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第十話 終わりの始まり
しおりを挟む周囲が焦土に化しているのに化け猫はほぼ無傷で死んでいた。
「ふぅ疲れた……」
我は化け猫を袋へと収納すると、ポイントが一気に5000へと増えた。
「姉ちゃん。いやー凄かったぜ。あの厄介な化け物を倒しちまうなんてな」
「ありがとう。お前の攻撃もなかなか良かったぞ」
「ははっそうだろ――っとまだ名前を教えてなかったな、俺は『ブルーウルフ』の『青助』ってんだ」
「青助か。男のような名前だな」
「それは俺個人の名前だからな。
でっ、この体の真の持ち主が俺の主人の――」
パァァと青助の体が輝き、髪の色が青から雪のような白銀へと変化していく。
「はじめまして。わたしはパピペポプルていこく、29だいこうてい『プペッポ・ピピ・ペピカ』です。よろしくおねがいします」
プペッポ・ピピ・ペピカがぺこりと可愛くお辞儀をした。
「か、かかか」
「か?」
「可愛いいいいいいいいいい!」
プペッポ・ピピ・ペピカの愛らしさに我は思わず鼻血を出してしまう。
じーーー。
プペッポ・ピピ・ぺピカが興奮する我をじっと見てきた。
はっ! いかんいかん。あまりの可愛さに冷静さを失っていた。
我は深呼吸し、鼻血を止血する為に精神を整えた。
「ふぅ。さっきはすまなかった。我はテオ・ミラーレアだ。よろしくなプペッポ・ピピ・ぺピカよ」
「テオよろしく。わたしはぺピカとよんで」
ズズズズギューン!
ポタポタと倍増しで鼻血が垂れてきた。
「よっ、よろしくなぺピカ」
「うん。はなじがでてるからこれでふいて」
ポケットからハンカチを渡すペピカ。
なんて優しいんだ。
「ありがとうペピカよ。でもしばらくしたら我は大丈夫だ」
再び精神を落ち着かせ、なんとか鼻血は止まった。
自己紹介を終え、我とペピカは休憩しながらお互いのことについて紹介しあった。
ペピカから聞いた話によると、ぺピカの一族は代々神獣を自身に憑依させることができるそうだ。
憑依させることで神獣を顕現させ、圧倒的な力を得ることができるらしい。
だからあんなおっさんのようになっていたんだな。
それとぺピカは先程倒したあの化け猫と一度戦ったらしい。
別の種類の化け猫だったらしいが、倒すまでに100人の女達が化け猫にやられてしまったそうだ。
その大多数は致命傷を負うとすぐ『ギーブボール』を割って逃げたらしい。
ひどい傷だったそうだが、きっと生きていると信じたい。
数十分後。
「そろそろ休まったかな」
「うん。わたしもうげんき!」
ペピカが腕をぶんぶん振り回す。可愛い~。
「では狩に行くか」
「おー」
小さなお手てを上げるぺピカ。
「可愛いいいいいい!」
鼻血が出ないよう抑えながらペピカにメロメロの我が、ほぼ元通り再生を遂げつつある森の中を一緒に歩く。
ズゴゴゴゴッ。
すると突然、大地が波立つように地面が揺れた。
「なんだこの揺れは!?」
「すごくゆれてる。テオこわい」
「ぺピカ我の手に掴まれ」
「うっ、うん」
ぎゅっと力強く我の手を握るぺピカ。
立っているのが困難なほどの揺れが私達を襲う。
◯◯◯
「ふふっ~~ふふん~♪」
ズゴゴゴゴゴッ。
「うわっ地震か!?」
テントの中で紅茶を飲みながら鼻歌を歌い優雅に読書をしていると、広場にもの凄い揺れが襲ってきた。
すぐに揺れ防止の魔法を発動し、ピタリと広場の揺れが収まり元通りとなる。
「今の揺れは――まさか『守護樹』のところまで行ったバカがいるのか?」
『守護樹』とは、この世界であらゆる脅威、主に惑星外から訪れる災害等からこの星を守るために存在している巨大な木のことだ。
正確には木の姿に擬態して眠りについた『竜』達だが、『守護樹』は森の中からは見えづらくなっていて、かつここから千キロは離れた場所にあるので、見えていても向かうバカはいないと思っていた。
「まさか、あの空を飛んでいった2人のうちどちらかが眠りを解いたのか?」
試験の始まりに、森へ向かわず空へと飛び立っていく2人の少女を思い出す。
「まあ、あんな巨大な木が気になるのは無理がないが、まさか『守護樹』になった『守護竜』を眠りから呼び覚ますとは……」
『守護樹』は普通に近づくだけではただの巨大な木であるが、攻撃を木に与えると擬態が解けて竜が目覚め出すのだ。
「これはまずい。かなりまずい状態だ」
広場の外、森の揺れはもう収まっている。もう『守護竜』が完全に目覚めたのだろう。
おそらく攻撃した少女は『守護竜』に襲われてもう……。
「ここは安全だけど、試験中の奴らは危険だ。下手したら今年の合格者は0人になってしまうかもしれない。それだけはダメだ。でも自分は手出しできないし……」
一度目覚めた『守護竜』はすぐに眠りにつかず、この星外の生命体を全て根絶やしにしてから再び眠りにつく。
この広場は結界と隠蔽魔法を五重六重に掛けているので安全だが、試験中の少女らは違う。
「さて、少女達を全滅させないためにはどうしたら……」
あれこれ考えてもいい答えが思い浮かばない。
「頼みます。せめて0だけは……」
結局祈ることしかできない自分だった。
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