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狩人の矜持
第5話
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早朝に目覚めた私は宿屋の女将に挨拶をしてから出ることにした。受付に行くと掃除をしている最中であった女将が振り向いて驚いた表情をした。
「あら、狩人様じゃないか!こんな朝早くに起きて何処か出かけるのかい?」
「いや、新しい任務が出来たからこの宿を出ることになった。短い間だが世話になったから挨拶をしようと思ってここに来た。」
「もう出てっちゃうのかい!それは残念だねえ・・・。次は何処行くんだい?」
「商業都市ヴィタルトだ。この町に転移魔法陣は設置されているか?あればそれを利用したいのだが・・・。」
「ヴィタルトに行くのかい!?あそこは魔獣達が近くで出没し始めたって噂だよ?転移魔法陣はあるけど、ヴィタルトへの転移は3日前から停止してるらしいし、商人達もみんな行かないようだよ。」
「そうか・・・。教えてくれて助かる。転移魔法陣があるなら使用できるか直接聞いてみる。」
「そうかい!まあ狩人様なら使わせてもらえるとあたしは思うよ!また元気な姿を見せに来ておくれ!」
「ありがとう。短い間だったが世話になった。」
女将に挨拶をして宿屋を出た私は転移魔法陣の設置されている広場へと向かう。転移魔法陣は規模の大きい街や都市に設置されているものであり、各都市や街の行き来を一瞬で行うことが出来る。使用するには各都市の管轄部署へ申請が必要だが、騎士団や狩人は申請がなくても使用することが許可されている。広場に辿り着くと転移魔法陣が設置されており、近くに管轄部署らしき建物があった。建物に入ると申請待ちの人々が多くおり管轄部署の職員も忙しなく働いていた。受付に向かうと職員がにこやかに対応してくれた。
「いらっしゃいませ。転移魔法陣の使用申請でしょうか?どちらへの転移をご希望ですか?」
「ダグラス一派の狩人だが、任務の関係で商業都市のヴィタルトに行きたい。都市の防衛任務だから直ぐにでも転移魔法陣を使用したい。」
そう言って紋章を見せると、職員はハッとした表情をした。紋章を確認したあと真剣な表情になり私の方を向いた。
「確かにダグラス一派の紋章ですね。ヴィタルトへの転移は魔獣出没の関係で停止していましたが、狩人様だということが確認取れましたので使用を許可いたします。すぐにでも転移頂いて大丈夫です。」
「ありがとう、非常に助かる。」
「いえいえ、あなたの幸運をお祈りしてます。」
職員に使用の許可を得た私は、広場へと戻り転移魔法陣の中央に立つ。そうすると転移魔法陣が作動して辺りが輝き始めた。身体が宙を浮き始めると、周囲の景色や音や魔力の流れが目まぐるしく変わる。やがて治まると先ほどまでいた広場ではない場所に立っていた。
「この感覚にはいつまで経っても慣れないな。」
そう呟いて周囲を見ると綺麗なガラス張りの建物の中にいた。どうやらヴィタルトへ無事に転移出来たようだ。
(とりあえずこの建物を出て騎士団の詰所に向かうか・・・)
そう考えた私はガラス張りの建物から出てみると、騎士達が慌ただしく街中を駆け回っているのを見つけた。いつもなら賑わっているであろう街通りも人通りが非常に少なく、騎士団たちしか見えない。辺りを伺っている私に気づいた1人の騎士が声をかけてきた。
「君、勝手に外へ出たらダメじゃないか!今日は魔獣の襲撃に備えて自宅にいるか教会に避難するか昨夜指示が出ていただろう!」
「いや、私は狩人だ。この都市の住人じゃない。騎士団の詰所に向かいたいのだが何処にある?そこに仲間も居るはずなのだが・・・。」
「あっ、申し訳ありません!大変失礼しました!てっきり住人かと思い・・・。詰所ならすぐそこの角にある建物になります!狩人の皆さんもそこに待機してますので仲間の方たちもそこに居るかと!」
「分かった、ありがとう。」
騎士に詰所の場所を聞きそこへ向かうと、石造りの大きな建物があった。中へ入ると騎士達が戦いに備えて準備をしていたり、狩人らしき人達が自身の武器の手入れを入念に行なっていた。狩人の人数をざっと数えただけでも30人程度はいる。今回の防衛のために手当たり次第に狩人を集めてきたのを感じていると声をかけてくる人物がいた。
「よう、久しぶりだな、セツナ。」
その声に振り返ると灰髪に漆黒の瞳をした体格のどっしりとした大男がいた。一見すると強面の雰囲気があるがセツナにとっては数少ない見知った顔であった。
「グレイブか!久しぶりだな、相変わらずでかいな。」
「そういうお前は随分腕を上げたらしいな。ダグラスから聞いてるぞ。」
「流石にいつまでもひよっ子のままではいられないからな。ところであと2人仲間がいると聞いているが、何処にいるんだ?」
「ああ、もうここに着いているはずだが・・・。」
グレイブがそう言いかけていると割って入るように別の男の声がした。
「あっ、グレイブさんじゃないですか!お久しぶりです!」
声がした方向を見ると、赤髪に翠色の瞳した爽やかな雰囲気のある細身の男と茶髪に黄色の瞳をした大人しそうな女がいた。
「あら、狩人様じゃないか!こんな朝早くに起きて何処か出かけるのかい?」
「いや、新しい任務が出来たからこの宿を出ることになった。短い間だが世話になったから挨拶をしようと思ってここに来た。」
「もう出てっちゃうのかい!それは残念だねえ・・・。次は何処行くんだい?」
「商業都市ヴィタルトだ。この町に転移魔法陣は設置されているか?あればそれを利用したいのだが・・・。」
「ヴィタルトに行くのかい!?あそこは魔獣達が近くで出没し始めたって噂だよ?転移魔法陣はあるけど、ヴィタルトへの転移は3日前から停止してるらしいし、商人達もみんな行かないようだよ。」
「そうか・・・。教えてくれて助かる。転移魔法陣があるなら使用できるか直接聞いてみる。」
「そうかい!まあ狩人様なら使わせてもらえるとあたしは思うよ!また元気な姿を見せに来ておくれ!」
「ありがとう。短い間だったが世話になった。」
女将に挨拶をして宿屋を出た私は転移魔法陣の設置されている広場へと向かう。転移魔法陣は規模の大きい街や都市に設置されているものであり、各都市や街の行き来を一瞬で行うことが出来る。使用するには各都市の管轄部署へ申請が必要だが、騎士団や狩人は申請がなくても使用することが許可されている。広場に辿り着くと転移魔法陣が設置されており、近くに管轄部署らしき建物があった。建物に入ると申請待ちの人々が多くおり管轄部署の職員も忙しなく働いていた。受付に向かうと職員がにこやかに対応してくれた。
「いらっしゃいませ。転移魔法陣の使用申請でしょうか?どちらへの転移をご希望ですか?」
「ダグラス一派の狩人だが、任務の関係で商業都市のヴィタルトに行きたい。都市の防衛任務だから直ぐにでも転移魔法陣を使用したい。」
そう言って紋章を見せると、職員はハッとした表情をした。紋章を確認したあと真剣な表情になり私の方を向いた。
「確かにダグラス一派の紋章ですね。ヴィタルトへの転移は魔獣出没の関係で停止していましたが、狩人様だということが確認取れましたので使用を許可いたします。すぐにでも転移頂いて大丈夫です。」
「ありがとう、非常に助かる。」
「いえいえ、あなたの幸運をお祈りしてます。」
職員に使用の許可を得た私は、広場へと戻り転移魔法陣の中央に立つ。そうすると転移魔法陣が作動して辺りが輝き始めた。身体が宙を浮き始めると、周囲の景色や音や魔力の流れが目まぐるしく変わる。やがて治まると先ほどまでいた広場ではない場所に立っていた。
「この感覚にはいつまで経っても慣れないな。」
そう呟いて周囲を見ると綺麗なガラス張りの建物の中にいた。どうやらヴィタルトへ無事に転移出来たようだ。
(とりあえずこの建物を出て騎士団の詰所に向かうか・・・)
そう考えた私はガラス張りの建物から出てみると、騎士達が慌ただしく街中を駆け回っているのを見つけた。いつもなら賑わっているであろう街通りも人通りが非常に少なく、騎士団たちしか見えない。辺りを伺っている私に気づいた1人の騎士が声をかけてきた。
「君、勝手に外へ出たらダメじゃないか!今日は魔獣の襲撃に備えて自宅にいるか教会に避難するか昨夜指示が出ていただろう!」
「いや、私は狩人だ。この都市の住人じゃない。騎士団の詰所に向かいたいのだが何処にある?そこに仲間も居るはずなのだが・・・。」
「あっ、申し訳ありません!大変失礼しました!てっきり住人かと思い・・・。詰所ならすぐそこの角にある建物になります!狩人の皆さんもそこに待機してますので仲間の方たちもそこに居るかと!」
「分かった、ありがとう。」
騎士に詰所の場所を聞きそこへ向かうと、石造りの大きな建物があった。中へ入ると騎士達が戦いに備えて準備をしていたり、狩人らしき人達が自身の武器の手入れを入念に行なっていた。狩人の人数をざっと数えただけでも30人程度はいる。今回の防衛のために手当たり次第に狩人を集めてきたのを感じていると声をかけてくる人物がいた。
「よう、久しぶりだな、セツナ。」
その声に振り返ると灰髪に漆黒の瞳をした体格のどっしりとした大男がいた。一見すると強面の雰囲気があるがセツナにとっては数少ない見知った顔であった。
「グレイブか!久しぶりだな、相変わらずでかいな。」
「そういうお前は随分腕を上げたらしいな。ダグラスから聞いてるぞ。」
「流石にいつまでもひよっ子のままではいられないからな。ところであと2人仲間がいると聞いているが、何処にいるんだ?」
「ああ、もうここに着いているはずだが・・・。」
グレイブがそう言いかけていると割って入るように別の男の声がした。
「あっ、グレイブさんじゃないですか!お久しぶりです!」
声がした方向を見ると、赤髪に翠色の瞳した爽やかな雰囲気のある細身の男と茶髪に黄色の瞳をした大人しそうな女がいた。
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