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第三十話 階級と強さ

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「シーナ大佐」

「よろしい」

 言われた通り名前を呼んだら、シーナ大佐は満足したように頷いた。

「余はクロノ。お前のような人材を待っていた」

「私のような?」

「そうだ。ガーディアンズには一番隊から千番隊までの隊が存在し、それぞれの隊によって人数も強さも理念もバラバラだが、余がトップの第二十六番隊では、『一騎当万』の猛者を集めていてな。お前でちょうど10人目だ」

 一騎当万と聞き、私はすぐ右にいるスリカ少佐に顔を向けた。

「スリカ少佐も強いのか?」

「当たり前だろ。自分は少佐だぞ! しょ、う、さ!」

 少佐を強調しながら鋭い眼光で私と目を合わせるスリカ少佐。
 私より身長の低い彼女が睨むと、自然と上目遣いになって可愛い。頭撫でようかな。
 そう思っていると、シーナ大佐が口を開いた。

「スリカの言う『少佐』というのはガーディアンズでの階級であり強さの証だ」

「強さの証?」

「そうだ。我が隊のトップである余、自らが直々に教えてやる。スリカ、ホワイトボードを出せ」

「了解です!」

 スリカ少佐がぶつぶつ呟き、幾何学模様がシーナ大佐の座る机の横に浮かび上がり、そこから突然白い板が現れた。

「確かガーディアンズでは階級ごとにこう定めていたはずだ」
 
 そう言い、その白い板に付いていた黒いペンを握りしめ、シーナ大佐が白い板にいろいろ書き出した。
 そこには【階級と兵の強さ】と書かれており、
 【兵卒クラス】→【超人(戦車と戦える)】
 【下士官クラス】→【聖人(イージス艦と戦える)】
 【尉官クラス】→【極致(国と戦える)】
 【佐官クラス】→【超越者(星と戦える)】
 ーーーーーーーーーーーー

「簡単に書いてみたが、概ねこんな感じだ」

「成程。理解した」

 ようするに階級が上になればなるほど強いって事なのだろう。
 そう自身で解釈していると、シーナ大佐が私の肩を叩きながら期待するような目で話しかけてきた。

「で、だ。クロノ。余の定めた試験を合格した者は例外なく『尉官』クラスから始めてもらうが、お前は余の強さに怯んだりせず、攻撃を簡単に受け止めたその実力といい、なかなか見所がありそうだ」

「ふむ」
 
「だから『尉官』クラスでは勿体無いと思ってな。クロノさえよければ空白だったこの隊の『中佐』に任命したいがどうだ?」

 そう言われ、特に階級とかのこだわりはなかった私は――。

「別に構わないが」

「そうか。中佐になってくれるかクロノ」

 シーナ大佐が背中を叩きながら嬉しそうに笑う。
 ちょっとだけ痛い。
 すると、横にいたスリカ少佐が私を指差して反発してきた。

「この女が中佐!? 自分より後から入るのに階級上なんですか!? 自分は反対です!」

 そんな抗議に対し、シーナ大佐は冷静な顔になり――。

「スリカの言い分もよくわかる。だがここでは余がルールだ。余がクロノを中佐と決めたらそれが決定事項だ」

「ですが……ぐぬぬ」

「だがスリカがどうしても納得いかないのなら、クロノと直接戦って決めるか? もしクロノに勝ったらスリカ。お前の階級を今より一つ上げてやろう。クロノは少佐から始めてもらう」

「!? いいのですか!」

「ああ、余は構わない。クロノはどうだ」

 シーナ大佐が見定めるように問いかけてきた。
 断る理由もないので私は頷き。

「私はそれで構わない」

「決まりだな」

「よし!」

 ニヤリと笑いながらシーナ大佐がそう言い、スリカ少佐は嬉しそうにグッと拳を握った。
 
「なら善は急げだ。闘技場へ転移しするぞスリカ」

「了解です!」

 スリカ少佐がぶつぶつ呟き、私達の足元に幾何学模様が浮かび上がり、この部屋の景色が変化していく――。
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