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最終章

68 解ける

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彼は優しい人だった。
彼は努力を惜しまぬ人だった。
彼は癒しの力で人々を癒した。
彼は龍に選ばれた奇跡の人だった。
彼は強い人だった。
彼は美しかった。

彼はこの国が危機に陥った時、奇跡の力を持って人々を守り、この私を守って消えてしまった。

私は不実だった。
私は臆病だった。
私は傲慢だった。

私は正さなくてはならない。

今、ここに宣言する。私には誇りに思う兄ラインハルトがいる事を。私が頭を垂れる唯一の人、兄ラインハルトがいるという事を。



王が突如行った宣言に、人々は驚き疑心暗鬼になった。あの噂に名高い悪役王子が?と。

そんな中、水の都と呼ばれる都市の貴族領主が声をあげる。

この土地と人々も彼に救われたと、彼は天候を操り、幻となったエリクサーをいとも簡単に作る奇跡の人だったと。

その声を皮切りに彼に救われたという人々が声をあげ出した。彼のヒールで心が癒され、後の有力な貴族にまで登り詰めた人々が沢山いた。彼がいなかったら自分達は心が折れて生きていなかっただろうと。

最後に前国王が言った。自分が今、生きているのは息子のお陰だと。毒に侵され死の縁にいた自分を奇跡の力で救ってくれのだと。

――そう、前国王が彼を息子と言ったのだ。

そうしてラインハルトはこの国の正式な王子だったと人々に認められ、ようやく悪役王子の誤解が解けた。解けまくった結果――





ピューーヒョロロロロ……。

――俺は銅像の前に立っていた。

この銅像、静脈の浮き上がった右手や堅く踏みしめられた右足に重心を置き、左半身は体重をかけずに足を外側へ差し出し左手にサンドウィチを持ちその手を肩に置き、さぁ、今からサンドウィチ持って魔物の森でも行きましょうかね。という風情である。因みにまっ裸。

これ、絶対ダ○デ像知ってる奴が作っただろう。

転生者ここにもありだな。

アレンの宣言以降、至るところに俺の銅像が立ち並び始めた。そう、これ、俺。ダ○デ像ならぬラインハルト像。

「……はずっ。」

自分の裸の像なんて罰ゲームもいいところだ。

俺は冷めた瞳で卑猥な銅像を一瞥すると「俺、死んだみたいじゃね?生きてるんですけど?」と誰にともなく呟き、その場を後にした。
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