叶わぬ願いと望まぬ結末

黒狼 リュイ

文字の大きさ
上 下
29 / 138
第6章 魔界と魔王ガルム

魔王ガルムへの印象

しおりを挟む
そうこうしているうちに魔王部屋の扉まで来てしまった。扉からは溢れんばかりの魔力を感じた。
 バルンハルトは、扉を開ける直前に一言小さく呟いた。

”魔王ガルム…だけは…”

 聞こえた言葉は、一言一句はっきりは聞こえない。しかし、声から伝わる雰囲気は暗い感じがした。

(憎しみ…のような暗い感情…)

 まるでそんな感じだった。しかし、それはほんの一瞬だけで扉を開ききった段階でバルンハルトは笑顔を見せた。
 …もしかしたらこの段階で気付く方が良かったのかもしれない。そうしたら…違う結末になったのかもしれない…

 部屋の奥にある一際大きな椅子に腰掛けて居たのは、ミーラの父魔王ガルム。
 その眼は、血の如く紅く染まり髪は漆黒のように暗い黒。装いは和を感じさせる淡い赤だが、魔力は敵味方寄せ付けない程に膨れ上がり、まるで隙がない。そんな印象すら痛い程に感じてしまった。
 魔王ガルムに敵なんて居ないのではないか?
 娘の協力なんて必要はないのではないか?
 初めて見た父の偉大さにミーラはそう思う。

 そんなミーラを一目見たガルムは、言った。

「皆、下がれ。娘と2人で話がある。」
「はい。分かりました。」

 ガルムの指示に従ってバルンハルトは部屋を後にした。しかし、バルンハルトだけではなく姿や気配を消して居たのだろう。バルンハルトが出る直前にミーラは飛ばされそうになる程の風を感じた。
 それほどまでに魔王を守る者達が居たという事なのだ。

”父様を倒せる者なんて居ないのではないだろうか。”
 ミーラの感じていたその疑問は、確信に近い気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

処理中です...