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第6章 魔界と魔王ガルム
父様と暖かさ
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バルンハルトや使用人達が部屋を後にしたその後は、しばらくの間無言だった。
ミーラは、父様であり魔王であるガルムの溢れんばかりの魔力と威厳に圧倒され言葉を発することも身動き一つ取ることも出来ないでいた。
そして先に沈黙を破ったのはそのガルムだった。
「…お前は…息災だったか?」
突然声をかけられたミーラは息を吸う事を忘れた様に一瞬固まってしまった。
はっと我に返ったミーラは、すぐに床に片膝をつき答えた。
「はい。父様。」
「…そうか。」
たった一言の会話を終了するとまた沈黙が辺りを埋め尽くす。何か話さなくては、色々と聞かなくてはと考えるが身体はなかなか次の動きをさせてくれないし、言葉は思考速度に口が動いてくれない。
不思議なもどかしさを感じた。
それほどまでに魔王で父親のガルムは”すごい”のだとミーラは身体と心で感じた。
その後も沈黙を間に挟みながらガルムはミーラに今まで何をして来たのかを聞いた。ミーラも少々たどたどしく話した。
”人間界で母様が亡くなった事”
”人間界で人間と生活をして来た事”
”バルンハルトに魔界へ連れ帰ってもらった事”
包み隠さず話した。
ただ一つミーラは嘘をついた。
”勇者候補と生活”を”人間と生活”と言って。
本来なら許されない事だろう。しかし、ミーラはバルンハルト以外に勘付く筈もない事を理由に決して自分から言わないと魔界に来る前に決めた。
ラルトが勇者候補なのは間違いない。しかし、勇者になるとは限らない。もしかしたら…上手く行けばラルトと戦わなくて済むのだ。
なら魔界の者に襲われるリスクを防ぐ事が出来るかもしれない。
だから…私は決して彼らを傷つけさせない。守ってみせる。私が彼らに護られた様に…
ミーラがたった一つの嘘をついたと知ってか知らずか、ガルムは何も言わずただ聞いていた。
ミーラが一通り話し終えるとガルムは聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
「やはり…『彼女』は…そうか…そう、だったんだな…」
「父様?」
「いや、なんでもない。大変な目にあったようだな。」
「いえ…私は。」
ミーラをまっすぐ見つめたガルムはミーラにたった一言言った。
『守ってあげられずすまない』
その一言を聞いてミーラの身体は崩れ落ちた。そして止まる事のない程の涙が溢れた。
(母様を失った悲しみは父様もきっと同じ…)
そう自分に言い聞かせ涙を止めようとするが…止まりはしない。止められないのだ。
すると父ガルムは、自らが座る椅子から立ち上がりゆっくりとミーラに自らに近寄り抱き寄せた。
ミーラは、一瞬固まってしまったが父様の暖かさを身内の暖かさを感じ目を瞑る。初めて会いこの目で見て触れた父様…母様程の暖かさは無いけれど…暖かい父様。
ミーラはこの暖かさを守りたい。守られる程弱い人では無いけれど…ただ守りたい。そう感じた…
ミーラは、父様であり魔王であるガルムの溢れんばかりの魔力と威厳に圧倒され言葉を発することも身動き一つ取ることも出来ないでいた。
そして先に沈黙を破ったのはそのガルムだった。
「…お前は…息災だったか?」
突然声をかけられたミーラは息を吸う事を忘れた様に一瞬固まってしまった。
はっと我に返ったミーラは、すぐに床に片膝をつき答えた。
「はい。父様。」
「…そうか。」
たった一言の会話を終了するとまた沈黙が辺りを埋め尽くす。何か話さなくては、色々と聞かなくてはと考えるが身体はなかなか次の動きをさせてくれないし、言葉は思考速度に口が動いてくれない。
不思議なもどかしさを感じた。
それほどまでに魔王で父親のガルムは”すごい”のだとミーラは身体と心で感じた。
その後も沈黙を間に挟みながらガルムはミーラに今まで何をして来たのかを聞いた。ミーラも少々たどたどしく話した。
”人間界で母様が亡くなった事”
”人間界で人間と生活をして来た事”
”バルンハルトに魔界へ連れ帰ってもらった事”
包み隠さず話した。
ただ一つミーラは嘘をついた。
”勇者候補と生活”を”人間と生活”と言って。
本来なら許されない事だろう。しかし、ミーラはバルンハルト以外に勘付く筈もない事を理由に決して自分から言わないと魔界に来る前に決めた。
ラルトが勇者候補なのは間違いない。しかし、勇者になるとは限らない。もしかしたら…上手く行けばラルトと戦わなくて済むのだ。
なら魔界の者に襲われるリスクを防ぐ事が出来るかもしれない。
だから…私は決して彼らを傷つけさせない。守ってみせる。私が彼らに護られた様に…
ミーラがたった一つの嘘をついたと知ってか知らずか、ガルムは何も言わずただ聞いていた。
ミーラが一通り話し終えるとガルムは聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
「やはり…『彼女』は…そうか…そう、だったんだな…」
「父様?」
「いや、なんでもない。大変な目にあったようだな。」
「いえ…私は。」
ミーラをまっすぐ見つめたガルムはミーラにたった一言言った。
『守ってあげられずすまない』
その一言を聞いてミーラの身体は崩れ落ちた。そして止まる事のない程の涙が溢れた。
(母様を失った悲しみは父様もきっと同じ…)
そう自分に言い聞かせ涙を止めようとするが…止まりはしない。止められないのだ。
すると父ガルムは、自らが座る椅子から立ち上がりゆっくりとミーラに自らに近寄り抱き寄せた。
ミーラは、一瞬固まってしまったが父様の暖かさを身内の暖かさを感じ目を瞑る。初めて会いこの目で見て触れた父様…母様程の暖かさは無いけれど…暖かい父様。
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