叶わぬ願いと望まぬ結末

黒狼 リュイ

文字の大きさ
上 下
33 / 138
第7章 5年の始まり

5年の修行と誓い

しおりを挟む
 魔界に着いて、父様から現状やこれから何をするべきかを聞かされてからミーラの生活は目まぐるしく変化した。
 父様の力になる為に5年間を修行に費やした。
 魔力強化、魔力操作、魔力の具現化、魔力の扱いをありとあらゆる状況を考慮した上で訓練した。
 生易しいものでは無かったが、ミーラは訓練・教育・睡眠を繰り返していた。
 時には寝る間も惜しんで訓練に修行に没頭していた時もあった。その間にも父様から得られるものを吸収出来るものがないか、と父様を観察したりしていた時もあった。
 母様からは、戦いについて学んだことは無かったし何より、父様を知りたいとミーラ自身が思ったからでもあった。

 そして修行開始から一年が経ったある日、父様から直々に収集をされた。

「父様、用とはなんでしょうか?」
「うむ、ミーラよ。お前に我が魔王の秘技と母ラルフの形見を渡そう。」
「秘技と形見を?なぜ今私に?」
「秘技を会得するにはまる三年かかる。…それにラルフの遺言なのだ。お前にこれを渡して欲しいと。」

 父ガルフから受け取ったのは艶やかな金の装飾に真っ赤な宝石の首飾り。
 それには、母ラルフの暖かな魔力が込められていた。母様がくれた母様の形見は、肉体無き今魔力でその存在感を誇っていた。それを手に取ると感じる暖かさと力強さ。
 父様の顔をちらりと見ると優しい顔をしていた…懐かしい物を愛おしい物を見るようなその瞳は、ミーラに安心をくれ力を感じさせてくれる物だった。
 ミーラは、自らの首に着け握りしめる。すると、体内から溢れんばかりの魔力を感じた。
(母様が守ってくれる…そんな感じがする。母様…ありがとう…)
「…大事に、してやって欲しい。妻ラルフの想いがある気がするんだ。だから私もお前に持っていて欲しい。」
「はい…父様。」

 ふぅっと息を吐き父様に向き直る。
「…それで…秘技とは」
「あぁ。その話だったな。秘技とは我が魔王の血筋だけが伝えられ使う事の出来る最強の技だ。」
「最強の…父様は使えるのですか?」
「もちろんだ。だが、いざという時の為にお前にも使えるようになってもらわねばならない。」
「ならば、私は今からでも訓練を受ける覚悟です。母様の為に…民の為に引いては父様の為に」
「あぁ、では私が直々に教える。技の名は”破滅への業火”ドラゴンの血を持つ私とミーラお前にしかできない。覚悟はいいか?生半可な訓練では物には出来んぞ」
「もちろんです!父様!」

 ミーラは、力強く頷き首飾りを握りしめた。誓いを強く胸に刻む。
 それからミーラは残りの4年間を”戦術・魔力操作・魔力強化・知識”に”秘技習得”の為に注いだ。
 4年後に起きる戦争の為に、ミーラは思い浮かぶことを全てやり吸収出来るものは吸収した。
 そして、戦争は音を立てて近付く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

処理中です...