God & Devil-Ⅱ.森でのどかに暮らしたいミカエルの巻き込まれ事変-

日灯

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7章.Rex tremendae

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「ミカ、……ザプキエル殿…?」

 そのとき唐突に現れたのは、ゾフィエルだった。
 ミカエルは目を瞬いて、ザプキエルの方を向く。

「ちょっと話してくるから、ここにいてくれ」

 そうして、ゾフィエルを家の中に招いた。
 衛兵の制服を脱いで自分の服に着替えたミカエルは、リビングで待っていたゾフィエルに現状を伝える。

「――っつうことで、ルシのところに行くところだったんだけどよ、」

 ゾフィエルは真剣な顔をしている。

「一つ、聞いてもいいか」
「あ?」
「これまで、どこにいた? ナンバラ王国から帰国し、一番に会いにいこうとしたのだが。君はブランリスにいなかった」

 それからゾフィエルは、毎日ミカエルの気配を感じ取ろうとしていた。衛兵の任務で国外にいるのかもしれない。そうであっても、数日もあれば戻るだろう。そう考えていたのだ。
 ミカエルは肩の力を抜いて近くの椅子に腰かける。

「アクレプンにいた。ちょっと、息抜きにな」
「っあの国はッ、」
「話しただろ。みんな忘れてる。誘ってくれたのはヤグニエだ。別荘にいさせてもらって…。静かで落ち着く良い所だった」

 美しい自然や静けさ。自由に過ごせる時間。ミカエルの求めているものが、そこにはあった。

「アズラエルが来なければ、俺はまだアクレプンにいたと思う。わかんなくなっちまったんだよ。なんで、生きてんのか」
「ミカ…」
「ルシを取り戻す。それがいまの俺の全てだ」

 ゾフィエルはかすかに眉根を寄せて睫毛を伏せる。そこに待ち受ける最悪の結果でも見たような雰囲気だ。けれど次には、凛とした眼差しでミカエルを捉えた。

「私も行こう」
「……いいのか? 灰色頭、おまえより強いかもしんねえぞ」
「ああ」

 ゾフィエルにはやりたい事がある。前のルシエルが教会に反旗をひるがえした理由。それを知るために親衛隊に入って、隊長にまでなったのだ。
 ゾフィエルは、ふっと笑う。

「これも私の望みだったかもしれない。こういった時に、共に行ける自分であること。それがいま叶う」

 前のルシエルはゾフィエルに何も語らず決行し、逝ってしまったのである。
 決意を固めた瞳に頷いて、ミカエルは立ち上がる。

「力の融合、しとこうぜ。ヤりながらしたほうが効果あるんだったか?」

 あのルシエルに挑むのだ。できるだけ力を底上げしたい。それに、ここでゾフィエルを死なせるわけにはいかないだろう。

「セックスのことか。そのような説はあるが…」
「なら抱けよ。ザプキエルが待ってるから急がねえとな。俺の部屋とシャワルーム、どっちがいい?」

 するとゾフィエルは目を彷徨わせる。

「君は、いいのか? 嫌々やっても効果はないぞ」
「イヤなら言わねえよ。おまえはどうなんだ?」
「嫌なはずがない」

 即答したゾフィエルは、どこか複雑そうな表情をしている。

「なんだよ」
「……いや、色々考えてしまってな」

 少し前にミカエルが嫌な体験をしたであろうこと。彼の血筋、ルシエルの存在…。
 ゾフィエルは短く息を吐き、気持ちを切り替える。
 いまは、二人で無事に生きて帰ることを一番に考えよう。

「君のベッドでやろう。君が受け入れる側でいいんだな」
「おう」

 逆がいいって言ったらやらせるのか? などとうっすら思いつつ。
 ミカエルは上着を脱ぎながら、自室にゾフィエルを誘った。

「失礼する」
「上着はここにかけてくれ」
「ああ」

 バラキエルお手製のラックに上着を引っ掛けたミカエルは、引き出しからキレインを取り出し、さっさとアヌスを解しにかかる。
 ゾフィエルも上着を脱いで、ベッドと机と小さなチェストしかない部屋を見渡した。
 それからベッドのミカエルに視線を戻し、ビクリと身体を揺らす。
 ミカエルは服を着たまま四つん這いになって、お尻を上げていた。そうして、中を綺麗にする物を、奥まで行き届かせている。

「、私がやろう」
「これくらい自分でやる。んで、服脱いでいいか?」

 ミカエルは振り返って小首を傾げる。ルシエルに任せたとき、勝手に服を脱ごうとしたら止められたのを思い出したのだ。

「……そうしたいなら、そうしてくれ」
「おう」

 一人でさっさと準備を進めるミカエルに、ゾフィエルはなんとも言えない顔をした。
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