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5章.Dies irae
充足*
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振り返って彼を見る。
「……おまえも勃ってる」
「君に興奮した」
「どこでだよ?」
激しく喘ぐようなことはしていないし、誘うようなこともしていない。
「感じてる姿かな」
「……へえ」
ルシエルはゆっくりとミカエルに覆いかぶさり、柔らかな金髪を指で梳く。
さっさと挿れられる気満々だったミカエルは目を瞬いた。
情欲を宿した瞳は、それでも理性的にミカエルを捉えていて。
背中に触れる彼の唇。
胸から湧き上がるこの感情はなんだろう。
促され、お尻を上げる。入口に押し当てられた熱。期待に胸が高鳴った。
「挿れるよ」
「ん」
熱い猛りがゆっくりと入り込んでくる。
じわじわ奥へ、奥へ。ミカエルの呼吸に合わせて、ルシエルは急ぐことなく腰を進ませる。
ときどき止まって、また進んで。
「苦しい?」
「ぜんぜん、」
ここまで、衝撃的な快感もない。
「もう少しイケるかな」
「ッア゛、ァ…」
「ここまでにしておこう」
「いいっ。ちゃんと、入れろよっ」
ルシエルは少し戻って動きを止めた。初めてだけど知っている、奥の感じるところだ。
正しく言えば、感じるようになるところ。最初は鈍い痛みだったことを思い出す。
「今の君には気持ちよくないだろう」
「そのうちヨくなる」
「……また、そうなりたいのか?」
そうだ。これはミカエルの心に居座る空虚を埋めるための行為なのだった。
――だからゆっくりだったのか…?
おもむろにシャツを脱いだルシエルが目を寄越す。
「腰を下ろして」
「このまま?」
「そう」
繋がったまま横になり、後ろから抱き締められた。
背中に感じる体温。ナカには彼の熱がある。ルシエルのベッドで、彼に包まれて。
「ほんとにおまえ、ひょろひょろじゃなくなったな」
「だからそう言っただろう」
囁かれ、後ろから耳を食まれた。
「少しはマシになった?」
「……おう」
ミカエルもルシエルも射精していない。ガツガツ奥まで突かれたわけでもない。けれども、これまで感じたことのないような深く穏やかな充足感が確かにあった。
「不思議だな」
じわじわと湧き上がる幸福感。
本当は、こういうものかもしれない。互いに求め合ってする交わりは――。
「ぁっ」
「ごめん、動いた」
「いい。そのまま出せよ」
勃起したら出したいのは当然のことである。
ルシエルがゆっくり腰を動かし始める。
「っ平気?」
「ぁ…ん、ぜんぜんっ…っ」
強い刺激はないが、ミカエルは耳許で聞こえる彼の息遣いにも興奮してゾクゾクした。
「こんなんでっ、イける、のかっ?」
「君もイく?」
彼の手に前を包まれる。
ゆっくりとナカを突かれながら扱かれ、キュッと彼のを締めつけてしまった。
――そのほうがいいのか。
締めつけられた方が感じるだろう。ミカエルは意識的にナカに咥え込んでいるものを締めつけようとする。
「、どうしたの?」
「このほうが、イイだろっ?」
「……っ、君は器用だな」
ナカの猛りが大きくなった気がする。
「とてもエッチだ」
耳許で囁く艶やかな美声。
全身が熱くなった。
「っおまえに、言われたくねえッ」
ぎゅっとシーツを掴み、キッと後ろを睨みつける。
「君にはこの声も有効だったな」
「耳許で、しゃべんなっ」
感じるところに与えられる刺激も増して、ミカエルのものは爆発しそうだ。
「もうイきそう?」
「っ、おまえはっ?」
「俺も」
ルシエルの手がラストスパートをかける。
「っぁ、あ、でる――ッ!」
「くっ、」
ナカの締めつけにやられたのか、ルシエルも達したようだ。
射精してイったのに、じんわりとした快感に包まれている。ここまでじっくり焦らされたからだろうか。
「もう少し、このまま…」
「ああ」
心地良い気だるさと微睡のような快感にうっとりしているうちに、ミカエルは眠ってしまった。
――夜の静寂の中、愛しむように頬を撫で消えた存在があったことを、ミカエルは知らない。
「……おまえも勃ってる」
「君に興奮した」
「どこでだよ?」
激しく喘ぐようなことはしていないし、誘うようなこともしていない。
「感じてる姿かな」
「……へえ」
ルシエルはゆっくりとミカエルに覆いかぶさり、柔らかな金髪を指で梳く。
さっさと挿れられる気満々だったミカエルは目を瞬いた。
情欲を宿した瞳は、それでも理性的にミカエルを捉えていて。
背中に触れる彼の唇。
胸から湧き上がるこの感情はなんだろう。
促され、お尻を上げる。入口に押し当てられた熱。期待に胸が高鳴った。
「挿れるよ」
「ん」
熱い猛りがゆっくりと入り込んでくる。
じわじわ奥へ、奥へ。ミカエルの呼吸に合わせて、ルシエルは急ぐことなく腰を進ませる。
ときどき止まって、また進んで。
「苦しい?」
「ぜんぜん、」
ここまで、衝撃的な快感もない。
「もう少しイケるかな」
「ッア゛、ァ…」
「ここまでにしておこう」
「いいっ。ちゃんと、入れろよっ」
ルシエルは少し戻って動きを止めた。初めてだけど知っている、奥の感じるところだ。
正しく言えば、感じるようになるところ。最初は鈍い痛みだったことを思い出す。
「今の君には気持ちよくないだろう」
「そのうちヨくなる」
「……また、そうなりたいのか?」
そうだ。これはミカエルの心に居座る空虚を埋めるための行為なのだった。
――だからゆっくりだったのか…?
おもむろにシャツを脱いだルシエルが目を寄越す。
「腰を下ろして」
「このまま?」
「そう」
繋がったまま横になり、後ろから抱き締められた。
背中に感じる体温。ナカには彼の熱がある。ルシエルのベッドで、彼に包まれて。
「ほんとにおまえ、ひょろひょろじゃなくなったな」
「だからそう言っただろう」
囁かれ、後ろから耳を食まれた。
「少しはマシになった?」
「……おう」
ミカエルもルシエルも射精していない。ガツガツ奥まで突かれたわけでもない。けれども、これまで感じたことのないような深く穏やかな充足感が確かにあった。
「不思議だな」
じわじわと湧き上がる幸福感。
本当は、こういうものかもしれない。互いに求め合ってする交わりは――。
「ぁっ」
「ごめん、動いた」
「いい。そのまま出せよ」
勃起したら出したいのは当然のことである。
ルシエルがゆっくり腰を動かし始める。
「っ平気?」
「ぁ…ん、ぜんぜんっ…っ」
強い刺激はないが、ミカエルは耳許で聞こえる彼の息遣いにも興奮してゾクゾクした。
「こんなんでっ、イける、のかっ?」
「君もイく?」
彼の手に前を包まれる。
ゆっくりとナカを突かれながら扱かれ、キュッと彼のを締めつけてしまった。
――そのほうがいいのか。
締めつけられた方が感じるだろう。ミカエルは意識的にナカに咥え込んでいるものを締めつけようとする。
「、どうしたの?」
「このほうが、イイだろっ?」
「……っ、君は器用だな」
ナカの猛りが大きくなった気がする。
「とてもエッチだ」
耳許で囁く艶やかな美声。
全身が熱くなった。
「っおまえに、言われたくねえッ」
ぎゅっとシーツを掴み、キッと後ろを睨みつける。
「君にはこの声も有効だったな」
「耳許で、しゃべんなっ」
感じるところに与えられる刺激も増して、ミカエルのものは爆発しそうだ。
「もうイきそう?」
「っ、おまえはっ?」
「俺も」
ルシエルの手がラストスパートをかける。
「っぁ、あ、でる――ッ!」
「くっ、」
ナカの締めつけにやられたのか、ルシエルも達したようだ。
射精してイったのに、じんわりとした快感に包まれている。ここまでじっくり焦らされたからだろうか。
「もう少し、このまま…」
「ああ」
心地良い気だるさと微睡のような快感にうっとりしているうちに、ミカエルは眠ってしまった。
――夜の静寂の中、愛しむように頬を撫で消えた存在があったことを、ミカエルは知らない。
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