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第8章 勇者の覚悟 ラルトside
固い意志
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夕食後アミラとダットは何も言わず各部屋に入ってしまった。そしてザルとラルトは、ラルトの部屋に同時に入った。
部屋に入るなりザルが言った。
「さぁ、ラル。オレが知っている事を話そう。」
「早速で悪いけどお願いするよ。」
ラルトは部屋に入ってすぐの左側にある机の椅子に、ザルハルートは向かって右側のベッドの淵に腰掛けた。
ザルハルートは”アミラからさっき受け取った”とラルトの方に街で買った小さな林檎を放り投げた。ラルトは、おっとと言いながら受け取り2人は林檎を片手に話し出した。
「ザルは言ったよね?”魔王の娘?とやらが人間の村を襲撃して勇者候補を片っ端から倒したらしい”って」
「あぁ、バルンから聞いた。間違いはないんじゃないかと思うよ。」
「ならその”魔王の娘”と言われた者の詳細は知らないかい?襲撃されたのなら誰か見た人は居ないだろうか?」
「んーバルンから聞いたのは、確か…それだけのような?…あっ!」
「どっどうしたんだい?!」
ザルハルートは手の中にある真っ赤な林檎を天井に掲げハッとした。それを見たラルトはまさかと思いながら息を飲む。
(頼む、嫌な予感がする…外れてて…)
「確か赤い色が見えたと言って居た。うん、間違いない。この林檎の様な赤だろうきっと。」
「赤…そうか…(それが本当なら…いや)」
ザルハルートの答えに落胆したラルト。だが、続いてザルハルートは首を傾げながら言った。
「だけど妙なんだよ。」
「…妙って?」
「いやな、なんでバルンだけが知って居てオレやアミラ、それからダット。ましてやラル、勇者であるお前も知らなかったんだろうってさ」
(確かに…)
「勇者候補であるお前が先に知らないのはおかしくないか?伝えられててもおかしくない話だろ?普通なら」
「確かにそうだ。」
ラルトはザルハルートの言うことに一理あると思った。
勇者候補である自分でもパーティーメンバーになるであろう今此処にいるみんなでも無く、なぜ”バルンだけが知って居る”のだろうか。
もしかしたら自分達だけが知らなかったんでは無いか、もしくは知らされて居ないだけでは無いだろうか?
ならなぜバルンは、ザルにだけ教えた?それも自分から。
ラルトにはまだ知らない何かがあり、何か良く無い者が動いている。
ーーそんな風に感じられた。
そしてザルハルートは手にある林檎一つ食べ終わるまでラルトにバルンから聞いた話しをし、他に知っている事を全て話していった。
アミラとは同じ村出身であり、幼馴染みである事。
王からの召集には、アミラが呼ばれて居たが自分は村の為にアミラを守る為に自ら盾役として志願したのだとラルトに教えてくれた。
そして最後に一言だけ呟いた。
ーー護りたいのだ
と、心に刻み込むかの様に一言吐き出した。
それを見たラルトは感じた。
ーーザルは信念を持っている
のだと、それは揺るぎの無いほど強く固い
それこそ彼が愛用とする盾の様に決して倒れる事のない様な心をラルトは感じた。
部屋に入るなりザルが言った。
「さぁ、ラル。オレが知っている事を話そう。」
「早速で悪いけどお願いするよ。」
ラルトは部屋に入ってすぐの左側にある机の椅子に、ザルハルートは向かって右側のベッドの淵に腰掛けた。
ザルハルートは”アミラからさっき受け取った”とラルトの方に街で買った小さな林檎を放り投げた。ラルトは、おっとと言いながら受け取り2人は林檎を片手に話し出した。
「ザルは言ったよね?”魔王の娘?とやらが人間の村を襲撃して勇者候補を片っ端から倒したらしい”って」
「あぁ、バルンから聞いた。間違いはないんじゃないかと思うよ。」
「ならその”魔王の娘”と言われた者の詳細は知らないかい?襲撃されたのなら誰か見た人は居ないだろうか?」
「んーバルンから聞いたのは、確か…それだけのような?…あっ!」
「どっどうしたんだい?!」
ザルハルートは手の中にある真っ赤な林檎を天井に掲げハッとした。それを見たラルトはまさかと思いながら息を飲む。
(頼む、嫌な予感がする…外れてて…)
「確か赤い色が見えたと言って居た。うん、間違いない。この林檎の様な赤だろうきっと。」
「赤…そうか…(それが本当なら…いや)」
ザルハルートの答えに落胆したラルト。だが、続いてザルハルートは首を傾げながら言った。
「だけど妙なんだよ。」
「…妙って?」
「いやな、なんでバルンだけが知って居てオレやアミラ、それからダット。ましてやラル、勇者であるお前も知らなかったんだろうってさ」
(確かに…)
「勇者候補であるお前が先に知らないのはおかしくないか?伝えられててもおかしくない話だろ?普通なら」
「確かにそうだ。」
ラルトはザルハルートの言うことに一理あると思った。
勇者候補である自分でもパーティーメンバーになるであろう今此処にいるみんなでも無く、なぜ”バルンだけが知って居る”のだろうか。
もしかしたら自分達だけが知らなかったんでは無いか、もしくは知らされて居ないだけでは無いだろうか?
ならなぜバルンは、ザルにだけ教えた?それも自分から。
ラルトにはまだ知らない何かがあり、何か良く無い者が動いている。
ーーそんな風に感じられた。
そしてザルハルートは手にある林檎一つ食べ終わるまでラルトにバルンから聞いた話しをし、他に知っている事を全て話していった。
アミラとは同じ村出身であり、幼馴染みである事。
王からの召集には、アミラが呼ばれて居たが自分は村の為にアミラを守る為に自ら盾役として志願したのだとラルトに教えてくれた。
そして最後に一言だけ呟いた。
ーー護りたいのだ
と、心に刻み込むかの様に一言吐き出した。
それを見たラルトは感じた。
ーーザルは信念を持っている
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それこそ彼が愛用とする盾の様に決して倒れる事のない様な心をラルトは感じた。
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