God & Devil-Ⅱ.森でのどかに暮らしたいミカエルの巻き込まれ事変-

日灯

文字の大きさ
上 下
96 / 174
4章.Tractus

シャワールーム*

しおりを挟む
 二人は小さな家のドアを開く。燭台に明かりを灯して進んだ。
 ここは、彼女のもとを訪れた人が泊まる、宿のようなものなのだろう。ベッドと小さなテーブルしかない狭い部屋が、幾つかあった。

「シャワールームだ」

 新たなドアを開いたミカエルは、振り返って言う。

「ここでヤろうぜ」

 するとルシエルは、小さく息を吐きだした。

「なんだよ」
「……べつに」
「立ったままでもできるだろ」

 ルシエルがなんとも言えない表情をしているので、ミカエルは首を傾げる。

「言えって」
「……君がずいぶんこ慣れた様子でね」
「仕方ねーだろ。色々体験しちまったんだから」
「聞いたけど、」

 ルシエルの視線は壁のほう。

「ルシ?」
「君は。少し見ないうちに、害悪に曝されて」
「……おう?」
「俺は必死で、自分を押さえつけているのに」
 
 彼の手が頬に伸びる。ミカエルは視線を彷徨わせ、遠慮がちに薄い唇を開いた。

「俺、唇は奪われてねえから」
「……どういう意味?」
「口付けって、好き合ってる同士がやるんだろ。ヤグニエのやつ、"俺にも良心はある" って」

 ルシエルの手がピタリと止まった。無言で見詰められ、ミカエルは戸惑う。

「言いてえことがあるなら言えって」
「……。本当にここでヤるつもり?」
「おう。港町でアレ買っといてよかったな」

 例のナカを綺麗にする物を、しっかり手に入れていた二人である。

「腹具合も落ち着いたし。今からシようぜ」

 さっそく服を脱ぎだしたミカエルに、ルシエルはため息を吐いた。

「軽いな」
「それでいいからな。変な気使うなよ」

 聖学校の脱衣所で幾度となく裸を晒しているミカエルに、躊躇はない。

「おまえも脱げって」

 ルシエルが肩をすくめて上着を脱ぎだす頃、ミカエルは自身のアヌスにナカを綺麗にする物――キレインという名称らしい粒を入れ、四つん這いになって奥まで行き届かせようとしていた。

「情緒もムードもない」
「……ああ、俺だけ準備できてもダメだったな」

 いつも相手が勝手に盛ってきたので失念していた。
 ミカエルはシャツ姿になったルシエルを見上げて言う。

「口でやるから出せよ」
「……は?」
「なんだっけ…、フェラ? イけそうになったら、ナカ突っ込んでくれ」

 ルシエルは苛立ったようにしゃがみ、ミカエルと視線を合わせた。

「俺に抱いてほしいんじゃないの」
「だから、そのための準備だろ。俺、けっこう上手いらしいぜ。すぐに大きくして出しちまう奴、多かったしな。おまえにはナカに出してもらわねえといけねぇけど…」

 話しているうちに鳶色の瞳から感情が消え、影に覆われていくようだった。
 ミカエルは口を噤む。

「……わかった。君の望み通りにしよう」
「……おう」
 
 威圧感漂う声に顎を引き、小さく頷いた。
 ルシエルは億劫そうに立ち上がり、ベルトを緩める。下履きから取り出されたそれは、ミカエルが見てきたもののようにグロテスクではなく、どこか作り物めいていた。そう感じるくらい、綺麗だった。

「ほら、咥えて高めるんじゃないの」
「ああ、」

 冷たい眼差しは見下すようだ。そんな目は見慣れたはずなのに、ツキリと胸が痛む。
 ミカエルは睫毛を伏せて舌を出し、裏筋を舐め上げ口に咥えた。

「へぇ、本当に慣れてるな」
「ん…」
「後ろの準備もしたら?」

 口に咥えながらお尻の谷間に手を伸ばす。
 いきなり指を入れたのに、普通に入った。妙薬とやらに身体を変えられてしまったからだろうか。入口が濡れているように感じ、かすかに眉根が寄った。

「口が疎かだ」
「ぅぐっ…は、ぁ…ぉえっ…っ」

 いきなり奥まで突っ込まれ、視界が滲んだ。うっすら思っていたのだが、彼のは長い。

「どうした、上手いんだろう? いつものようにやってご覧よ」

 悪夢のような日々のなかでは、見せつけるようにしたりして、ヤグニエ曰くムードを高めることを心がけていた。――早く終わってほしかったから。けれど、ルシエルにやるのは気が進まない。付き合ってもらっているのだから、早く終わらせたほうがいいだろう。そう思うのに、心が拒む。

「考え事をするなんて余裕だな。後ろを解すのを手伝ってやろう」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...