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2章.Kyrie
知らない感覚
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十回打ち終わると、コカビエルは教師らしく言った。
「いいか、教師をおちょくるのも大概にしろよ」
「してないデス」
「まだ言うか。あんなにバカにしたような歌い方をしておいて!」
「ここ来るまで歌ったことねかったからっ、本当に、わかんねえデスっ」
ジンジンするお尻を再び打たれ、ミカエルは堪らず声を上げた。
「……本気で言ってるのか?」
「本気デス」
ミカエルは涙目で眉根を寄せている。
その顔をまじまじと眺めたコカビエルはポカンとし、おもむろに手を上げた。
「あー、つまり君は、本当に真面目にやっていたんだな」
「ハイ、センセー」
「……わかった。君の言葉を信じよう」
コカビエルはミカエルを押さえつけていた二人を退室させ、ポケットから小さな丸い物を取り出し、蓋を回して開けた。
ミカエルは肘をつき、少し身体を起こして後ろに立っているコカビエルを見ている。
「治癒クリームさ」
塗り込まれるとスースーした。
やたらと揉んでくるのも、効果をいきわたらせるためだろうか。
「どうだ、痛みはなくなったか?」
「ハイ、センセっ」
「スベスベになったな」
大きく揉まれると性器にまで刺激がいって感じてしまう。
「せんせ、」
「感じちまったか。ここはどうだ? ん?」
「なっ…?」
「痛い思いをさせてしまったからな。今度は気持ちよくさせてやるからな」
コカビエルはミカエルの耳許で囁くと、手を止めるどころか、太ももの内側や腰のほうまで撫でてくる。
「細身で筋肉質には見えないが…。君は森で育ったんだったか。自然に培われた筋肉は違うなぁ」
ミカエルはゾクゾクする感覚に耐え切れず、好き勝手に動く手を掴んだ。
「もういいデスカ」
「そのままじゃツライだろう。イかせてやる」
「は、」
次の瞬間、性器を手で掴まれ固まる。
なんといっても急所だ。
ヒヤリとして呼吸が浅くなったところに、予想外にも甘い刺激がもたらされ、ミカエルは驚いて目を丸くした。
「若いな。もうこんなになって」
「まっ、出るからっ」
「出していいぞ。そのためにやってるんだ」
コカビエルはミカエルに覆い被さって耳を食み、首筋に舌を這わせた。
片方の手はミカエルの急所を包みこみ、ほどよい刺激を与えている。もう片方の手は驚いて緩んだミカエルの手を逃れ、相変わらず好き勝手にしなやかな身体をまさぐっていた。
中心に熱が集まって、今にも爆発しそうだ。
鬱陶しく纏わりつく手や舌の感覚。耳許で聞こえる荒い息。
ミカエルは後ろに押したり身体を振ってコカビエルを退かそうと試みたが、上手く力が入らず無理だった。
「ホントに、出るっ」
「ああ。イけ」
「ッ――――!」
言葉とともに先端を刺激され、視界が弾けた。
「ずいぶん溜まってたみたいだな。あんまり自分でやらないのか?」
ミカエルは脱力してかすかに頷く。
コカビエルがどこからかタオルを持ってきて、身体を綺麗にしてくれた。
疲れたようなスッキリしたような、なんとも言えない気分だ。とりあえず、お尻の痛みがなくなってよかったと思っておこう。
「尻の件はペネムエル先生には内緒な。勝手に治したことが知られたら、お互い面倒だ」
ミカエルは頷いて服を着た。
「問題は讃美歌だな。言い方も真似してごらん。もう一度やってみよう」
そういえば、そんな話だった。
短いフレーズをゆっくり大げさにやってくれたコカビエルの真似をしたところ、コカビエルは頭を抱えて「マシになった」と言った。
「明日から、放課後はここで練習だ。お、もうこんな時間か。今日はここまでにしよう」
「……アリガトウゴザイマシタ」
部屋から出ると、コカビエルは歌の練習をしていた生徒たちにも終了を告げた。
彼らに紛れてミカエルも寮に戻る。
「僕、昨日先生の部屋に行ったんだ」
「それなら僕だってあるよ」
「僕はお宝まで見せてもらった」
「お宝って、力が宿ってる石のこと?」
前を行く生徒たちの話に、ぼんやりと意識を向ける。
「剣さ。黒い剣」
「へー?」
「スゴいんだぞ。トルマリンが練り込まれてるんだから」
ミカエルはハッとしてその生徒の肩を掴んだ。振り返った生徒は驚いて首をすくめる。
「な、何?」
「いや…、それは、どうスゴいんだ?」
「おい、ちょっと顔が良くて強いからって調子に乗るなよ」
「あ?」
隣にいた生徒に睨まれ、彼らは貴族なのだろうと当たりをつけたミカエルは、半目になって言葉を改めた。
「もっと話が聞きたいデス」
「……まぁいいだろう」
「その剣は、あらかじめ力を蓄えておけば、いざって時に力のこもった攻撃ができるんだって」
やはり、これはルシファーが話していた物に違いない。
「なかなか手に入らないって言ってた」
「へぇ、僕も見てみたい。次に呼ばれたらおねだりしちゃおっ」
コカビエルの部屋に行ってその剣を奪ったら、すぐにバレてしまうだろう。そのまま結界を破って外へ逃げられるならともかく、力を蓄える時間が必要だ。
考えながら歩いていたら、寮に着いていた。
「いいか、教師をおちょくるのも大概にしろよ」
「してないデス」
「まだ言うか。あんなにバカにしたような歌い方をしておいて!」
「ここ来るまで歌ったことねかったからっ、本当に、わかんねえデスっ」
ジンジンするお尻を再び打たれ、ミカエルは堪らず声を上げた。
「……本気で言ってるのか?」
「本気デス」
ミカエルは涙目で眉根を寄せている。
その顔をまじまじと眺めたコカビエルはポカンとし、おもむろに手を上げた。
「あー、つまり君は、本当に真面目にやっていたんだな」
「ハイ、センセー」
「……わかった。君の言葉を信じよう」
コカビエルはミカエルを押さえつけていた二人を退室させ、ポケットから小さな丸い物を取り出し、蓋を回して開けた。
ミカエルは肘をつき、少し身体を起こして後ろに立っているコカビエルを見ている。
「治癒クリームさ」
塗り込まれるとスースーした。
やたらと揉んでくるのも、効果をいきわたらせるためだろうか。
「どうだ、痛みはなくなったか?」
「ハイ、センセっ」
「スベスベになったな」
大きく揉まれると性器にまで刺激がいって感じてしまう。
「せんせ、」
「感じちまったか。ここはどうだ? ん?」
「なっ…?」
「痛い思いをさせてしまったからな。今度は気持ちよくさせてやるからな」
コカビエルはミカエルの耳許で囁くと、手を止めるどころか、太ももの内側や腰のほうまで撫でてくる。
「細身で筋肉質には見えないが…。君は森で育ったんだったか。自然に培われた筋肉は違うなぁ」
ミカエルはゾクゾクする感覚に耐え切れず、好き勝手に動く手を掴んだ。
「もういいデスカ」
「そのままじゃツライだろう。イかせてやる」
「は、」
次の瞬間、性器を手で掴まれ固まる。
なんといっても急所だ。
ヒヤリとして呼吸が浅くなったところに、予想外にも甘い刺激がもたらされ、ミカエルは驚いて目を丸くした。
「若いな。もうこんなになって」
「まっ、出るからっ」
「出していいぞ。そのためにやってるんだ」
コカビエルはミカエルに覆い被さって耳を食み、首筋に舌を這わせた。
片方の手はミカエルの急所を包みこみ、ほどよい刺激を与えている。もう片方の手は驚いて緩んだミカエルの手を逃れ、相変わらず好き勝手にしなやかな身体をまさぐっていた。
中心に熱が集まって、今にも爆発しそうだ。
鬱陶しく纏わりつく手や舌の感覚。耳許で聞こえる荒い息。
ミカエルは後ろに押したり身体を振ってコカビエルを退かそうと試みたが、上手く力が入らず無理だった。
「ホントに、出るっ」
「ああ。イけ」
「ッ――――!」
言葉とともに先端を刺激され、視界が弾けた。
「ずいぶん溜まってたみたいだな。あんまり自分でやらないのか?」
ミカエルは脱力してかすかに頷く。
コカビエルがどこからかタオルを持ってきて、身体を綺麗にしてくれた。
疲れたようなスッキリしたような、なんとも言えない気分だ。とりあえず、お尻の痛みがなくなってよかったと思っておこう。
「尻の件はペネムエル先生には内緒な。勝手に治したことが知られたら、お互い面倒だ」
ミカエルは頷いて服を着た。
「問題は讃美歌だな。言い方も真似してごらん。もう一度やってみよう」
そういえば、そんな話だった。
短いフレーズをゆっくり大げさにやってくれたコカビエルの真似をしたところ、コカビエルは頭を抱えて「マシになった」と言った。
「明日から、放課後はここで練習だ。お、もうこんな時間か。今日はここまでにしよう」
「……アリガトウゴザイマシタ」
部屋から出ると、コカビエルは歌の練習をしていた生徒たちにも終了を告げた。
彼らに紛れてミカエルも寮に戻る。
「僕、昨日先生の部屋に行ったんだ」
「それなら僕だってあるよ」
「僕はお宝まで見せてもらった」
「お宝って、力が宿ってる石のこと?」
前を行く生徒たちの話に、ぼんやりと意識を向ける。
「剣さ。黒い剣」
「へー?」
「スゴいんだぞ。トルマリンが練り込まれてるんだから」
ミカエルはハッとしてその生徒の肩を掴んだ。振り返った生徒は驚いて首をすくめる。
「な、何?」
「いや…、それは、どうスゴいんだ?」
「おい、ちょっと顔が良くて強いからって調子に乗るなよ」
「あ?」
隣にいた生徒に睨まれ、彼らは貴族なのだろうと当たりをつけたミカエルは、半目になって言葉を改めた。
「もっと話が聞きたいデス」
「……まぁいいだろう」
「その剣は、あらかじめ力を蓄えておけば、いざって時に力のこもった攻撃ができるんだって」
やはり、これはルシファーが話していた物に違いない。
「なかなか手に入らないって言ってた」
「へぇ、僕も見てみたい。次に呼ばれたらおねだりしちゃおっ」
コカビエルの部屋に行ってその剣を奪ったら、すぐにバレてしまうだろう。そのまま結界を破って外へ逃げられるならともかく、力を蓄える時間が必要だ。
考えながら歩いていたら、寮に着いていた。
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