God & Devil-Ⅱ.森でのどかに暮らしたいミカエルの巻き込まれ事変-

日灯

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4章.Tractus

回想と現行*

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 彼の言葉を理解するのと、後ろに咥えた指を引き抜かれて何かを挿れられたのは、同時だった。

「っは、なっ…ぁっ…あっ」
「いつか信者がくれた玩具だ。そんなに太くないし、ほぐすのにうってつけだろう」

 それは入口付近の、ミカエルが感じる所を突いてくる。

「もっと強いほうがいいか」
「やっ、いいッ…アッぁ…あぁっ、弱めろってッ…」
「自分ばっかり善がってないで、さっさとしてくれる?」

 顎を掴まれ、上向かされた。ミカエルは身体をびくびく震わせ口を開くと、彼の一物を奥まで咥えた。

「ふ、ぅっ…」
「拍子抜けだな」

 言葉の通り、彼はあまり反応していない。
 ミカエルはもたらされる強い快感に耐えながら、嫌がる心を叱咤して、いつものようにやってみることにした。
 彼の顔を見上げて舌を這わせて、先端にちうと吸いつく。愛しむように唇ではむはむし、淫らな音を立てながら咥内で扱いて見せた。

「へえ。君はいつも、そんな風に男を誘っていたのか」
「っ、ちがっ」

 カッと体温が上がる。

「そういえば、あの宮殿で君を見つけたときも、嬉しそうに腰を振ってたな」
「……っ、ぁうっ…」

 嬉しいはずがない。嫌に決まっている。けれど感じて、ナカだけでイってしまった自分を思うと、ミカエルは抗議もできなかった。

「彼らに、他に何をした? それで何をしてもらったんだ」

 唐突に頭を掴まれ、彼からぐいと引き離されてしまった。そういえば、ナカに挿れられている物の動きが止まっている。

「俺にもやってごらんよ」

 ミカエルは死刑宣告を受けたような気分になった。
 たくさんの記憶が頭に浮かんで、唇が震える。
 
「……い、ろいろ、やったから…」
「君の物覚えの良い頭は、どうやら忘れてないようだ。時間ならある。すべて見せてもらおうか」

 ――見られたくない。

 あんな自分は、ぜんぜん自分らしくない。あんな自分を見られたら――。

「どうした? 覚えているんだろう」
「ッ好きでやったんじゃねえ」

 視線が下がっていたところを、顎を掴んで上向かされた。なんとか鳶色の瞳を睨みつけると、艶やかに細められる。

「俺に見られるのが嫌なのか」
「……」 
「失望されることを恐れてる?」

 ミカエルは眉根を寄せて目をそらす。
 ルシエルは腰を折り、ミカエルの耳許で囁いた。

「俺はどんな君を知っても嫌にならない。すべて晒してしまえば、君は楽になるだろう」

 ミカエルの喉がコクリと鳴る。

「……すべて?」

 想像すると、身体中に甘美な痺れが走った。

「ああ。君が見せたくないと思っている君も、すべて」

 ミカエルは視線を逸らしたままだったが、意を決して男たちにされた事を最初から話し始めた。記憶はまだ生々しく、まざまざと思い出せる。

「やって」

 ルシエルは度々そう言って、ミカエルに実演させた。

『舌を使え。中に出してやるからな。そしたら、口を開いてよく見せろ』

 喉奥にそのまま放たれることが多かったが、口の中に出されたこともあった。
 そんな話をしたときも、そうだった。

「けど、ナカに出してほしいのに」
「あと一回くらいできる」

 後ろに咥えている玩具が激しく動きだし、ミカエルは喘ぎながら彼の一物を口に咥えた。
 自ら喉の奥深くまで受け入れ、苦しくて視界が滲んだが、彼のが反応を見せ始めたことに喜びを感じる。
 ――嫌にならないと言ってくれたから。
 強い刺激に腰が揺れてしまっても、頭を撫でられると許されたような気になった。
 
「出すから、口で受け止めて」

 後ろに咥えている玩具が動きを止めた。熱い猛りがドクリと脈打つ。ミカエルは喉奥から彼を引き抜き、放たれるものを咥内で受け止めた。
 口を開いて出されたものを彼に見せ、許しを得て咀嚼し飲みこむ。ルシエルのだと思うと、そんなに嫌な気がしない。むしろ、

 ――ナカに出してほしかったのに。

 残念だ。
 口を開いて、すべて飲みこんだことを証明する。

「どうして拗ねたような顔をする」
「べつに。……ナカにほしかったんだよ」

 無言の圧力に負けて言えば、ルシエルは眉を上げた。

「続けよう。それから?」

 ミカエルは冷たいタイルの床に寝そべり、股を開いて、よく見えるように下からお尻を持ち上げた。ルシエルの前でやると、自分がどんなに浅ましいことをしてしまったのか痛感して嫌になる。
 記憶に沿って幾つか誘うようなことを言っても、ルシエルは高みの見物だ。咥えていた玩具を抜き取られ、物欲しそうにヒクつくのをじっと見られたのは耐えがたかった。

「……っおまえ、シてくれるんだよな…?」
「あとでね」

 それから自慰させられた事を話すと、彼がリビングから持ってきた椅子の脚を使って実演することになった。

『腕は後ろで組め。お前の痴態を俺によく見えるようにするんだ』

 ここに隊長はいない。
 鳶色の目が、じっとミカエルを見下ろしている。

「っ…ん……ぁっ…」

 早く奥にルシエルのが欲しい。そんな無意識の思いがミカエルを突き動かしていた。

「健気だな。それとも淫らなだけか? 腰が揺れている。こんな事をさせられているというのに…」

 呆れたように言われ、我に返って顔が熱くなる。

「ぁっ…あ…」
「イクときは言いなよ」
「っぁ、イクッーー!」
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