーラを少しだけだけど見たから?それとも…なんだ?)

 ラルトは自身の心がより分からなくなる。映像の中のミーラがすごく心細いただの少女に見えた。小さなミーラは大人達や同世代の子達から期待と言う圧で見られてミーラ自体を見ている様にはとても見えなかった。そんなミーラを母親やゼーラルがそばにいて見ていた。けれどもミーラ自身が噂をきっかけに変わった。
 そんなミーラを見て自分はラルトは…この気持ちは…恋じゃないのかもしれない。
 そう思った…いや分かっていた。きっとこの気持ちは"家族"の暖かい愛情に近い。だからそうに違い無いと思う。

(なんだろう。…急に淋しくなるな…ははっ…)

 ゼーラルのミーラへの心配は、きっと自分が勇者として魔族のミーラを分かって放置して暮らした時。ミーラの新たな家族として見てくれて、だから助けられるのは俺だと思ったのではないだろうか?
 納得出来るけど、まだ往生際悪く肯定したくない自分が居た。

 そんな風に考え込み動かずに居たラルトにゼーラルは言った。

「貴方は私では無い。私はミーラ様にラルフ様に…ガルフ様にさえ何もできない。無力な魔族です。…貴方にも…」

「ゼーラル…?っ!?」

 ゼーラルはラルトを急に抱きしめた。それは、これから起こるだろう事を予測してか?何もできないと自分を下に突き落としてラルトに全てを任せた人だからこその悲しみ故か…ラルトには分からない。
 けれど、抱きしめられた腕に込まれた気持ちはきっとマイナスなんて無いだろ。きっとこの腕の暖かさ優しい包み方はミーラに届ける事のできなかった優しさ…
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