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第四十四話 魚人間

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 その途中。

 ドォォォォン!!

「なんだ、爆発?」

「む、むむ村の方からです!」

 大きな爆発音を聞いて驚いて緊張しているのにも関わらず、イヤリス大尉は噛まずに村のある方向を指差した。
 爆発よりもそれが一番衝撃だ。撫でていた影響だろうか。

「そうだな」

 嬉しい気持ちが込み上げ、異常事態なのについ頭を撫でた。
 これで次また緊張しても、噛まずに喋ってくれるだろうか。

「ふにゃ~~」
 
 イヤリス大尉は気持ちいいのか、微笑ましい顔になる。
 可愛い。
 が、すぐハッとなり。

「こ、こんなことし、しししてる場合じゃないでしゅ!
 村へ急ぎまちょっ――」

 ……噛んじゃったよ。
 ……でも可愛いからいいか。
 3秒で気持ちを切り替える。

「ああ、急ごう」

 噛み言葉を鼻でクスッと笑い、村へと駆け出す。
 私の顔を見たイヤリス大尉は、顔を赤くしながら強めの口調で話しかけてきた。

「く、クロノ中佐、い、い今私をば、バカにしましたきゃっ!」

「するわけないだろ、ほら行くぞ」

「ほっ。そ、そうですか~」

 いきなり立ち止まって、胸を撫で下ろして安心するイヤリス大尉。
 なんで立ち止まった?
 時間が惜しいので、私は彼女の手を握った。

「!? な、なななんで手を――!」

「立ち止まっている時間はないぞ」

「へ」

 ドッ!

 思いっきり大地を蹴って、飛ぶように高速で駆け出す。
 
「あ、あわわわ~、は、はは速すぎでしゅ!!」

 私のスピードについていかず、宙に浮いて紐のようにゆらゆら引っ張られているイヤリス大尉。その顔は涙目になっている。
 
「すまない、少しペースを落とす」

「あわわわわ――!」
 
 さっきよりもスピードを落として手を引っ張りながら、爆発のあった村へと走って向かう。

 ◇
 
 ドォォォォン!!

「ぐぁぁぁ――!!」

 体が爆発して、身の丈ほどある太刀を持った男が一人、膝から地面に崩れる。

「くそぉ……」
 
 背丈が高く金髪で美形だが、今その顔は泥や傷で汚れており、左頬には謎の刺青が付いていた。
 身に付けている金色の鎧は錆びたように汚れており、あちこちに傷がついてぼろぼろだ。

「ギョギョギョ」

「やっと追い詰めたギョ」

 その男を見下ろす人影が二つあった。
 人間のように手と足があるが、顔は魚、体も魚という奇妙な姿をしていた。
 さらには体も手足も色は墨で塗られたように真っ黒、しかも体は金属でコーティングされているようにピカピカしている。
 その魚人間の手には銃と思わしき形状の武器が握られており、銃口をぼろぼろの男に向けていた。

「まだ……だ」

 男が太刀を支えにして立ち上がる。
 が、しかし。

「まだ起き上がれるのかギョ」

 ドォォォォン!

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」

 魚人間の手にあった銃からドロっとした液体が吐き出され、男にかかってシュウシュウ音を出した後、大爆発する。
 爆発する液体をくらった男は、今度は背中から大の字で倒れた。

「ギョギョ、やっとくたばったギョ」

「意外と頑丈なやつだったギョ」

 銃を口の中にしまい、倒れた男の足を掴もうとする魚人間。
 その黒い手が、男の足に触れた。
 その時。

「まだ……まだぁ!」

「「ギョ!」」

 上半身だけ男は起き上がる。そして、手に持っていた太刀に赤いオーラを纏い、最後の力を振り絞り、魚人間へと横一閃に切りかかる。

「『レッドスラッシュ』」

 が、その太刀が魚人間へととどく前に、男の手から太刀が落ちた。

「ち……くしょ……」

「ギョギョギョ」

「びっくりさせるなギョ」

 魚人間は口を開いて銃を手に取り、銃口を男へ向けた。
 これで終わりか。
 男が諦めたその時。

「おい!」
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