叶わぬ願いと望まぬ結末

第5章 別れの時、始まる運命

暖かな味

 アーランド家の家へ帰る。ただそれだけの事。なのに…
 扉を開けるとそこは暖かなライトと暖かな抱擁がミーラを待って居た。
 扉の前には、涙を浮かべたアーリと入って来たラルトの頭をぐりぐりとするハーランが居た。そして、アーリは一直線にミーラに向かいミーラを力一杯抱きしめたのだ。暖かさについ貰い涙をしそうになった。…まるで母様に抱きしめられたように感じて居た自分がいたからだ。

「…ーラっミーラ！！いったいっ！いったい…何処にいたのっ！？」
「アーリ？…っ」
「あぁっ良かった…無事で…」
「母さん、良かったね。父さんの言った通りだろ？」
「そぅねぇ。ラルトがっ…連れて帰ってくれたわ」
「父さん、母さんただいま。」
「おかえり。2人とも」
(…ただいま…)

 私はアーランド夫妻を目の前に”ただいま”とは…なかなか言えなかった。…恥ずかしいのだ。今は。
 ミーラとラルトが犯人を追って家を飛び出した後に2人は帰宅したらしく、家に居ない事を知り驚いたアーリはハーランに落ち着けられながらもあたふたしていたらしい。
 その後2人は村人の人達から「2人は村を出て犯人を追った」と聞かされたらしく、取り乱したアーリを余所にハーランは「きっとラルトが連れて帰ってくる」と「ラルトを信じなさい」と言いアーリを再び落ち着けたらしい。
 後からラルトはハーランに長々と聞かされたと言っていた。
 
 そして、家に帰った2人はミーラとラルトと4人で食事をした。何故だろう。
 野菜炒めにスープ、卵焼き…いつもの食事。何も変わらないはず…なのに。いつもより暖かな雰囲気と優しい味をミーラは感じていた。