選ばれないアデルシア

秋野清香

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アデルシアの選択1

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私は、常に選ばれる立場だった。
選ばれることが当然だと思っていた。

だって、選ばれたら死力を尽くして取り組むわ。

私を選んだことを後悔なんてしないよう血が滲むような努力をするわ。

未来のレティシア王妃に選ばれるのも、当然よ。
世界の覇権を握るグラシア王国と、国力は低いが平和ななレティシア王国の架け橋となりレティシア王国へさらなる繁栄をもたらしてあげる。

特別な私を、特別だと認め相応しい扱いをするならば報いてあげる。


私は美しくなければいけない、せめてレティシア王国の誰よりも。
強くなければいけない、例えば将軍よりも。
賢くなければいけない、時には王よりも。
私は特別でなければいけない、だって特別でないと愛されない。
選んでもらえない。

選ばれることを望み、選ばれ続けてきたけれど。
私が15年生きてきて、選んだことは一つだけ。

婚約者として、選んでくれたルークを愛したことだけ。
それだけが私が選んだことだった。
私はルークに選ばれ、ルークを選び人生を共にしたかった。

まさか、婚約者として10年共に過ごした私よりたった一年同じ時を過ごした平民がルークに選ばれるなんて。
天真爛漫な笑顔が、裏表のない性格が、突出した才能はないがこつこつ努力をする姿勢がルークを虜にしたらしい。

ルークが私を罵る声が忘れられない。
「アディは愛想笑いばかりだ」
「本音を見せず、生きていて信頼できない」
「自分の才能を鼻にかけ、他者を見下す」

貴方にだけは、本当の笑顔をみせていたのに。
貴方にだけは、本音で話していたのに。
貴方を見下してなんかいないのに。

ルークが私との婚約を破棄する❓
私は捨てられるの❓
私以上にルークを愛することができる存在なんていないのに。
愚かなルーク。

私は何もかも持っていた。
血筋、家柄、財力、美貌、才能を持っていた。
何もかも生まれながらに備えた私だからこそ、ルーク自身を愛せたの。
次期レティシア王としてルークではなく、ルーク自身が好きだった。

ルークが選んだ平民の少女さえ、あなた自身を見てはいない。
騎士物語に出てくる王子様として見ているわ。

私は貴方が王子でなくても、好きなのに。
何一つ贈り物をくれなくても好きなのに。
王にならなかったとしても好きなのに。

不仲な私の異母兄と組んで、私を奴隷に落とすなんて。
私の愛を踏みにじるなんて。

私が生まれて15年間、自分自身で選んだことはルークを愛することだけだった。
そのルークが私を捨てるなら。
ないがしろにするならば、持てる力の全てを持って叩き潰してあげる。

私は人生で二回目の選択をするわ。
ルークを愛することをやめて、憎むことを選ぶ。
そして、ルークにこの世の誰よりも憎まれたい。


貴方への愛は海に捨てていきましょう。
私の人生を支えてきた特別でとびきりの愛は死んでしまった。

これからは貴方へ特別でとびきりの憎しみをあげる。


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