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第十一話 魔王逃走
しおりを挟むゴッゴゴ……。
「やっと収まったか」
「うう、すごくこわかった……」
地震が収まりペピカも我もひとまず安心した。
「ペピカ。大丈夫か?」
「うん、こわかったけど、テオがてをにぎってくれたからわたしはだいじょうぶ」
「そうかよかった。しかしさっきの地震はなんだったんだ?」
「わからない。でもすごくとおくで、ものすごいタマシイのはんのうをかんじる」
「そうなのか?」
「うん。この星を包むくらいのものすごくおおきいちから。テオ、わたしすごくこわい」
よほど怖いのだろう。震えながら我の腕に抱きついてきた。
可愛い奴め。我はペピカの頭を撫でた。ふわふわしていてまるで猫を撫でているような感触だ。
「大丈夫だ。どんな化け物が来ようとも、我がペピカを必ず守ってやる」
「ほんと?」
「ああ、魔王である我の力を信じろ」
我の力強い言葉にペピカの震えが収まり。
「……うんわかった、テオしんじる」
「ははは、大船に乗ったつもりでいてくれて構わないぞ」
「おおぶね?」
そんなやりとりをして、再び森の中を歩いていると、途中。
「あ……あ……」
いきなりペピカが頭を押さえて地面にうずくまった。
「どうした? 気分でも悪くなったのか?」
我は体調が悪くなったと思い様子を確認する。すると。ペピカは青ざめながら。
「そんな……くる!」
我の言葉を無視し、上を見上げるペピカ。
「来る? 何がくるって――」
ゴォッーーーーー!
「ぐっ、なんだ!」
「うぅぅ……」
空気の振動とともに、森全体が震えだし、巨大な何かが、我達からそう離れていない上空に出現した。
「何だあれ、は……」
「カロロロロ」
ゾクッ。
その者の姿を見た途端、我の全身から血の気は引いていく。
瞳に映るのは金色の瞳に金色の翼を羽ばたかせた赤黒いドラゴンだった。
ありえない。何だあのドラゴンは。勝てない。どうあがいてもあんな化け物相手に勝てるわけがない。
「カアアアアアアアッ!!」
「きゃあああああああああ!」
「ペピカ!!」
この森全体を薙ぎ払わんとするドラゴンの咆哮が響き渡る。
我は気を失いそうになりながらも、怖がるペピカに抱きつきながら必死に耐える。
「アアアアアアアア……」
しばらくして咆哮は止んだ。すぐに我はペピカを抱き抱え。
「ペピカ。一刻も早くここから逃げよう」
「う、うん」
あのドラゴンから逃げる為、全速力で駆け出した。
その一方ドラゴンは。
カパッ。
欠伸をするように大きく口を開け。
コオォォォォォォ。
口の中にどんどん輝きが集まっていく。
ゾクゾクッ!
我の背後から死神が迫って来たような死の気配が漂ってきた。
よくわからないけどヤバイ!!
「『インフェルノ・オメガ・シールド』!」
反射的に最強の防御魔法を発動する。
我を中心に地面に魔法陣が浮かび上がり、燃える業火のように赤く、それでいて水のように透き通っているが鋼鉄の数万倍は硬いシールドが生成され我達を覆う。
だが次の瞬間。
キュイーーーーン!
ドラゴンの口から太陽のように眩い光線が発射された。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
「うわっ!」
地上に太陽が現れたかのような輝きとともに、激しい揺れが我達を襲う。
「きゃあああああ!」
「大丈夫だペピカ。我がついている」
怖がるペピカに抱きつき、揺れに耐える我。
そしてようやく揺れが収まると、シールド越しに外を見る。
「こんな、ことが……」
我達以外の周囲は完全に焦土と化していた。
そしてあの光線が通った跡には大きな谷が形成されていた。
ただの余波でこの威力なのか。もしさっきの光線上に我達がいたら……。
ガタガタガタガタ。
恐怖で我の全身が震える。
い、一刻も早く奴から遠くに逃げないと、ペピカも我も死んでしまう!
「ペピカにっ、逃げるぞ。こっ、ここにいたら、あのドラゴンにこっ、殺されてしまう」
震えながらもペピカの肩を揺らした。
だが返事も反応もない。
「ペピカ?」
ペピカの顔を見る。
「…………」
ペピカは白目を剥いて意識を失っていた。
「ペピカ!? しっかりしろ!?」
半ば強引にペピカの体を揺らす。
「…………」
それでも意識は戻らなかった。
「と、とにかく逃げるぞ!」
我はペピカを背負い、バリアを解いてドラゴンから全速力で離れた。
「ペピカ! 意識を取り戻せ!」
走りながら、何度も何度もペピカに呼びかける。
そして一体何度呼んだのかわからないが。ついに。
「……テ……オ?」
「よかった。意識を取り戻したようだな。今はあのドラゴンから逃げているところだ」
「そ、そうなんだ。テオありがとう。あとはあおすけとかわって、わたしもいっしょにはしるから」
「そんなことしなくていい、我の背中でゆっくりしてくれ」
「でも……」
「いいんだ、我は好きでこうしてるのだから」
正直あんなおっさん声の可愛くない奴より、もふもふで可愛い今のままがいい。
我の言葉にペピカは悩む素振りを見せるも、我が頭を撫でると子供が母親に甘えるような明るい声で。
「わかった。じゃあテオにあまえることにする」
その言葉通り、我の背中にぎゅっと抱きついてきた。
か、可愛いいいいいいいい!
ペピカの可愛さパワーのおかげか、あのドラゴンに対する我の震えは止まっていた。
よし、絶好調だ。この調子なら奴から逃げ切れる!
そう思った矢先、ペピカは何かを感じ取ったのか、突然後ろを振り向く。
「テオ! あのドラゴンが!」
「どうした――なっ!?」
ペピカの声に釣られて、後ろを振り向くと。
コオォォォォォォ。
ドラゴンは再び大きく口を広げおり、そこにはあの太陽に似た輝きがどんどん集まっていた。
そしてその視線の先には……我達!?
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